「いわゆる「許容量」と呼ばれるものも「安全量」ではなく、「がまん量」に過ぎません。さらに、今日の原子力利用においては、利益を受ける集団と危険を押し付けられる集団が乖離していて、実際には「がまんさせられ量」になっています。
原子力を推進している人たちは被曝量が少なければ安全であるかのように装っていますが、放射線の物理的な性質そして生物の細胞の構造・機能からして、どんなに微量の被曝であっても影響はあります。原子力を推進する人たちも、微小な被曝でも危険がゼロとは言えないため、・・・被曝には「容認できるレベル」があると言うようになりました。しかし、自分に加えられる危害を容認できるか、あるいは、罪のない人々に謂われのない危害を加えることを見逃すかは、何処かの専門家が決めるのではなく、一人ひとりが決めるべきことです。 「ヒバクシャ」というレッテルを貼られたそれらの人々を60年以上調査してきて、どんなに少ない被曝量であっても、癌や白血病になる格率が高くなることが明らかになってきました。低レベル放射線の生物影響を長年にわたって調べてきた米国科学アカデミーの委員会は、2005年6月30日、彼らが出してきた一連の報告の7番目の報告を公表しました。その一番大切な結論は以下のものです。 「利用できる生物学的、生物物理学的なデータを総合的に検討した結果、委員会は以下の結論に達した。被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小値の被曝でもっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある」。」(小出裕章『原子力の専門家が原発に反対するわけ』)