ICBUW(劣化ウラン兵器禁止を求める国際連合)のニュースレター“Friendly Fire”最新号のICBUW広島大会報告をICBUW評議員の振津かつみさんが翻訳して下さったので、紹介します。
ICBUWニュースレター最新号 -ICBUW広島大会報告-
ICBUWのニュースレター”Friendly Fire” 最新号(第3号)に「ICBUW広島大会」の報告記事が「広島大会アピール」とともに掲載されました。英文のものは先日のヘルシンキでの「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)の世界大会やフィンランド国内での市民の取組み、ロビー活動でも配布され活用され、ICBUW広島大会の成果をより多くの人々に知ってもらうことができました。
下記に記事の日本語版を掲載致します。どうぞご活用下さいませ。
“Friendly Fire “のPDFは、一部訂正・追加記事を掲載の上、近日中にICBUWのウェブサイトにもアップされる予定です。[Friendly Fireの原文はこちらをご覧下さい]
記事は「ICBUW評議会」としてのとりあえずの「ICBUW広島大会まとめ報告」です。大会の詳細は、すでに広島実行委員会からのアナウンスにもありましたとおり、来年始めに「大会記録論文集」として発行される予定です。
なお誌面の都合もあり、大会でご発言頂いた全ての方々のお名前、グループ名などを記事に掲載することができなかったことをお詫び申し上げます。
振津かつみ/ICBUW評議員
[ICBUWニュースレター “FRIENDLY FIRE” 3号/2006年9月]より 第3回ICBUW世界大会-報告- by「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)評議会
8月3~6日、第3回ICBUW世界大会が広島で開催されました。大会には世界12カ国からの40人以上と、さらに多くの日本全国からの参加者をあわせ、約400人が参加しました(註)。
大会は600名を越える市民、70を越える団体の賛同カンパによって運営され、草の根の市民のすばらしい連帯の力に支えられました。
ICBUWとして、大会を支えて下さった全ての方々に心から感謝を申し上げます。またこの機会に、会議が滞りなく進行するように協力して下さった全ての方々、通訳、報道関係者、宿泊の手配をして下さった方々、海外ゲストのアテンドをして下さった方々に御礼申し上げます。
これらの人々の尽力のおかげで大会を成功させることができたのです。
とりわけ、現地広島での受け入れ団体として、大会開催の準備と運営に非常に重要な役割を担って下さったICBUWメンバー団体「NODUヒロシマ・プロジェクト」のスタッフとボランティアの皆さんに支えられたことを強調したいと思います。そしてICBUW評議会は、大会実行委員長の嘉指信雄教授と事務局長の森瀧春子さんの疲れを惜しまぬ献身と情熱に特別の感謝の気持ちを送りたいと思います。
今回の大会は、「ヒロシマから世界へ―届けよう“劣化ウランヒバクシャ”の声を!」との呼びかけに応え、全世界から劣化ウラン被害者、活動家、科学者、法律家、ジャーナリストなどが広島に集いました。日本全国の人々、劣化ウラン反対、反戦、反核、環境保護、人権擁護、被害者支援などに取組む市民が、様々な国々からの代表者とともに大会に参加しました。最新の科学的研究から世界的な劣化ウラン問題に関する議論に至るまで、劣化ウラン問題全体を網羅するような50を越える報告がなされました。
大会の冒頭には、平和市長会議の議長でもある秋葉忠利・広島市長が暖かい歓迎の挨拶をしてくれました。そして、ロザリー・バーテル博士(米国・計量生物学者、「公衆の健康を憂慮する国際研究所」IICPH創始者)が基調講演「劣化ウランと湾岸戦争症候群」を行い、ウラン兵器が強固な標的にあたった際に生じる劣化ウランのエアロゾールが有害な健康影響を及ぼすことを明確に具体的に述べました。バーテル博士は、劣化ウランのエアロゾールがひとたび吸入され組織や臓器に達すると、DNAや細胞内の蛋白を損傷し、「湾岸戦争症候群」にみられる様々な疾患を引き起すだろうと述べました。
また、参議院議員・福島瑞穂さん(社民党党首)からも挨拶を受けました。福島さんは、私達の運動へ連帯を表明し、日本政府に対し劣化ウラン問題を追及してゆく決意を述べました。国連訓練調査研究所(UNITAR)のアジア太平洋地域広島事務所長のナスリーン・アジミさんも大会に参加しました。アジミさんは、閉会セッションで感動的なスピーチをし、20万筆を越える「ウラン兵器禁止を求める国際署名」の一部を受け取りました。
