皆様
「ウラン兵器全面禁止と被害者支援・被害調査」への積極的取り組みを日本政府に求めるため、5月上旬、対政府交渉を行います。昨年11月に提案させて頂 き、賛同をお願いしております「日本政府への申し入れ書」および「国際署名」を提出するとともに、関係各省との交渉や国会議員への働きかけを予定していま す。(まだ確定はしておりませんが5月8日で日程調整中です。)
すでにお知らせしていますように、先月、ベルギー議会では、「ウラン兵器禁止法」が可決されました。地雷やクラスター爆弾に続いて、同じく「無差別殺傷兵器」であるウラン兵器の禁止の流れを作り出してゆくため、大切な時期を迎えています。
そのような中で、日本におけるICBUWの活動としても、「日本は、ウラン兵器の全面禁止と、イラクなどの被害地域への医療支援と汚染・被害調査に向け、積極的な役割を果たすべき」ということを、改めて真正面から日本政府に突きつけたいと思います。嘉手納基地をはじめ在日米軍基地でのウラン兵器の貯蔵問題などは、昨年のICBUW広島国際大会でも提起された重要な課題です。新たな放射能汚染と被曝をもたらすウラン兵器の禁止を求めることは、「被爆国日本」として当然なすべき国際的責務のはずです。
昨年のICBUW広島国際大会にご協力・ご参加下さった多くの皆さん、全国各地で反核・平和、環境保護、人権擁護など様々な活動に取り組む皆さんの力を今一度、ひとつに結集して、日本政府に申し入れ、交渉に臨みたいたいと思います。5月連休明けの交渉まで、あと1ヶ月足らずですが、できるだけ多くの皆さんの賛同とご協力を頂きたく、再度お願いする次第です。「申し入れ(案)」への賛同(団体・個人)を、何卒よろしくお願い致します。また「申し入れ(案)」 の内容や項目についての具体的なご意見なども、引き続き寄せて頂ければ幸いです。
(5月6日賛同受付終了いたしました。皆様のご賛同・応援に感謝申し上げます。)
嘉指信雄(ICBUWアジア・太平洋地域コーディネーター)/E-mail: info@nodu-hiroshima.org
森瀧春子(NO DU ヒロシマ・プロジェクト事務局長)/E-mail: haruko-m@f3.dion.ne.jp
振津かつみ(ICBUW評議員) /E-mail: du-ban-hibaku@theia.ocn.ne.jp
ウラン兵器全面禁止と被害者支援・被害調査に関する日本政府への申し入れ(案)
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
外務大臣 麻生 太郎 様
経済産業大臣 甘利 明 様
防衛大臣 久間 章生 様
ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)
昨年8月、「ヒロシマから世界へ―届けよう“劣化ウランヒバクシャ”の声を!」とのICBUWの呼びかけに応え、被爆地ヒロシマに、世界各地からウラン兵器の被害者、専門家、活動家、ジャーナリストなどが集い、「ウラン兵器禁止を求める国際大会」が開かれました。
私たちは、ヒロシマ大会で確認されたアピールに基づき、日本政府に申し入れます。
ウラン兵器は、ジュネーヴ条約などの国際人道・人権法に明らかに反する「無差別殺傷兵器」です。国連人権小委員会ではウラン兵器を、核兵器、化学兵器、クラスター爆弾、生物兵器など並んで「大量あるいは無差別な破壊をもたらす兵器」として批難する決議がなされ(1996、1997、2002年)、アナン国連事務総長(当時)も「戦争と武力紛争による環境収奪を防止する国際デー」に際し、ウラン兵器の環境へ及ぼす危険性を指摘し批難しています(2002年)。また、欧州議会でもウラン兵器使用の「モラトリアム決議」が再三再四採択されています。(2001、2003、2005、2006年)
