国際キャンペーン

劣化ウラン兵器禁止国際キャンペーンの一面広告

皆様  ニューヨークで始まったNPT再検討会議の間、NGOのReaching Critical Will 発行のニューズレター、NPT News in Reviewが各国代表団向けに配布されますが、今日の第二号に、劣化ウラン兵器禁止国際キャンペーンの一面広告も掲載になっています。下記サイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひご覧になってみてください。14頁に掲載されています。 www.reachingcriticalwill.org/legal/npt/NIR2010/No2.pdf 嘉指信雄、NO DU ヒロシマ・プロジェクト/ICBUW ヒロシマ・オフィス         http://www.nodu-hiroshima.org/ 『ウラン兵器なき世界をめざして—ICBUWの挑戦—』           (合同出版、2008/第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞)

ニュージーランド、アイルランドもDU兵器禁止法審議へ          

 自国による劣化ウラン兵器の製造・使用などを禁止する劣化ウラン兵器禁止法は、2007年3月、世界に先駆けてベルギーで成立(今年6月発効)しています。今年3月には、コスタリカ議会でも禁止法案が提出されましたが、さらに、最近、ニュージーランドとアイルランドでも同様の禁止法案が提出されました。アイルランドでは、来年初め、本格的審議が開始される予定です。  詳しくは、ICBUWホームページをご参照ください。    ベルギーは、劣化ウラン兵器禁止へと向けた国際的取り組むを開始するため、ベルギーに続く国々が現れるのを待っているのですが、徐々にその国際的環境が整いつつあると言えます。ぜひ日本もこうした動きに加わって、劣化ウラン兵器禁止へと向けた国際プロセスを先導してほしいものです。  せひ皆さんの地元でも、国会議員の方などに劣化ウラン兵器問題への取り組みを呼びかけてください。

裁判で闘い続ける韓国の写真家・李時雨(イ・シウ)氏(国家保安法違反嫌疑など)

2009年7月20日、福岡の緒方貴穂さんからのアピールです。 — [転送転載歓迎、重複ご容赦ください] 皆様 韓国の写真家、李時雨(イ・シウ)氏の裁判情報です。 日本の写真家の方々へのお願いにも言及していますので、 ご協力していただける方は、よろしくお願い致します。 李時雨氏の裁判は、現在2つ行われています。 ひとつは、2007年4月の逮捕(国家保安法違反等の嫌疑)に関するもので、 一審・二審とも李時雨氏側の無罪。現在最高裁(大法院)で係争中です。 もうひとつは、上記逮捕に関連して、 李時雨氏のフィルムが毀損されたこと対する損害賠償請求訴訟で、 原告は李時雨氏、被告は大韓民国。 去る7月8日(水)14:30より、ソウル地方法院で第7回口頭弁論が開かれ、 傍聴しましたのでご報告します。 ソウル地方法院460号法廷。 傍聴席は40席ありましたが、傍聴者は7名ほど。 裁判官1名、双方の弁護士各1名と李時雨氏。 そして、証人席に警察(被告側)が1名着席し、尋問が進められました。 (私は韓国語が分かりませんので、 裁判終了後に李氏と通訳の知人に内容を伺いました。) 警察は、元々フィルムが保管されていた李氏の作業室の保存状態の悪さを強調し、 フィルムを押収し、証拠資料にする過程での毀損を否定。 他方、李時雨氏側は、警察が証拠資料作成のためにフィルムをスキャンする過程で、 多大な毀損が生じたと主張。 李時雨氏によれば、警察は「ドラム・スキャン」という方法でフィルムから証拠資料を作成。 この方法は解像度は高いが、フィルムに化学薬品(ジェル)を付けるので扱いが難しいとのこと。 にもかかわらず、警察は同じフィルムを何度もドラム・スキャンしたそうです。 警察に没収されたフィルムは、40,000カット。 そのうち、毀損したフィルムは、9,000カット。 主としてDMZや韓・日・独の米軍基地のフィルムとのことです。 尋問は40分ほどで終わり、 次回裁判(8月上旬)で鑑定人が採用される予定。 鑑定人による毀損の鑑定がこの裁判のカギであり、 年内にも判決が出されるのではないかとのことでした。 李時雨氏の印象では、 裁判官は李氏の主張に対して否定的で、 このままでは良い判決は期待できないようです。 なお、日本のフォト・ジャーナリスト、豊田直巳氏が 李時雨氏のために裁判官宛の要請書を書いてくださったので、…