大会に参加できなかった人々から多くのメッセージが寄せられました。ダーク・ヴァン・ダ・メイレンさん(ベルギー連邦政府議会の社会主義者リーダー、今年初めに「ウラン兵器禁止法案」を提出した議員)、キャロライン・ルーカス博士(英国「緑の党」のメンバーである欧州議会議員)から、そして国際平和ビューロー(IPB)や国際劣化ウラン研究チーム(IDUST)、フィンランドの「平和を求める女性たち」(Women for Peace)、「ノー・モア・原発―運動」(No More Nuclear Power movement)、フィンランド平和委員会( Finnish Peace Committee)などの世界のNGO、そしてイラクの「緑の大地イラク」(Green Land Iraq)など環境保護NGOからのメッセージです。
[劣化ウラン被害者の訴え]
木曜日(初日)の全体会議の中では、イラク南部のバスラから参加したカジャック・ヴァルタニアンさん(環境放射能測定技師)は、住民が戦争による劣化ウラン汚染に曝され続けている実情を報告しました。彼が報告した汚染箇所の地図は、それらの汚染地点が市内のあちこちにあり、市街地のごく近くに位置していることを明らかに示すものでした。
ジャワッド・アル・アリ医師(アルセイダー教育病院内科医長・癌センター所長)は、バスラでは過去8年間に固形癌の罹患率が約1.4倍に増加し、人口10万人あたり44.7件から61.5件に増加しているとの最新の疫学調査の結果を報告しました。彼は、1991年以来この地域にもたらされた、ウラン兵器をはじめとする戦争による深刻な環境破壊がその要因であると考えられると述べました。アル・アリ医師は、基本的な機器や医薬品の不足する中で治療にあたっているイラクの医師たちの困難な状況を語り、医療支援と、独立した汚染・疫学調査への国際的協力を訴えました。
アメリカ、イギリス、ヨーロッパの帰還兵からも報告がありました。アメリカの帰還兵、ハーバート・リード氏、デニス・カイン氏、そしてイギリスの「湾岸・アフガン・イラク戦争退役軍人慈善団体」理事のレイ・ブリストウ氏は、イラクでの軍務の後、いかに健康を害されたかについて語り、その話しは人々の心に強く訴えるものでした。彼らの体験は、イタリアの軍人のフィリッポ・モンタペルト氏の体験と共通した点が多くありました。モンタペルト氏は「オッセルバトーレ・ミリターレ」(軍事・治安及びイタリア国家警察関係者人権擁護団体)を代表して参加しました。モンタペルト氏とイタリアのジャーナリストであるステファニア・ディベルティートさんは、バルカンからのイタリア帰還兵に癌が急増していると述べ、彼らのグループが取組んでいる、「バルカン症候群」に苦しむ他の兵士たちの(補償要求への)法的支援について報告しました。
アメリカでは、健康調査、治療と補償を求める、湾岸戦争とイラク戦争の帰還兵の運動が広がっています。コネチカット州、ニューヨーク州、ルイジアナ州などでは、帰還した州兵の劣化ウラン汚染検査、健康登録を行う法律が制定されました。これらの検査制度が州予算を獲得し、有効な手だてとなるかどうかを見守らなければなりません。
独自の検査で汚染が確認された(尿の劣化ウランが陽性に出た)ハーバート・リード氏は、他の8人の帰還兵とともに、国に対して(危険性を知らせずに従軍させた事に対する責任を問う)裁判に向けた準備を進めています。
一方イタリアでは、「オッセルバトーレ・ミリターレ」などの独立の軍関係者や退役軍人の組織が、バルカンなどで劣化ウランに被曝した兵士が補償を求める訴訟を支援しています。これまでに(国防省に対して年金補償を求めた)二つの訴訟で兵士側が勝訴しています、まだ多くのケースが保留されたままになっています。しかし、イタリア国防省は、いまだに劣化ウランの影響を認めようとはせず、ストレスや食事が悪かったために兵士が病気になったのだと言い張っているのです。
すべての被害者は、自分たちが体験したような被害に、もうこれ以上、市民も兵士もいたずらに苦しめられるようなことの決してないように、ウラン兵器の全面禁止を訴えました。
市民も軍人も含め、これら被害者への緊急の支援が国際社会に対して呼びかけられました。医療支援も含めたイラクの人々への援助を行っている日本の NGO、「日本イラク医療支援ネットワーク」(JIM-Net)、「イラク・ホープ・ネット」などからの報告を受け、被害調査や直接的な医療支援の両面で、世界各国の劣化ウラン被害者を支援してゆく必要性について広範な討論がされました。
