ベルギー、劣化ウラン弾禁止へ――地雷、クラスター爆弾に続いて世界初

2007年3月18日
皆さま
2007年3月7日、ベルギー議会の国防委員会で、「劣化ウラン弾禁止法案」が、全会一致で可決されました。
これは、通常兵器システムの範疇に入れられている劣化ウラン弾、および劣化ウランを用いた装甲の、ベルギーの領土内における製造、使用、貯蔵、売買、入手、供給、移送を、「予防原則」に基づき禁止するものです。
間もなく、この委員会の決定は国会審議にかけられ、上院でも議論されますが、今回の決定が全会一致であったため、今後の審議は、単に形式的手続きにすぎな いとのこと。
Belgium bans DU
ベルギーは、対人地雷、クラスター爆弾に続いて、劣化ウラン弾に関しても、世界に先駆けて禁止する国となることが確実と なったのです。言うまでもありませんが、ベルギーのこの決定は、文字通り画期的なものであり、劣化ウラン兵器の国際的禁止に向けた第一歩が大きく踏み出さ れたことを意味します。
***
「ベルギー国防委員会」での駆け引きなお、「全会一致」とは言え、投票を避けて欠席した議員もおり、最終段階では、可決が危ぶまれる局面もあったようです。今回の法律は、「劣化ウランおよび工業生産された他のいかなるウランにせよ、それらが用いられた砲弾や装甲を全面的に禁止する」ものですが、核兵器は対象外であることを明確にするため、”weapons“(兵器)という言葉は削除され、”ammunitions”(砲弾)という言葉が用いられることになったとこと。{ベルギー北部のクライネ・ブローゲルにあるNATO軍の米空軍基地には核兵器が配備されています。ちなみに、ベルギー上院は2006年4月に、下院は2005年7月に、核軍縮と核不拡散を求める決議を採択し、ヨーロッパに配備されたアメリカの核兵器の撤去を要求しています。}
ベルギーの議員で反劣化ウラン運動推進者のDirk van der Maelen
また、こうした禁止をベルギー政府が国外でも促進するには時間を要するし、他の国々もベルギーにならって後に続くかどうか知りたいと、オランダ語圏の自由民主党が主張したため、この法律が「ベルギー制定法令書」に記載されても実際の発効は2年後となることが付記されました。つまり、ベルギーが国際社会で孤立することが危惧されたのです。[ベルギーのICBUWメンバーによりますと、「2年後に発効」という条件も、投票直前の各党間での政治的駆け引きの結果のようです。投票前日の6日になって、オランダ語圏の自由民主党が、「閣僚委員会と王室裁決を経て法案を発効させるべき」との修正案―このプロセスを踏むと法案発効には実に10年!はかかるーを出してきて、実質的にこの法律を「無効化」してしまおうとしたため、妥協案として「2年後に発効」との一文が入れられることになった。自由民主党は、審議の中でも、他のNATO諸国との共同歩調を維持したいとの意向を強く示してきていたとのこと。]
* **
ICBUWベルギーの取り組み
今回の法案可決は、ベルギーの「ストップ・ウラン兵器!」連合が、国会議員とともに、昨年来取組んできた運動の大きな成果です。とりわけ「地球の友」(Friends of Earth)のメンバーであるリア・ヴェルヤオさん(ICBUW広島大会にも参加したICBUW評議員)とヴィレム・ファン・デン・パンフイセンの懸命の取り組みは、この成功に大きく貢献しました。
昨年11月に開かれた公聴会では、ヴェルヤオさんたちの推薦を受けたキース・ベイヴァーストック博士(ICBUW広島大会にも参加されたWHOの元放射線部門専門官)などが劣化ウランの危険性について訴えました。しかしその後、法案に反対する側が巻き返しを図り、証言者としてNATOやEUの安全保障委員会の代表が証人として招かれ、「ウラン兵器の危険性については実証されていない」「ベルギーがウラン兵器を禁止すれば、国際的軍事協力の観点から問題が生じる」などの反論を展開、委員たちの間に「判断しかねる」といった雰囲気が拡がり、最後の審議となった今年2月14日の委員会が終わった時点では、ヴェルヤオさんも、「法案の可決はかなり困難」との印象をもったようです。
「ヘルプ!委員会のメンバーにメールで訴えて!」――そんな内容のメールがヴェルヤオさんから流されました。それに応えて、キャンペーンを支えてくれている科学者や専門家(ICBUW広島大会にも参加したバーテル博士や、イタリアのガッティ博士とモンタナリー博士など)や他の国のICBUWメンバーからも、次々と外務大臣や国防委員会の主要メンバーへ要請メールが送られました。日本からも、振津が科学的観点からのアピール文を送るとともに、ICBUW広島大会で採択された「ヒロシマ・アピール」が送られました。