ベルギーのDU兵器禁止法発効へ(6/21)

2007年3月22日、ベルギー議会で可決された「劣化ウラン(DU)兵器禁止法」が、6月21日発効した。発効まで2年程の猶予期間が置かれたのは、DU兵器禁止に向けた国際社会の取り組みにおいてベルギーだけが突出するのを避けようとしたためと言われているが、今年3月、コスタリカ議会にも「DU兵器禁止法案」が提出され、一年程で成立する見通しとなった。従って、ベルギーにおける禁止法の発効は、コスタリカでの動きと相まって、DU兵器禁止への気運をさらに高める、まさにタイミングを得たものだ。  またベルギー議会では、禁止法発効を記念して豊田直巳さんの写真展「ウラン兵器の人的被害」が開催され、オープニングでは、イラクのアル-アリ医師(元・バスラがん治療センター長)などの講演が行われた。今回の企画は、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)とベルギー議会議員有志の協力で実現したもの。 [写真-2]オープニングで挨拶するベルギー下院議長パトリック・デゥワエル氏

第1回バスラ国際がん会議に参加して

2009年5月6-7日、イラクのバスラで第一回国際がん会議が開催された。(主催:バスラ医科大学、バスラ保健省/後援:イラク保健省など) 参加者総数:約400名(主催者報告) 外国人参加者:約40名(うち招待ゲスト16名) 日本人参加者:9名(内招待ゲスト7名) 佐藤真紀:JIM-NET(日本イラク医療ネットワーク)事務局長/井下俊医師:同スタッフ/小野万里子:弁護士・「セイブ・イラクチルドレン名古屋」代表/山縣忍:同事務局/大江厚子:「セイブ・ザ・イラクチルドレン広島」共同代表/影山あさ子:ドキュメンタリー監督・「セイブイラクチルドレン札幌」共同代表/嘉指信雄:ICBUWヒロシマ・オフィス代表//森住卓・フォトジャーナリスト、豊田直巳・フォトジャーナリスト  今回の会議は、90年代半ば以降、特にイラク南部でがんや小児白血病が大きく増加しているとの認識のもと、イラク保健省の後援も受けて開催されたもので、「がんの増加」という深刻な事態にイラクが国家プロジェクトとして取り組み始めたことを意味する、画期的なものと言えよう。イラク南部の人々の間では、自分もがんに罹るのではないかという怖れが広まっていて、「がん恐怖症」と言った表現さえ使われるとのこと。  がん増加の一因として、湾岸戦争やイラク戦争で使われた劣化ウラン(DU)弾の影響が挙げられてきているが、いくつもの発表でDUの影響の可能性が言及され、DU問題がイラクの医師たちの間ではっきりと認識されているのを実感した。  会議冒頭での講演を、「DU問題における新たなパースペクティブ」というタイトルでする機会を与えられた私は、日本や世界各地での禁止キャンペーンの取り組みをパワーポイントも使いながら紹介するとともに、2007年、2008年と2年連続して国連総会で採択された「DU決議」に応え、最大の被害国であるイラクが声を上げることの意義をアピールすることができた。 [写真-1] 会議冒頭での招待講演「DU問題に関する新たなパースペクティブ」[撮影:豊田直巳]