[世界各国と地域でのキャンペーン報告]
欧米、日本、韓国、オーストラリアから参加したICBUWメンバー、活動家、ジャーナリストらは、ウラン兵器禁止を求める各国での運動の現状を報告しました。
おそらく欧州で最も注目すべきニュースは、昨年11月の欧州議会における、ウラン兵器の禁止にもつながるモラトリアムの採決(「大量破壊兵器の不拡散;欧州議会の役割」の一項)でしょう。これは2003年以降、三度目の決議ですが、モラトリアムに加えて禁止をも呼びかけた初めての決議でした。この決議は、しかしながら、欧州連合のよこしまな政治のしくみの中では、欧州首脳会議で承認されない限り法律にはなりません。当時、英国政府が欧州連合議長国を担当していました。英国政府はこの決議を快く思ってはいないのです。しかし、欧州議会は4億人を越える人々を代表するものであり、その欧州議会が劣化ウランに関する問題を認識したということは大きな前進です。
ベルギーでは、ウラン兵器についての法案が両院で提案されています。ベルギーのICBUWメンバーである「ストップ・ウラン兵器ベルギー連合」が、両院の国会議員との密接な協力の下、法案提出のためのロビー活動に重要な役割を果たしてきました。この秋にも法案審議のための公聴会が開かれる予定です。 ICBUWのアドバイザーも含む、様々な分野の専門家が証言することになっています。ベルギーでの国内連合の設立のモデルは、全ての国々に、そのままあてはめられるわけではありませんが、有効な政治的変化をもたらすためのひとつの意義あるモデルとして紹介されました。
イタリアでは、イタリアのICBUWメンバーである「ピースリンク」が、帰還兵の補償を求める訴訟への支援を行ってきました。また米国政府がイタリア国内の米軍基地に劣化ウラン兵器を貯蔵していることを糾弾し、(ウラン兵器の使用の疑惑がある)サルディニア試射場にも注目しています。試射場の周辺の村では白血病やその他の癌の増加が報告されており、研究者たちは毒性のある(金属の)「ナノ粒子」の放出とこれらの病気と関連があるかもしれないと疑っています。
イギリス政府と軍は、2002年の劣化ウランに関する「英国学士院」の報告の不十分な見解を未だにふりかざし、劣化ウランは「極端な」場合にのみ健康に危害を及ぼすと主張し続けています。英軍が戦闘で劣化ウランを使用し続けていることは、世論に反しています。政府や軍は、未だに「湾岸戦争症候群」を現実の病気、あるいは症候群として認めてはいません。アスベスト(石綿)曝露など、補償が問題になった英国での他の公衆衛生上のいまわしい事件の歴史があるにもかかわらず、政府が近い将来に劣化ウラン被害者を補償するという気配はありません。
兵器を生産している会社「BAEシステム」と政府とは信じがたいほど密接な関係があり(「英国で最も保護されている会社」といわれている)、チャレンジャー戦車(BAEの子会社が製造)に劣化ウランを用いるかどうかという選択は、兵器産業の影響を強く受け続けることでしょう。国防大臣は、「タングステン合金もまだ試みようとはしており、(劣化ウランだけといった)偏った考えは持っていない」と、最近、主張していますが、これは通り一遍の一般論を述べたに過ぎません。
英国の帰還兵の自主的劣化ウラン検査体制を運営している「劣化ウラン管理委員会」は、「劣化ウラン汚染が広範な規模ではみられない」ということをみごとに示しました。378名の帰還兵を検査し、ひとりも陽性の結果が出なかったというのです。しかしこの検査計画そのものに、問題がありました。というのは、希望者のみを対象とし、宣伝も十分にされず、帰還兵は国防省をほとんど信頼していないのが現状です。さらにこの調査は、個々人の報告に基づいて行われたものであり、帰還兵を代表するような統計的に正しい調査集団について行われたものではなく、帰還兵の状態をほんとうに反映しているとはいえないのです。
劣化ウランについての、より独立した調査が必要と考え、「劣化ウラン反対キャンペーン」(CADU)は、「イラクの子どもたちの歯のプロジェクト」への国際的な資金援助を呼びかけています。この調査はイラクでの劣化ウラン汚染地域の広がりを評価することをめざしています。
ドイツでも、ドイツのICBUWメンバーがベルギーの例にならって、劣化ウラン反対国内連合を創設することを決めました。特に重要なのは、「ドイツ・クラスター爆弾キャンペーン」など、他の紛争後(支援)や軍縮NGOとの連携です。
