皆様
「ウラン兵器全面禁止と被害者支援・被害調査」についての対政府交渉の日時、場所が決まりましたのでお知らせ致します。
交渉に先だって、国会議員の方々にもこの問題への理解を深めて頂き、今後協力して取組んでもらうため、「院内学習会」も行います。
日本におけるICBUWの活動として、国際的な流れに呼応して、日本政府に対しても、「無差別殺傷兵器」であり、新たな放射能汚染と被曝をもたらすウラン兵器の禁止に向けて努力するよう求め、嘉手納基地など在日米軍基地でのウラン兵器の貯蔵問題なども含めて正してゆく、第一歩にしたいと思います。また、イラクなどの被災地域の実情にそった医療支援について、政府の具体的な前向きの対応を求めたいと思います。
交渉と院内学習会への参加、ご協力を、どうぞよろしくお願い致します。
*対政府交渉と院内学習会の日時、場所
場所:参議院会館/第1会議室(院内学習会と政府交渉は同じ会場です)
日時:5月8日(火)
1時半ー2時15分:劣化ウラン兵器問題・院内学習会
2時15分ー2時半:交渉参加者・打ち合わせ
2時半-4時半:対政府交渉(外務省、防衛省、経済産業省、内閣府・原子力安全委員会)
*劣化ウラン兵器問題・院内学習会:
内容:ウラン兵器全面禁止と被害者支援に向けて―国際的な動き/環境・健康影響/被害者支援の課題―
報告者:嘉指信雄(ICBUW評議員、アジア・太平洋地域コーディネーター)/振津かつみ(ICBUW評議員)/佐藤真紀(日本イラク医療支援ネットワーク、事務局長)
司会: 森瀧春子(NO DU ヒロシマ・プロジェクト事務局長)
*5月8日当日は、午後1時に参議院会館1階ロビーで集合し、できるだけまとまって会場へ入りたいと思いますので、ご協力お願い致します。参加して下さる方々は、議員会館への通行証などの手続きもありますので、5月6日の夜までに下記のファックスかメイル宛で、担当の振津までご連絡下さい。その際、お手数ですが、ご都合で1時の集合には遅れて到着される予定の方、2時半からの「対政府交渉」のみの参加の方は、明記しておいて下さるようお願い致します。
連絡先/振津: E-mail: du-ban-hibaku@theia.ocn.ne.jp Fax: 0798-44-2614
*対政府交渉の申し入れに際して各省に送ってある「公開質問状」を下記に掲載致します。
当日は、これにそって話し合いを進めます。話し合い時間が限られておりますので、交渉の内容等についてのご意見がありましたら、あらかじめファックスかメイルで、振津までお寄せ頂けるとありがたいです。
*交渉に際しては、全国の皆さんにご賛同頂いている「日本政府への申し入れ」と「国際署名」も手渡します。「申し入れ」には、全国から、128団体、556名の賛同が寄せられています。(5月6日賛同受付終了いたしました。皆様のご賛同・応援に感謝申し上げます。)
「日本政府への申し入れ」の詳細は下記のページに掲載されています。
嘉指信雄(ICBUWアジア・太平洋地域コーディネーター)
森瀧春子(NO DU ヒロシマ・プロジェクト事務局長)
振津かつみ(ICBUW評議員)
[ウラン兵器全面禁止と被害者支援・被害調査に関する公開質問状]
2007年4月16日
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
外務大臣 麻生 太郎 様
経済産業大臣 甘利 明 様
防衛大臣 久間 章生 様
ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)
私達は「ウラン兵器全面禁止と被害者支援・被害調査に関する日本政府への申し入れ」とあわせて、以下の質問状を提出致します。5月8日には、文書で回答し、私たちとの話し合いに応じて下さるよう求めます。
1.ウラン兵器の国際的全面禁止に向けた日本政府の外交努力について(外務省)