加速する劣化ウラン兵器禁止国際キャンペーン

コスタリカで劣化ウラン兵器禁止国際大会  2009年3月4-6日、コスタリカのサンホセで第5回ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)国際大会が開催された。(プログラム下掲)また大会初日には、劣化ウラン(DU)兵器禁止法案がコスタリカ議会に提出され、一年程で成立する見通しとのこと。(2007年3月、世界に先駆けて禁止国内法を成立させたベルギーにコスタリカが続くこととなる。)当法案を提出したアレクサンデル・モラ=モラ議員は、コスタリカ議会のみならず、「ラテン・アメリカ議会」(Latin American Parliament)でも人権委員会の議長を務めており、ICBUW運営委員との面談の席や法案提出直後に開いた記者会見の場で、DU兵器禁止の動きを国際的にも先導する意欲を表明しています。早速、3月中旬、アルゼンチンのブエノスアイレス開かれた「ラテン・アメリカ議会」で、劣化ウラン兵器問題への取り組みを活動家のダマシオ・レペス氏とともに訴え、大きな反響を呼んだと伝わってきている。  最近は、他にも、劣化ウラン兵器問題及び禁止国際キャンペーンで大きな動きが続いて起きている—— (1)二年連続して国連総会で劣化ウラン決議  2007年、2008年と二年連続して、国連総会で劣化ウラン問題関連決議が圧倒的多数で採択され、DU兵器の健康や環境への影響に関する見解を提出するよう、事務総長の名において、加盟国や関連機関に要請が出された。 (2)イタリア政府、劣化ウラン被害に苦しむ退役軍人に一括補償  劣化ウラン2008年12月、イタリア政府が、劣化ウラン被曝のため重病にかかった帰還兵に対する3000万ユーロの一括補償を決定。カバーされる退役軍人1,703名のうち、77名はすでに亡くなっており、派遣された地域は、ボスニア=ヘルツェゴヴィナ、コソボ、アフガニスタン、イラクなどを含む。 (3)ノルウェー政府、ICBUWの劣化ウラン問題調査に助成金支給決定  ノルウェーの外務省は、人権、軍縮、平和構築などの分野で活動する世界各地の団体に資金援助をしてきているが—最近では、クラスター爆弾禁止プロセスへの支援が広く知られている—今年度は、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)による調査プロジェクト3件に対しても助成金が支給されることとなった。  ICBUWは、ここ数年ジェネーブやニューヨークで、各国の国連代表部などへのロビー活動を重ねてきているが、2007年10月、ニューヨークで開催された第4回ICBUW国際大会の後、ノルウェー代表部を訪れた際、今回の助成金への応募を勧められた。[この時の訪問では、朝一番の面談であったにもかかわらず、ノルウェー代表部の方が四、五名応対してくださり、そのこと自体にとても驚いた。]  今回助成対象となったのは、下記の3つのプロジェクトである。 (1) バスラ地域の疫学調査    ・目的:劣化ウラン兵器使用が一般市民の健康に及ぼしている影響に関する長期的調査 ・ 助成金額(予定):年25,000ユーロ(約325万円) ・ 支給年数:限定せず (2) ウラン兵器の拡散・製造・売買についての調査   ・目的:劣化ウラン兵器の保有国・保有量・種類などについて調査。専門研究員をICBUWマンチェスター事務所に置く。 ・ 助成金額(予定):年25,000ユーロ(約325万円) ・ 支給年数:3年 (3)バルカン半島における劣化ウラン汚染調査    ・目的:90年代、旧ユーゴスラヴィアの紛争でNATOによって使用された劣化ウラン弾の影響についての現地調査。 (ア) 助成金額(予定):6,000ユーロ(約78万円) (イ) 支給年数:1年(2009年末までに実施)  今回、ノルウェー政府がICBUWの調査活動に対しする助成金支給を決めたことは、劣化ウラン兵器問題に関する国際的関心の高まりを象徴するものであり、禁止国際キャンペーンは、さらに新たな段階に入ったと言えよう。こうした勢いを活かしつつ、ウラン兵器廃絶の一日も早い実現に向けて、一層力を入れて取り組んで行きたい。  とりわけ日本政府に対しては、ノルウェー政府のように、国際的な先導的役割を、被害調査・被害者支援などの分野で果たすよう要請して行きたいと思う。  一層のご支援・ご協力を何卒宜しくお願いする次第である。  嘉指信雄、NO DU(劣化ウラン兵器禁止)ヒロシマ・プロジェクト代表: *『ウラン兵器なき世界をめざして—ICBUWの挑戦—』(2008年4月発行/「平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞」受賞)や「キャンペーン・ポストカード:BAN DU…