投票があった3月7日の朝、私たちは、前日のジュネーブ国連本部内での「劣化ウラン・セミナー」に続いてロビー活動をするため相談をしていました。リアさんの携帯電話が鳴り、「委員会が始まってすぐに投票がされ、全会一致で法案が可決された」との連絡がベルギーの仲間から入りました。かなり「悲観的」になっていたヴェルヤオさんは、嬉しさのあまり涙を流しながら、一緒にいた私たちに投票結果を伝えてくれました。このニュースは、ICBUWのメンバーだけでなく、ウラン兵器禁止を求めてきている全ての人々を勇気づけるものとなりました。
***
クラスター爆弾禁止条約を目指す「オスロ宣言」
クラスター爆弾に関しても、新条約作りが有志国によって進められることが、2月23日に採択された「オスロ宣言」によって確定しました。伝えられているところによりますと、最初は、かなりの国が、「動きがあまりに速すぎる」と躊躇していたものの、「一気に条約作りを開始しよう」という大勢がはっきりするや、それまで躊躇していた国々も、条約制定プロセスの外に置かれること、「歴史の間違ったサイドに取り残されること」(地雷禁止キャンペーンにも最初から関わったデイヴィッド・アトウッドさんの言葉)を恐れて、一挙に賛成する側に回ったとのこと。[オスロ会議の参加49カ国中、「オスロ宣言」を支持しなかったのは、日本、ポーランド、ルーマニアの三カ国のみ。米国、中国、ロシア、イスラエル、インドなどは会議そのものに不参加。オスロ会議については、毎日新聞のシリーズ記事がとても参考になります。 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/stopcluster/]
ICBUWとしては、地雷禁止に続いて、クラスター爆弾の禁止条約作りが始まった勢いも活かしつつ、引き続き各国政府への働きかけを強めると同時に、ベルギーでの成果をさらに欧州や他の地域にも拡げ、国際的禁止に向けた具体的な動きにつなげてゆきたいと考えています。一層のご支援を何卒宜しくお願いいたします。
なお、今回のベルギーの法令文は、ベルギーのメンバーがオランダ語から英語への翻訳作業を進めてくれていますので、英語版を入手次第、皆さんにもご紹介したいと思います。
嘉指信雄(ICBUW評議員、アジア・太平洋地域コーディネーター)
振津かつみ(ICBUW評議員、科学チーム)
ICBUW=International Coalition to Ban Uranium Weapons
ウラン兵器禁止を求める国際連合
ICBUW国際キャンペーンの詳細は「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」ホームページをご参照ください。 www.nodu-hiroshima.org/
ICBUW国際キャンペーンへの支援をお願いいたします!
カンパ振込先:郵便振替口座名 「ICBUW・国際キャンペーン」
口座番号 < 01310-0-83069 >
ベルギー「ストップ・ウラン兵器!」連合は、以下のNGOによる共同キャンペーンです。
Association Médicale pour la Prévention de la Guerre Nucléaire – Groupe Liégeois pour l’Economie Distributive – CSOTAN – Pax Christi Leuven – Bond Beter Leefmilieu – Vakbondsmensen In Verzet tegen Oorlog – Oxfam-Solidariteit – Artsen voor Vrede – Netwerk-Vlaanderen – Mouvement Chrétien pour la Paix – International Action for Liberation – Stop United States of Aggression – Jeugdbond voor Natuur en Milieu – Links Ecologisch Forum – Forum voor Vredesactie – ACV-Brussel – Friends of the Earth Vlaanderen en Brussel – Greenpeace – Vlaams Overleg Duurzame Ontwikkeling – Pax Christi Vlaanderen – Coördination Nationale d’Action pour la Paix et la Démocratie – Vrede – SOS Irak – Verbond VOS – Mouvement Ouvrier Chrétien Liège-Huy-Waremme
Press contact: Willem Van den Panhuysen