(1)環境と生態系を汚染するウラン兵器は、対人地雷などと同様に、戦闘終了後も長期にわたり、兵士だけでなく一般市民にも無差別に危害を与える兵器です。また、国境を越えて汚染が広がることによって、周辺の紛争当事国以外にも被害を与える可能性があります。このようなウラン兵器は、「ハーグ条約」(1907年)、「ジュネーヴ条約第一追加議定書」(1977年)などの国際人道・人権法に明らかに反する「無差別殺傷兵器」です。国連人権小委員会ではウラン兵器を、核兵器、化学兵器、クラスター爆弾、生物兵器など並んで「大量あるいは無差別な破壊をもたらす兵器」として批難する決議がなされ(1996,97,2002年決議)、アナン国連事務総長も「戦争と武力紛争による環境収奪を防止する国際デー」に際し、ウラン兵器の環境へ及ぼす危険性を指摘し批難しました(2002年)。欧州議会でもウラン兵器使用の「モラトリアム決議」(2001,03,05,06年)がされています。
日本政府は、このような「非人道的兵器」「無差別殺傷兵器」であるウラン兵器が、イラクなどで繰り返し使用された事実に対し、「劣化ウラン弾は、特定通常兵器使用禁止制限条約(1980年)、いわゆるCCWによって規制対象とはなっておりませんので、禁止されていない」(2005年10月28日、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会、谷川副大臣答弁)としてその使用を容認する立場をとっています。しかし、同じく「無差別殺傷兵器」である対人地雷については、CCWによる規制対象ではありませんが、国際社会の努力により独自に「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(1997年採択、99年発効)によって規制されることになり、同条約に日本政府も1997年に署名し、翌年、国会承認されたのは周知のことです。クラスター爆弾についても、今年2月22、23日に開かれたオスロ会議での宣言に基づき、2008年までに「クラスター爆弾の使用、製造、移転および貯蔵を禁止」し、「被害者とそのコミュニティへの十分なケアと厚生、汚染地域における(不発弾)の除去、リスク教育、及び禁止されたクラスター爆弾の備蓄廃棄を保証する、協力と援助の体制を確立する」ための「法的拘束力のある国際文書」を成立させることをめざして、具体的に動き出しました。
ベルギーでは、劣化ウラン弾、および劣化ウランを用いた装甲の、ベルギーの領土内における製造、使用、貯蔵、売買、入手、供給、移送を、「予防原則に基づき」禁止する法案が、今年の3月22日に本議会で可決され、ベルギーは、対人地雷、クラスター爆弾に続いて、劣化ウラン弾に関しても、世界に先駆けて禁止する国内法を可決した国となりました。ウラン兵器についても、国際人道・人権法に明らかに反する「無差別殺傷兵器」として、その禁止が国際的な課題に上る重要な時期を迎えています。
・ 日本政府として、ウラン兵器が国際人道・人権法に反する「非人道的兵器」「無差別殺傷兵器」であることを公に認め、「CCWによる規制対象ではない」という理由でその使用を容認する見解を改め、ウラン兵器の国際的禁止に向けて具体的な外交努力をするべきであると私たちは考えます。これらについての政府の見解と、具体的な外交方針を明らかにして下さい。
・日本政府として、ベルギーなど諸外国のウラン兵器禁止に向けた政策をどのように評価しているのでしょうか。日本もそのような世界の動きに呼応し、「非人道的兵器」「無差別殺傷兵器」であるウラン兵器の禁止に向けた積極的な政策を打ち出すべきであると私たちは考えますが、政府はどのように考えますか。
(2)ウラン兵器は、核燃料・核兵器の製造過程で生じる放射性廃棄物である劣化ウランを素材にした兵器です。劣化ウランは、日本国内では「原子力基本法」(第三条二項)及び「核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令」(第一条二項)で核燃料物質として定義され、「核燃料物質、核原料物質及び原子炉の規制に関する法律」で規制されている放射性物質です。ウラン弾は、戦車などの強固な標的にあたると高温を発して燃え上がり、生じた酸化ウランの微粒子は戦場や試射場の遠くまで拡散し、環境を汚染します。そして兵士のみならず多くの一般の人々が長期に被曝します。またウラン兵器は、その試射・使用のみならず、製造・運搬・貯蔵など、全ての過程で汚染と被曝を引き起します。ウラン兵器は核爆発を伴う核兵器ではありませんが、このように放射能汚染と被曝をもたらす兵器であり、「放射性物質による人類の環境の汚染を終止させる」ことを謳った「部分的核実験停止条約」(1963年)などの国際条約の趣旨にも反するものです。また、徹甲焼夷弾として強力な威力を持つウラン弾の禁止を求めることは、最新兵器を禁止し、全面的な軍縮を押し進める上でも重要です。