「ウラン兵器国連決議」をステップにして——ICBUWによる4・5月の取組み—

2008年3月22日 皆様 ご存知のとおり、昨年12月、国連総会で「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」が採択されました。劣化ウラン問題関連の決議が国連総会で採択されたのは初めてです。今回の決議は、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮に入れつつ」(前文第4項)、「事務総長に対し、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用がもたらす影響に関する、加盟国および関連国際諸機関の見解を求め」(主文第1項)るとともに、今年の国連総会で、この問題を議題として取り上げる(主文第2項)ことを要請するものです。ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)では、この決議をひとつのステップとして、ウラン兵器の全面的禁止に向けた国際的な動きを促進するため、4月から5月にかけて、国際的および国内的キャンペーンの準備を進めています。 国連決議に基づき、劣化ウラン兵器使用の環境・健康影響についての見解を、5月末日までに提出するようにとの要請書が、先月、国連総長から各国政府宛に送られました。まずは、できるだけ多くの国々が、こうした要請に応え、報告書を提出するよう促すため、ウラン兵器問題の重要性をアピールし、国際的関心を喚起する必要があります。そして何よりも、少しでも多くの国々が、ウラン兵器が環境と健康に及ぼす危険性を正しく捉えた報告を提出してくれるように促し、今年の総会においては、「モラトリアム」(一時停止)を求める決議の採択を求め、さらには、全面的禁止を求める国際的な議論につなげてゆかねばなりません。 このような観点から、ICBUWでは、5月末までに、国内外で以下の取組みを計画しています。皆様のご協力、ご支援をよろしくお願い致します。また、ご意見なども、お寄せ頂ければ幸いです。   ICBUW運営委員: 嘉指信雄 森瀧春子 振津かつみ *これら取組みについての国内問合せ先担当(振津):du-ban-hibaku@theia.ocn.ne.jp 【国際キャンペーン】 1)ワークショップ-ウラン兵器禁止条約に向けて 日時:4月2日午後1時〜5時半場所:ジュネーヴ国連本部Palais des Nations*プログラム:・はじめに:レイ・ストリート(ICBUW、英国)(1)科学パネル:イアン・フェアリー(英国内部照射放射線リスク検討委員会)/グレーテル・モンロウ(ICBUW、科学チーム、米国)/振津かつみ(ICBUW科学チーム、日本)(2)軍事・退役軍人パネル:ダン・フェイヒー(カリフォルニア大学)/エマニュエル・ヤコブ(欧州軍人協会:EUROMIL)(3)法律パネル:エブリル・マクドナルド(グロニンゲン大学アッセル研究所)/マンフレート・モーア(ドイツ赤十字、ICBUW)(4)討論:司会:スージー・スナイダー(WILPF=自由と平和のための国際女性連合事務局長)/ダグ・ワイア(ICBUW、英国)・まとめ:嘉指信雄(ICBUW、日本)*ICBUWメンバー以外の専門家の報告者のプロフィール:・イアン・フェアリー:放射能環境影響についての独立コンサルタント。