ウラン兵器は、核燃料・核兵器の製造過程で生じる放射性廃棄物「劣化」ウランを材料とした兵器です。しかし、「劣化」ウランは、日本では「原子炉等規制法」で核燃料物質として規制されている放射性物質です。そのような「劣化ウラン」兵器がイラクなどで繰り返し投入され、放射性物質が大量に環境にばらまかれたのです。
「劣化」ウラン弾は、戦車などの強固な標的にあたると3000℃以上もの高温を発して燃え上がり、生じた酸化ウランの微粒子は遠くまで飛散し、環境を広範囲に汚染します。兵士のみならず多くの一般市民が長期に被曝します。またウラン兵器は、その試射・使用のみならず、製造・運搬・貯蔵など、全ての過程で汚染と被曝を引き起します。
ウランは放射能毒性や化学毒性を合わせ持つ有害物質です。ウラン兵器使用の際に生じる酸化ウランの微粒子が吸入などによって体内に取り込まれ、人々の健康に有害な影響を及ぼすことを示す科学的知見が、すでに数多く報告されています。世界の多くの科学者がその危険性を指摘しています。
ウランによる長期にわたる環境の汚染から、現在と将来の生態系や人々の健康を守らなくてはなりません。「重大あるいは取り返しのつかない損害のおそれのあるところでは、十分な科学的確実性がない」場合でも対策を遅らせてはならないという「予防原則」からも、ウラン兵器を即刻禁止すべきです。
米・英軍によるウラン弾の攻撃を受けたイラクの被災地域の医師たちは、住民の癌・白血病などの憂慮すべき増加を報告し、「ウラン兵器をはじめとする戦争による深刻な環境破壊がその要因である」と訴えています。医療機器や医薬品の不足と闘っているイラクの医師たちは、本格的な医療支援と、汚染・被害調査への協力を国際社会に求めています。
また、欧米ではウラン兵器が使用された地域からの帰還兵の多くが健康障害を訴えています。米国コネチカット州などでは、帰還兵の汚染検査・健康登録を行う州条例が制定されました。またニューヨーク連邦裁判所は、劣化ウラン被曝したイラク帰還兵が国に対し損害賠償請求の訴訟を起こすことを認める裁決を下しました(2006年9月26日)。
嘉手米軍納基地には2001年の時点で40万発ものウラン弾が貯蔵されていたことが米軍の資料でも明らかになっています。日本国内での、このようなウラン兵器の貯蔵・運搬・試射などを決して容認することはできません。
日本政府は、ウラン兵器の使用・試射・運搬・貯蔵などの全面禁止と、イラクなどの被害地域への医療支援と汚染・被害調査に向け、積極的な役割を果たすべきです。とりわけ、新たな放射能汚染と被曝をもたらすウラン兵器の禁止を求めることは、「被爆国日本」として当然なすべき国際的責務だと考えます。
このような状況をふまえ、私たちは日本政府に以下の事項を要請します。
1. ウラン兵器が国際人道・人権法に反する「無差別殺傷兵器」であることを踏まえ、ウラン兵器全面禁止を求める「国連決議」の採択、さらに「禁止条約」の締結に向け、具体的外交努力を行うこと。
2. 嘉手納米軍基地のウラン兵器貯蔵の現状を明らかにするよう米国政府に求めること。
もし現在も嘉手納基地にウラン兵器が貯蔵されているならば、すみやかな撤去を米国政府に求めること。
嘉手納以外の在日米軍基地、寄港米艦船等についても同様に、ウラン兵器の貯蔵や搭載の有無、現状を明らかにさせること。
3. 日本の原発・核燃料推進の中ですでに生じている「劣化」ウランは、厳重に管理し、日本がウラン兵器を製造・装備するようなことは決して行わないこと。
日本の電力会社が米国に委託しているウラン濃縮過程で発生した「劣化」ウランが、米国でウラン兵器製造に軍事転用されないよう求め、その管理の実態を明らかにさせること。
4. イラクの戦争被害地域への本格的な医療支援を行うこと。
5. イラクから帰還した自衛隊員全員に対して、適切なウラン被曝検査と健康調査をすみやかに行い、公表すること。
6. 日本政府として、ウラン兵器の健康・環境影響に関する独自の科学的調査・評価を行い、公表すること。