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「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」立ち上げの経緯

嘉指信雄(かざしのぶお)
「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」代表
劣化ウラン弾問題を直視するならば、「アメリカの 戦争」への安易な追随、その一環としての自衛隊のイラク派遣などできないはずであり、放射能被害の実態調査と被害者への支援こそ、被爆国日本の責務である ―そんな思いを抱く人々によって、劣化ウラン弾問題に焦点をあてた活動が、札幌、東京、京都、大阪、神戸といった都市を拠点として進められてきている。 (札幌の「NO DU サッポロ・プロジェクト」、東京の「劣化ウラン廃絶キャンペーン・東京」、「劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク」、神戸の「NO DU Kobe Project」(準備会)など)
広島でも、「イラクの自由作戦」の名のもと、非人道的な劣化ウラン兵器がふたたび使用されたという事態の意味を深刻に受けとめ、二〇〇三年六月十日、「NO DU(劣化ウラン弾禁止) ヒロシマ・プロジェクト」が立ち上げられた。当プロジェクトは、同じ年の三月二日、広島で作られた六〇〇〇人の人文字「NO WAR NO DU!」を企画した「実行委員会」、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」、および、写真家の森住卓氏の英語版写真集Children of the Gulf War: Another Nuclear War (湾岸戦争の子どもたち―もう一つの核戦争)などの発行・普及に取り組んできた「劣化ウラン弾禁止を求めるグローバル・アソシエーション」などを母体として発足したものである。
当プロジェクトは、発足直後に、「戦争被害と劣化ウラン弾被害」についての予備的調査団をイラクに派遣した。国際的機関による本格的かつ早急な調査を求 めるアピールを発するためだが、森瀧春子さんが持ち帰った様々なサンプルのうち、バグダッド郊外の市街地に放置されたイラク軍戦車に付着していたチリから は、劣化ウランが検出された。(分析は、広島大学原爆放射線医科学研究所の星正治教授と田中憲一助手による。)このことは、今回のイラク戦争では市街地で も劣化ウラン弾が使用されたことを証明するものであり、また、劣化ウラン弾の使用について曖昧な答弁を繰り返してきている川口外務大臣など日本政府の対応 がいかに無責任なものか証している。(より詳しくは、『ヒロシマ・アピール』収録の「緊急イラクレポート」を参照。)
なお、白血病の子どもやその父母など十八名から採取した尿のサンプルは、金沢大学自然計測応用研究センターの山本政儀助教授(放射化学)らによって分析 されていたが、最近、一応の結果が報告された。それによると、尿一リットル当たりのウラン238含有量は、急性リンパ性白血病で入院中の女児の二五一・〇 ナノグラムを最高に、一九〇ナノグラム台二人を含む四人が一〇〇ナノグラム台で、平均七二・六ナノグラムだった。なお、日本人の平均値は十数ナノグラムと のこと。(一ナノグラムは、一マイクログラム=百万分の一グラムの、そのさらに千分の一)
こうした比較的高い数値が劣化ウランによるものかどうかを決定するには、ウラン235とウラン238の比率の分析結果を待たなければならないが、今回の 報告においても、特に、爆撃地から五十メートル、百メートルといった所に住んでいた子どもの白血病患者(バグダッド・マンスール病院入院)から最も高い数 値が検出されたことは注目に値する。劣化ウランによるものと特定されれば、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾の微粒子が人体に入ってしまっていることの動 かしがたい証しとなる。
一万部を超えた『ヒロシマ・アピール』
さらに昨年八月、「ヒロシマ・プロジェクト」では、広島でのこうした取り組みの報告も含めて、劣化ウラン問題に様々な角度から光をあてた『劣化ウラン弾 禁止を求めるヒロシマ・アピール』(全68頁:頒価七〇〇円)を刊行した。この『ヒロシマ・アピール』は、日本各地の多くの方々が学習会や大学の講義での テキストなどに使ってくださっており、すでに二度改訂し、一万二千部を発行するに至っている。当初の目的であった英語版も一〇月に初版三千部を発行した。 以下は、読んでくださった方々から寄せられた感想の一部である。
『ヒロシマ・アピール』は、現在、人類が冒している最も深い罪を言い当てていると思います。かなりの部数を贈呈していますので、郵送料に悲鳴をあげてい ますが、海外からの反響があると、なんのそのと年金を削って送っています・・・・女性団体の勉強会で声を出して読む試みをしたいと考えて、準備中です。
イラクをこのような目にあわせたのは、戦争をしたアメリカだけじゃなく、戦争を止められなかった日本や全世界だ。だからイラクの人々を救う責任が私たちにあると思う。
(アメリカの方から)『ヒロシマ・アピール』を受け取りました。涙が流れました。冊子に含まれている全ての情報と皆さんの努力に深く心を動かされました。 私が知りたいと思うのは- 私には何ができるだろうか、ということです。勿論、周囲の人々とこの問題について議論をしていくつもりですが、その他に、皆さんを支援するために何ができ るでしょうか。どうぞ教えてください。皆さんのグループの努力を支援するため、私にできることは何でもするつもりです。
英語版を読んだレバノンの環境雑誌社からは、アラビア語で短縮版と完全版で出版しないかとの申し出が寄せられている。現在、私たちは、イラクへの自衛隊 派遣がはらむ根本的な問題について世論を一層喚起するためにも、この『ヒロシマ・アピール』(日本語版・英語版)を内外の政治家、マスコミ・教育関係者な どに送り届けるキャンペーンに取り組んでいる―
ヒロシマは訴える  ノーモア・ヒバクシャ!
これ以上、ヒバクシャをつくり出してはならない。
劣化ウラン弾は、化学的毒性が高い放射能兵器であり、
大量破壊兵器である。
(『ヒロシマ・アピール』八頁より)

(二〇〇四年四月末:記)

NO DU ヒロシマ・プロジェクト 事務局スタッフ

事務局スタッフ
嘉指 信雄 (代表)
森滝 春子 (事務局長)
雨宮 功  (会計)
上山 耕平
大月 純子
岡本 珠代
尾崎 令枝
小山 和子
佐々木 崇介
佐藤 周一
伊達 純
馬場 浩太
檜山由美子
平尾順平
藤村 寛(ホームページ)
Steve Leeper (Atlanta, USA)
Elizabeth Baldwin (Atlanta, USA)
監査:舟橋 喜恵
顧問:丸屋 博
※この他、国際会議・翻訳・通訳などでは、多くのボランティアの方にご協力いただいております。

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