グリーンピースなど多くの環境NGO、欧州議会、法律家、地方行政や多くの国々の政府のアドバイザーとしても活躍。・ダン・フェイヒー:独立の劣化ウラン兵器問題研究家。米国のNGO “Veterans for Common Sense” の代表評議員のメンバー。・エマニュエル・ヤコブ:EUROMILは、政治的に独立、自由で民主的な、欧州の軍人の非営利組織である。現在、24カ国から、約50万人の軍人を代表する36団体が加盟している。すでに「ウラン兵器の禁止要求」などを含む「声明」を出している。・エイヴリル・マクドナルド:国際人権法専門家。『国際法と劣化ウラン兵器:予防原則の適応』著者。*各国の国連代表、ジュネーヴを中心に活動する国際NGO、マスコミ関係者(討論以外のみ)などが参加予定。 2)ワークショップとあわせ、ジュネーヴの各国代表、WHOなどを訪問し、ロビー活動を行う 3)いくつかの国々において、それぞれの政府への働きかけ 4)欧州議会での新たな決議案作成 5)IPPNW(核戦争防止国際医師会議)などの国際NGOと協力した各国・国連への働きかけなど。 【日本国内での取組み】 国際キャンペーンと連帯しながら、昨年に引き続き、日本でも政府に対する働きかけを強めたいと思います。日程や内容の詳細は、現時点で未定の部分もありますので、決まり次第、順次お知らせし、ご協力ご支援をお願いしたいと思います。 1) ICBUWとして外務省へ申し入れ:4月中旬予定 (日程が決まり次第、お知らせします。) 「国連決議」の要請にしたがい、ウラン兵器使用の環境/健康影響について、その(潜在的)危険性を正しく評価した報告を出すよう、また、今後の禁止に向けた国際的議論に積極的な役割を果たすよう要請。検討すべき項目、資料なども渡す。 2)「9条世界会議」での「自主企画分科会」(ICBUW主催):5月5日、10時〜12時半(幕張メッセ) 「劣化ウラン兵器の禁止:世界の流れと日本の役割-被害者と連帯して」海外ゲストに、昨年世界に先駆けてベルギー議会で可決された「ウラン兵器禁止法」の法案可決に尽力されたベルギー国会議員、ディルク・ヴァン・デア・メーレン氏を迎えます。また、被害者支援の視点から、佐藤真紀さん(日本イラク医療支援ネットワーク:JIM-Net)にも報告をお願いしています。ICBUWからは、ICBUW国際キャンペーン、「9条のグローバル化」とウラン兵器禁止、「被爆国」日本の役割などについても報告・問題提起し、議論を深めたいと思います。メーレン氏は、その後、広島(6日)、大阪(7日)でも講演会が予定されています。(詳細は別途、お知らせします。)また、外務省訪問、議員懇談会なども計画中。 3) 外務省交渉:5月中旬〜下旬予定 4月の申し入れをふまえて、5月末提出予定の国連への報告書や、今後の日本の果たすべき役割、在日米軍基地内にあるウラン兵器の問題なども含めて、交渉したいと考えています。