放射能で環境を汚染し、新たなヒバクシャを生み出すウラン兵器の禁止を求めることは「被爆国日本」の国際的責務であると私たちは考えます。「被爆国日本」の政府としてのウラン兵器禁止に対する見解と、今後の外交方針について明らかにして下さい。
2. 日本国内の米軍基地に貯蔵されているウラン兵器について(外務省)
(1)嘉手納米軍納基地には2001年に40万発ものウラン弾が貯蔵されていたことが、米国のNPOであるAmerican Friends Service Committeeの請求で情報公開された(2001年8月3日)、米空軍の資料でも明らかになっています。その資料の中には、韓国の烏山米軍基地で、貯蔵されていたウラン兵器に錆や腐食が見られ、保管容器も腐食で穴があいたりしていたこと、また、弾頭数が保管リストと実際の保管数との間で明らかに異なり、「紛失」と査察官が記すなど、ずさんな管理の実態が明らかになっています。
沖縄では、1995年に鳥島で、米海兵隊が射爆訓練に1520発もの劣化ウラン弾を使用しましたが、回収されたのは247発のみです。また2000年には西原町で、米軍から民間業者に払い下げられた劣化ウラン弾の薬莢が放置されていたという事件も起きています。このように米軍基地の集中する沖縄に、さらに劣化ウランの危険が押し付けられてきたのです。私たちは日本国内での、ウラン兵器の貯蔵・運搬・試射を決して容認することはできません。日本政府は、「在日米軍が保有する戦闘能力の詳細と特定の弾薬の保管場所、これについては公表しないという方針を米側は示している」(2006年8月11日、外交防衛委員会、政府参考人、河相周夫氏答弁)として、現状を不問のまま容認しています。
・ 日本政府は、嘉手納米軍基地におけるウラン兵器貯蔵の現状を把握していますか。また、嘉手納米軍基地のウラン兵器貯蔵の現状を明らかにするよう米国に求めましたか。もしまだ求めていないのであれば、速やかに米国に情報の開示を求め、現状を正確に把握すべきであると私たちは考えますが、政府はどのように考えますか。
・もし現在も嘉手納基地にウラン兵器が貯蔵されているならば、すみやかな撤去を米国政府に求めるべきであると私たちは考えますが、この点についての日本政府の考えを明らかにして下さい。
(2)嘉手納以外の在日米軍基地、寄港米艦船等についても同様に、ウラン兵器の貯蔵や搭載の有無を把握していますか。また、現状を明らかにするよう米国政府に求めたのでしょうか。もしまだであれば、速やかに米国に情報の開示を求め現状を正確に把握すべきであると私たちは考えますが、政府はどのように考えますか。
(3)2001年には嘉手納米軍基地に劣化ウラン弾が貯蔵されていたことが明らかになっていますが、その劣化ウラン弾が2003年の米軍によるイラク攻撃で使用され、イラク領内を汚染し、人々を被曝させたことも考えられます。
嘉手納米軍基地に貯蔵されていた劣化ウラン弾が、2003年の米軍によるイラク攻撃で使用されたかどうか、日本政府は把握していますか。米国に対してそのことを明らかにするように求めましたか。
3. 日本の原発・核燃料推進の中ですでに生じている「劣化ウラン」について(経済産業省、防衛省)
原子力基本法には、原子力の利用を「平和の目的に限る」ことが基本方針(第二条)に明記されています。日本ではウラン濃縮施設に、すでに約1万トンの劣化ウランが貯蔵されています(文部科学省、2005年末現在)。また日本の電力会社が、米国に委託しているウラン濃縮過程で発生した劣化ウランが、大量に米国に残されています。
・ 日本は原子力基本法に基づき、決してウラン兵器を製造・装備しないことを明言すべきであると私たちは考えますが、政府はどのように考えますか。
・日本政府は、日本の電力会社が米国に委託しているウラン濃縮過程で発生した劣化ウランの米国内での管理の実態を把握し、ウラン兵器製造に軍事転用されないことを確認していますか。確認できていないならば、軍事転用されないよう、米国に求めるべきであると私たちは考えますが、政府はどのように考えますか。
4. イラクの戦争被害地域への具体的な医療支援に関連して(外務省)