アメリカでは、ウラン採掘から、兵器製造、試射に至るまで、全ての過程での放射能汚染が大きな問題になっています。25年間にわたりウラン兵器を製造していた工場(スターメッツ社)のあるマサチューセッツ州コンコードでは、「市民による調査と環境監視」(CREW)や「平和のための草の根行動」が、「スーパーファンド」を適用するように強く求めてきました。「スーパーファンド」というのは、人々の健康や環境にとって危険な有害廃棄物をその場所から除去するための予算を供与するという制度のことです。2001年からスターメッツ社は「スーパーファンド」の適用を受け、2006年3月に、ドラム缶 3000本分以上の劣化ウランが、同社の敷地内から撤去されました。ふたつの草の根グループは、現在、工場の敷地を人々が住めるほどのレベルにまで除染するように求めているところです。
すでに記載しましたように、米国では、イラク帰還兵を支援するためのロビー活動や法的取組みが盛んに行われています。
韓国から大会に参加したフォトジャーナリストで平和活動家のイ・シウ氏は、アジアに貯蔵されている米軍基地内の劣化ウラン兵器の危険性を強く訴えました。「沖縄の嘉手納基地に40万発の劣化ウラン弾が2001年には保管されていた」とのニュースが大会の直前に日本の全国紙(毎日新聞)のトップ記事に掲載されました。この砲弾の数は、1991年の湾岸戦争時に米軍が使用した砲弾の半分にも相当するものです。これはハワイ在住のイ・シウ氏の友人が、アメリカの情報公開法に依って公開させた機密文書に基づくものです。彼は「韓国と沖縄の米軍基地に大量のウラン兵器が貯蔵されている。その数量の実数と記録上の数にかなりの差があり、どこかに紛失してしまっている。劣化ウラン兵器の貯蔵と管理に深刻な問題があることを示している。」と報告しました。
このことはアジア地域のキャンペーンにとって重大な問題です。大会での報告を受け、同地域で活動に取組む人々が、日本・韓国をはじめアジア諸国の米軍基地に貯蔵されているウラン兵器について、その実態を明らかにさせ、このような兵器全てを同地域から撤去させるように求めるべきであるという課題が示されました。
この大会を通し、アジアの南と東の地域のキャンペーンのより親密な連携が促され、連帯した取組みが進められることでしょう。
いうまでもなく日本の市民団体からは、力強い数多くの報告がなされました。市民によるイラク現地の劣化ウラン汚染調査やイラクの医師達の日本での研修受け入れなどの取組み(「NO DUヒロシマ・プロジェクト」)、原子力文化振興財団、外務省・防衛庁などへの申し入れ(「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク」)、セルビア政府によるウラン弾と汚染土壌の撤去作業取材(「STOP!劣化ウラン弾キャンペーン」)、ICBUWの「法律チーム」の作成した「禁止条約案」への追加提言(「ウラニウム兵器禁止条約実現キャンペーン」- UWBAN)など、様々な活動報告と意見表明がなされました。
[ウラン兵器をめぐる科学的討論]
大会には、様々な専門分野の科学者が参加ました。ロザリー・バーテル博士の他に、ベイバー・ストック博士(元WHO放射線・公衆衛生地域アドバイザー、現在クオピオ大学環境科学部講師、フィンランド)、ハイケ・シュレーダーさん(染色体分析を用いた生物学的線量推定の専門家、ブレーメン大学、ドイツ)、トーマス・フェージ博士(マウントサイナイ医科大学・臨床病理助教授、米国)、スアード・アル-アザウィ博士(地質環境工学准教授、イラク)、アントニエッタ・ガッティ博士(ナノ病理学専門家、モデナ・レッジョ・エミーリア大学、イタリア)、ステファノ・モンタナリ博士(ナノ診断・科学技術部長、イタリア)が報告し、そして多くの日本人の科学者の方々がコメンテータとして発言しました。
様々な違う分野の専門家が、それぞれの立場から、劣化ウランの放射能毒性と化学毒性についての具体的なデータに基づいて、特に自然界には存在しないような劣化ウランのエアロゾールによる内部被曝が、人々の健康と環境に有害な影響を及ぼすと述べました。
しかし、劣化ウラン兵器によって生じる粒子のサイズ、環境への拡散範囲、体内動態、生体損傷の詳細なメカニズム、被曝した人々にみられる疾病との因果関係などについては、未だ科学的に議論のあるところであり、今後の調査研究を待たねばならなりません。