劣化ウランによる内部被曝が明らかとなった住民や元従業員の発言

2007年12月5日、ニューヨーク州都オルバニーの州庁舎で開かれた記者会見:右から、ランドール・パリッシュ教授、ジョー・リトーさん(パリッシュ教授の後ろ)、ジョン・アーナソン教授、トーマス・ドネリーさん、トニー・シアルフェロさん、デイヴィッド・カーペンター教授 被曝後20年以上経過した労働者からDU検出—除染作業後も、近隣住宅からDUのチリ—12月5日、ニューヨーク州都オルバニーで記者会見と集会 2007年12月9日 12月5日(水)には、国連総会で、「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」が圧倒的多数の賛成で採択されたが、奇しくも、同じ日、ニューヨーク州のオルバニーでは、1982年に操業をやめた劣化ウラン兵器製造工場の周辺で今も続く劣化ウラン汚染に関する調査結果が記者会見で発表された。今回の調査を行った科学者チームが調査結果の要点について説明をした後、今回の検査で陽性結果が出た元従業員など4名の被害者が、劣化ウラン被曝を知った困惑、憤りを訴えた。(なお、一人からは、劣化ウランではなく、濃縮ウランが検出。)記者会見室は、マスコミ、被害者、支援グループの人たちなど、およそ30人の人で一杯となった。今のところ、全国レベルでの報道はほとんど出てきていないようだが、今回の調査結果の深刻な意味が理解されるに従い、反響が広がっていくだろうと思われる。 また、午後6時半からは、工場があった地域の中学校で集会が開かれ、元従業員、周辺住民、支援グループの人々など、100名程が集まった。記者会見と同様、科学者グループからの説明、4名の被害者からの発言があった後、質疑応答がもたれたが、内部被曝のメカニズム、地域住民の被害調査に向けた取り組み、まだ残っていることが明らかとなった劣化ウランのほこりをどう除去したらよいのか、等々について、真剣な質問が次から次に出され、この問題への強い関心と憂慮がひしひし伝わってきた。 オルバニーは、ニューヨークの北約200キロのところに位置する、ニューヨーク州の州都だが、その近郊で、「ナショナル鉛産業会社」が、60年代後半より劣化ウランを含む30ミリ砲弾および飛行機のバランサー(平衡錘)などを製造していた。劣化ウランの微粒子が、40キロ以上離れた地点の空気フィルターから見つかったことが引き金となり、1982年2月、ニューヨーク州裁判所からの命令で操業停止となった。しかし、20年以上経っても、元従業員や周辺住民の間では、がんなど様々な健康障害が絶えず、劣化ウラン被曝が問題とされてきた。今回の検査結果は、アメリカ国内における劣化ウラン被曝の実態に光りをあてる画期的なものと言えよう。 嘉指信雄NO DU ヒロシマ・プロジェクト代表ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)運営委員 [追記: 12/15] オルバニーは、ニューヨークの北約200キロのところに位置する、ニューヨーク州の州都ですが、その隣町のコロニーで、「ナショナル鉛産業会社」の工場が1958年から操業を開始し、劣化ウランを含む30ミリ砲弾および飛行機のバランサー(平衡錘)などを製造していました。しかし、大気中へのウランの違法放出が判明し、1982年2月、ニューヨーク州裁判所から操業停止命令を受け、1984年には完全に閉鎖されました。しかし、20年以上経っても、元従業員や周辺住民の間では、がんなど様々な健康障害が絶えず、劣化ウラン被曝が問題とされてきていました。今回の尿検査の結果により、検査を受けた人の内かなりの割合の人が劣化ウランに被曝していることが明らかになるとともに、周辺の住宅のチリが除染基準を上回る劣化ウランをいまだに含んでいることが判明しました。 今回の検査は、イギリスのランドール・パリッシュ教授と地元のオルバニー大学の科学者たちの協力で実現した試験的なもので、23名が検査対象となっています。そのうち元労働者は5名で、5名全員が劣化ウラン陽性と判明し、周辺に5年以上住んでいた住民18名のうち4名も劣化ウランに被曝していることが判明しました。また今回の報告書は、工場が操業していた1958年から1982年までの間に、少なくとも5トンの劣化ウラン・エアロゾル(煙霧状微粒子)が、10平方キロメートルを越える周辺の住宅・商業地域に放出されたものと推定しています。アメリカ国内における劣化ウラン被曝の実態に光をあてる画期的なものと言えます。研究チームは、地元の市民グループと協力して、さらなる検査を計画しているようです。 今回の記者会見は、科学ジャーナル「Science of Total Environment」(2007)への、パリッシュ教授らの掲載論文「Depleted Uranium Contamination by Inhalation Exposure and its Detection after 20 Years: Implications for Human Health Assessment」に基づくものです。   ニューヨーク州都オルバニーでの集会の詳細記事はこちらをご覧下さい。 記者会見の映像  