米・英軍によるウラン弾の攻撃を受けたイラクの被災地域の医師たちは、住民の癌・白血病などの増加を報告し、「ウラン兵器をはじめとする戦争による深刻な環境破壊がその要因である」と訴えています。また、戦争で破壊された医療機関や薬剤供給システムは、復興どころかさらに混乱し、医療体制はイラク戦争以前よりも劣悪な状況が続いています。特に抗がん剤などの薬剤不足は深刻です。このような困難の中で治療にあたっているイラクの医師たちは、具体的な医療支援と、独立した汚染・被害調査への協力を国際社会に求めています。日本のイラク医療支援NGOは、現地の医師との連携の下、抗癌剤など必要な薬剤や医療機材の供給などの支援継続に力を尽くしています。日本政府も、現場のニーズにそった視点で「復興支援」のあり方を見直すべきです。
イラク医療支援NGOからの以下の3点の提言について、前向きな検討をお願いします。これらについて、政府の今後の具体的な方針を明らかにして下さい。
・ 政府はイラクへの援助を見直し、無償資金協力での医療支援を行こない、その中に「子供たちの癌・白血病治療支援」を盛り込むこと。(日本の「イラク復興支援」の50億ドルのうち、35億ドルもが有償支援となっています。無償資金援助はほぼ使いきり、有償案件のいくつかが決まっていますが、医療支援は今のところ含まれていません。また、イラクの混沌とした現状では、有償支援の返済は不可能でしょう。)
・ 日本政府は、従来から「政府援助としては医薬品などの消耗品の支援はできない」としてきましたが、その政策を改め、政府としても現地で必要とされている医薬品などの供給支援をNGOと協力して行うこと。
・医療支援にあたって、イラク人医師や医療スタッフが、周辺国のシリア、ヨルダン、クウェートでの会議、学会、医療トレーニングなどに参加する必要がある場合でも、最近、ビザの発給が困難なケースが増えています。日本政府としても、人道的医療支援目的でのイラク人医療スタッフへのビザの発給がスムーズに行くよう、これら周辺の国々への働きかけを行うこと。
5. イラクから帰還した自衛隊員全員のウラン被曝検査と健康調査について(防衛省)
米国では、イラク戦争帰還兵が政府を相手取って劣化ウラン被害賠償請求裁判を起こしていますが、2006年9月6日、ニューヨークの連邦裁判所は、「フェレス原則(軍役中に被った被害に関しては、兵士が軍を訴えることは認められないとする)は、除隊後の期間における医療過誤を訴えることを妨げるものではない」との裁決を出し、本格的審理に入ることを決定しました。
米国では、他にも多くのイラク帰還兵が健康障害を訴えており、すでにコネチカット州など四つの州では、劣化ウランで被曝した可能性のあるイラク帰還兵が、「自然におこりうるウランのレベルであっても、劣化ウランのマーカーとなる特徴的な放射性同位元素の比率がわかるような、異なる放射性同位元素を区別できる装置を用いた、低濃度の劣化ウランを検出できるバイオアッセイ法による、劣化ウラン被曝のための最善の健康スクリーニング検査を受ける権利がある」(2005年10月、ルイジアナ州、ACT NO.69)との州条例が制定されています。さらに九つの州で同様の法案の制定に向けて議論が進められています。
英国でも、劣化ウラン弾が使用された戦闘に参加した帰還兵は全員、尿のウラン濃度の検査を受けることになっています。
日本の自衛隊が駐留しているサマワでも米軍によってウラン弾が使用されたことは、日本政府も認めているところです。自衛隊員も劣化ウランに被曝した可能性があります。
・ 日本でもイラクから帰還した自衛隊員全員に適切なウラン被曝検査と健康調査をすみやかに行い、公表すべきであると考えますが、これについて政府の具体的な方針を明らかにして下さい。
・ 政府はWHOなど国際機関の報告(2001年)を根拠に、「人体及び環境への影響に関して確定的な結論が得られていない」「人体及び環境に対する顕著なリスクは認められない」としています。しかし、WHOの報告に対しては、ウラン兵器の危険性を憂慮する科学者から国際的批判がなされています。日本政府はWHOなどの見解に頼らず、独自の科学的調査・評価を行い、公表し、日本国民と被災地の人々の健康を守る視点に立った施策を行うべきであると私達は考えますが、政府はどう考えますか。