「予防原則」に基づいて各国政府に圧力をかけることができるほどの十分な知見は得られている(訳注参照)という点については、広く共通の認識となりました。特に劣化ウランの化学毒性については議論の余地はありません。さらに、「劣化ウランが安全だ」というのであればその「実証義務」は兵器を使用した政府や軍の側にあるのであり、被害を受けた市民や兵士、NGOや独立の科学者に(「因果関係の実証義務」を)押し付けるべきではありません。
(訳注:「たとえ因果関係が完全に明確に証明されていなくても、科学的に環境への深刻な、取り返しのつかない危険性があると考えられる場合には、具体的な方策に即刻、取組まねばならない」という環境保護の立場に立つ「予防原則」からも、ウラン兵器の禁止と被害者の救済と補償を求めるべきであること。)
参加した全ての科学者は、ウラン兵器禁止を求めるキャンペーンを科学者として支え、劣化ウランの有害な影響についてさらに研究・調査を進める意志を表明しました。
[原爆被爆者との交流]
被爆地ヒロシマでの大会開催はとても意義深いことでした。ウラン兵器と核兵器とは、その物理的破壊力の点でも、その後の健康被害のメカニズムの点でも、根本的に異なる兵器です。しかし、核兵器もウラン兵器も環境の放射能汚染と放射線ヒバクをもたらします。大会の最中の8月4日に、「日本政府は広島の原爆被爆者の原爆症を不当にも認めず、被爆者の被害の訴えを退けた」とし、「原爆症認定」を求める広島地裁での裁判に勝訴判決が出されました。「内部被曝」の影響をどう評価するかが、この訴訟のひとつの争点でした。
「ヒバクシャとの交流」の分科会で、「原爆訴訟を支援する広島県民会議」の渡辺力人氏は、内部被曝や残留放射能の影響は広島・長崎の原爆被爆者でもまだ「未解明」だが、ウラン兵器の場合も「未解明であることを口実にして、(劣化ウランの影響が)疑われる健康障害を切り捨てるのは、科学的に正しい態度とはとうてい言えない」と強調しました。
[国際キャンペーンを支持し拡げましょう]
大会では、ウラン兵器の使用は、現行の国際人道法、人権法や環境法に反するものであり、「ウラン兵器禁止条約」の締結めざして国際キャンペーンを強めることが重要であることを改めて確認しました。この条約は、単なる禁止ではなく、(兵器の使用のみならず)その製造・運搬・貯蔵・試射・売買などの全てにわたる禁止をめざすものであり、また被害者への支援・補償を行わせるためのものでもあります。
大会は、ウラン兵器反対に取組む非常に広範な人々の連帯を強め、運動を前進させる大きな力を得る場となりました。劣化ウランの被害者、全世界の劣化ウラン反対の草の根のグループ、そして劣化ウランの有害な影響についての研究をしている多くの国々の科学者たちに至るまで、「禁止条約案」とこの運動全体に対して、広い支持が示されました。この連帯の思いをこめて、閉会セッションでは、世界の人々、科学者、NGO、マスコミ、国際機関、各国政府に支持を呼びかける「ウラン兵器禁止ヒロシマ・アピール」を発表しました(最後のページに掲載)。
大会の前後には、大会参加の海外ゲストを迎えて、反核・平和運動に取組む多くの市民グループや、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)などの団体による関連集会やワークショップが開催され、劣化ウラン問題についての議論が深められました。東京、大阪、神戸、福岡、広島、長崎の各地で開催されたこれらの集会で、市民は、海外ゲストの最新の調査結果や個人体験などについての報告を聞くことができました。そして、大会そのものについても、地方と全国の両方のレベルで多くのマスコミ報道がなされました。
この大会からの最大のメッセージとして全ての参加者が共有した思いは、ウラン兵器の禁止を求めるキャンペーンを、各地域での活動と国際的なロビー活動を通じ、また大会で築かれた連帯の上に、さらに前進させなければならないということです。それは、すべてのウラン兵器被害者、そして私達の子どもたち、未来の世代のためなのです。
お知らせ:
大会の様子は<www.nodu-hiroshima.org/en/>で映像でその一部を見ることができます。
大会の全報告論集は2007年初めに発行予定。
詳しい情報は:info@nodu-hiroshima.org
(仮訳:振津かつみ)
註) 参加者数は実際には、参加登録者総数が399人、参加者延べ数が約1000人、内訳は8月3日(木)が279人、4日(金)が282人、5日(土)が244人、6日(日)が約200人であった。