国連総会で「ウラン兵器決議」採択/投票結果

2007年12月6日 皆様 すでに速報でお知らせしましたように、12月5日午後(現地時間)、国連総会で「劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用の影響に関する決議」が、賛成多数で採択されました。投票の内容は、賛成136、反対5(米国、英国、イスラエル、チェコ、オランダ)、棄権36、欠席(無投票)15でした。(下記のリストをご参照下さい。) この決議を受けて、国連憲章と国際人道法に基づき、「DU兵器使用が人体や環境に及ぼす潜在的に有害な影響を考慮」し、(1)国連事務総長の名において、 国連加盟国と国連関連機関に対し、DU兵器の影響に関する意見の提出を求め、来年の国連総会でその報告を提出すること、そして、(2)来年の国連総会の正 式な議題にDU兵器問題を含めることが要請されます。私たち「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)としても、この決議を歓迎し、「対人地雷」 「クラスター爆弾」に引続き、国際的にウラン兵器禁止の議論を前進させるための大きなステップにしてゆきたいと考えています。 11月の第一委員会での投票の際には反対票を投じたフランスが、今回の総会での投票では「無投票」に転じました。(詳細な背景はまだわかりませんが、フランスの代表は、この決議の投票の場にはおり、この日の午後に行われた他の決議の投票には、全て参加していたとのことです。)前回、棄権したいくつかのNATO加盟国は、国内でのICBUW賛同団体の働きかけにもかかわらず、残念ながら今回も棄権のままでした。 第一委員会での投票には欠席していた非同盟運動(NAM)加盟国のうち9カ国と、NAM加盟国ではない2カ国が、今回は投票に参加し、賛成票を投じました。特に、セルビア(第一委員会では棄権)とボスニア・ヘルツェゴヴィナ(前回は欠席)は、いずれもNAM加盟国ではありませんが、今回賛成票を投じました。ウラン兵器の被害国として、この問題への関心を改めて示したものとして注目されます。 他に、前回は欠席で今回は棄権した国(いずれもNAM以外の国で3カ国)、また、今回の投票には事情があって参加できなかったNAMの国(2カ国)がありました。なお、記録上は、前回、棄権票を投じたカンボジア(NAM)は、第一委員会での投票後、「賛成票を投じるつもりだったが、誤って棄権票を投じてしまった」ことを正式に表明し、今回は、賛成票を投じています。 投票の数日前に、オランダ国会では「賛成票を投じるように」との決議が出されていたのですが、オランダ政府は、前文の「潜在的に有害な影響(potentialharmful effects)を考慮に入れつつ」という文言に難色を示し、結果的には反対の態度を変えませんでした。しかし、総会での決議採択の後、次のように発言しています—ウラン兵器の問題についての調査の必要性を認識しており、国連がこの問題に関心を示したことに感謝する。また、WHOなどの国際機関による科学的調査では、決議で言及されている「潜在的に有害な影響」を支持するような確定的結論は出されていないが、オランダ政府としては、この問題についての現在進行中及び今後の調査を注視し、採択された同決議に従って報告される他の国連加盟国や国際機関の見解を注意深く検討したい、と。 いずれにしましても、国連総会において劣化ウラン決議に関する決議が採択されたのは今回が初めてです。しかも圧倒的賛成による採択です。劣化ウラン問題への、より積極的な取り組みの実現のため、今後も皆さんとともに、国際社会や日本政府への働きかけを、さらに強めてゆきたいと思いますので、ご支援とご協力をよろしくお願い致します。 ICBUW運営委員嘉指信雄 森瀧春子 振津かつみ 国連総会での各国の投票結果: 賛成: Afghanistan, Algeria, Antigua and Barbuda, Argentina, Armenia, Austria, Azerbaijan, Bahamas, Bahrain, Bangladesh, Barbados, Belarus, Belize, Benin, Bhutan, Bolivia, Bosnia and Herzegovina, Botswana, Brazil, Brunei…

国連総会での投票を前に、ICBUWとして急遽、日本政府へ申し入れ

2007年12月5日 皆様 今日(5日)の現地時間の午後に、「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」への投票が国連総会にて行われます。(12月4日付、嘉指さんの投稿をご参照下さい。)11月1日の第一委員会での決議採択の後、世界各国の「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)のメンバーは、特に第一委員会で「棄権」や「反対」した国々において、それぞれの政府に対し、総会での投票で賛成票を投じるようにとの働きかけを行ってきました。   日本でも、国連総会での投票に先だって、ICBUWとしての日本政府への申し入れを急遽、行いました。本日(5日)午前、ICBUW運営委員の森瀧、振津 が、佐藤真紀さん(日本イラク医療支援ネットワーク=JIM-Net)、社民党福島みずほ議員と秘書の方々とともに、外務省を訪問し、下記の「申し入れ 書」と「世界の科学者からの共同声明」(5日現在67名の科学者の賛同リストを添付)を、軍縮管理軍縮課長の森野泰成氏に手渡しました。 森野軍縮課長は、「劣化ウラン兵器が環境や人々の健康に影響を及ぼす可能性があるとされている問題については、政府としてもきちんとフォローして行くということで、国際機関の報告を注視している。そういう意味で今回の決議案に賛成した。」と、第一委員会での決議賛成の経緯を述べ、総会での投票でも同決議に賛成する意向であることを明言しました。また、「今後のことは検討中だが、新しい要素が出て来る必要があるので、国際機関の報告を注視している。」と述べました。今後の影響評価については、「科学者の共同声明」にある内容についても勘案しながら検討を進めるとも述べました。 ICBUWとしては、これまで日本政府が繰り返し述べてきたように「国際機関の報告を注視する」だけでなく、既存の報告の不十分点を認識した上で、新しい科学的知見や、「予防原則」の重要性も検討し、被害者や被害地域の現状もしっかりふまえて、日本政府としての独自の影響評価を積極的に行うよう要請しました。また、検討にあたっては、国際キャンペーンに取組むICBUWからの情報提供も受け入れ、ウラン兵器禁止に取組む国内外のNGOとも「前向きな対話」をしながら行うよう求めました。 今後、この国連決議に賛成票を投じた日本政府が、どこまで真剣にウラン兵器の問題に取組むのかが問われています。ウラン兵器の危険性を正しく評価するのか否か、国際的な軍縮の課題として、「被爆国日本」としてもその禁止に向けて積極的に関与するのか否か、日本の米軍基地に保管されている劣化ウラン弾をどうするのかなど、引続き、具体的に問うて行きたいと思います。 今後とも、国際キャンペーンと結んで、皆さんとともに、日本政府への働きかけを強めてゆきたいと思いますので、ご支援とご協力をよろしくお願いします。 ICBUW運営委員森瀧春子振津かつみ 劣化ウラン兵器に関する国連決議について日本政府への感謝と要請 2007年12月4日 内閣総理大臣 福田康夫 様 外務大臣   高村正彦 様 私たち「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)は、劣化ウラン兵器の環境と健康への有害な影響を懸念し、同兵器が国際人道法に反する「無差別殺傷兵器」のひとつであると認識し、その禁止と被害者の救済を求める国際キャンペーンに取組むNGOです。現在、日本を含む世界25カ国で、92団体が私たちのキャンペーンに賛同しております。 2007年11月1日に、国連第一委員会で採択されました「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」の票決において、日本政府が同決議を支持されたことを私たちは心から歓迎し、感謝致します。また、来る総会での票決においても、支持の立場を堅持されるようお願い致します。さらに、決議が採択され、国連事務総長が「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用がもたらす影響」に関する見解を加盟国に求める場合には、日本政府として、最新の国際的な科学的調査研究の成果について、独自に、十分な検討を行い、その成果をふまえた報告書を作成して、議論に積極的に参加されますようお願い致します。 同決議は、国連第一委員会において、世界の多くの国々が、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮に入れつつ」(前文第4項)、「環境を保護するため直接的手段を取る必要をより強く認識しているが故に、そうした努力を脅かす事柄に対しては、いかなるものであっても、必要な措置を速やかに講じる必要があると確信し」(前文第3項)、採択されたものです。また、国連憲章と国際人道法に従い(前文第1項)、武器規制と軍縮を進めることの決意(前文第2項)を劣化ウラン兵器の問題においても示したものであると考えます。[周知のように、すでに1996年、「国連差別防止及び少数者保護に関する小委員会」(99年に「人権促進・擁護小委員会と改称」)において、ウラン兵器を、核兵器、化学兵器、クラスター爆弾、生物兵器など並んで「大量あるいは無差別な破壊をもたらす兵器」として批難する決議がなされ、1997年、2002年にも同様の決議が採択されています。] 私達は、この決議が総会においても採択されることよって、劣化ウラン兵器使用の影響について、国連加盟国の中で真剣な議論がなされ、「対人地雷」や「クラスター爆弾」に続いて、劣化ウラン兵器の問題が、国際的な軍縮の重要課題のひとつとして取り上げられ、その全面禁止に向けて国際社会が進んでゆく第一歩となることを期待しています。 劣化ウラン兵器は核兵器ではありません。しかし劣化ウランは、日本の国内法でもその取扱いが厳しく管理規制されている放射性物質です。劣化ウランが兵器として使用され、環境が汚染されつつある現状を重く受け止め、その影響評価について真剣に調査・検討し、これ以上の環境の放射能汚染を防ぐべく努力することは、「被爆国日本」の政府としての国際的責務です。日本政府が、その責務をぜひとも果たされるよう要請致します。 以上、感謝を表明すると同時に、申し入れ致します。 「ウラン兵器禁止を求める国際連合」運営委員嘉指信雄森瀧春子振津かつみ