gsm: 0473 71 75 18 Tel.: 09 256 01 45
Belgian Coalition: ‘Stop Uranium weapons!’:

2007年3月18日
皆さま
2007年3月7日、ベルギー議会の国防委員会で、「劣化ウラン弾禁止法案」が、全会一致で可決されました。これは、通常兵器システムの範疇に入れられている劣化ウラン弾、および劣化ウランを用いた装甲の、ベルギーの領土内における製造、使用、貯蔵、売買、入手、供給、移送を、「予防原則」に基づき禁止するものです。
間もなく、この委員会の決定は国会審議にかけられ、上院でも議論されますが、今回の決定が全会一致であったため、今後の審議は、単に形式的手続きにすぎな いとのこと。

Belgium bans DUベルギーは、対人地雷、クラスター爆弾に続いて、劣化ウラン弾に関しても、世界に先駆けて禁止する国となることが確実と なったのです。言うまでもありませんが、ベルギーのこの決定は、文字通り画期的なものであり、劣化ウラン兵器の国際的禁止に向けた第一歩が大きく踏み出さ れたことを意味します。 ***
「ベルギー国防委員会」での駆け引きなお、「全会一致」とは言え、投票を避けて欠席した議員もおり、最終段階では、可決が危ぶまれる局面もあったようです。今回の法律は、「劣化ウランおよび工業生産された他のいかなるウランにせよ、それらが用いられた砲弾や装甲を全面的に禁止する」ものですが、核兵器は対象外であることを明確にするため、”weapons“(兵器)という言葉は削除され、”ammunitions”(砲弾)という言葉が用いられることになったとこと。{ベルギー北部のクライネ・ブローゲルにあるNATO軍の米空軍基地には核兵器が配備されています。ちなみに、ベルギー上院は2006年4月に、下院は2005年7月に、核軍縮と核不拡散を求める決議を採択し、ヨーロッパに配備されたアメリカの核兵器の撤去を要求しています。}

ベルギーの議員で反劣化ウラン運動推進者のDirk van der Maelenまた、こうした禁止をベルギー政府が国外でも促進するには時間を要するし、他の国々もベルギーにならって後に続くかどうか知りたいと、オランダ語圏の自由民主党が主張したため、この法律が「ベルギー制定法令書」に記載されても実際の発効は2年後となることが付記されました。つまり、ベルギーが国際社会で孤立することが危惧されたのです。[ベルギーのICBUWメンバーによりますと、「2年後に発効」という条件も、投票直前の各党間での政治的駆け引きの結果のようです。投票前日の6日になって、オランダ語圏の自由民主党が、「閣僚委員会と王室裁決を経て法案を発効させるべき」との修正案―このプロセスを踏むと法案発効には実に10年!はかかるーを出してきて、実質的にこの法律を「無効化」してしまおうとしたため、妥協案として「2年後に発効」との一文が入れられることになった。自由民主党は、審議の中でも、他のNATO諸国との共同歩調を維持したいとの意向を強く示してきていたとのこと。]
* **
ICBUWベルギーの取り組み
今回の法案可決は、ベルギーの「ストップ・ウラン兵器!」連合が、国会議員とともに、昨年来取組んできた運動の大きな成果です。とりわけ「地球の友」(Friends of Earth)のメンバーであるリア・ヴェルヤオさん(ICBUW広島大会にも参加したICBUW評議員)とヴィレム・ファン・デン・パンフイセンの懸命の取り組みは、この成功に大きく貢献しました。
昨年11月に開かれた公聴会では、ヴェルヤオさんたちの推薦を受けたキース・ベイヴァーストック博士(ICBUW広島大会にも参加されたWHOの元放射線部門専門官)などが劣化ウランの危険性について訴えました。しかしその後、法案に反対する側が巻き返しを図り、証言者としてNATOやEUの安全保障委員会の代表が証人として招かれ、「ウラン兵器の危険性については実証されていない」「ベルギーがウラン兵器を禁止すれば、国際的軍事協力の観点から問題が生じる」などの反論を展開、委員たちの間に「判断しかねる」といった雰囲気が拡がり、最後の審議となった今年2月14日の委員会が終わった時点では、ヴェルヤオさんも、「法案の可決はかなり困難」との印象をもったようです。
「ヘルプ!委員会のメンバーにメールで訴えて!」――そんな内容のメールがヴェルヤオさんから流されました。それに応えて、キャンペーンを支えてくれている科学者や専門家(ICBUW広島大会にも参加したバーテル博士や、イタリアのガッティ博士とモンタナリー博士など)や他の国のICBUWメンバーからも、次々と外務大臣や国防委員会の主要メンバーへ要請メールが送られました。日本からも、振津が科学的観点からのアピール文を送るとともに、ICBUW広島大会で採択された「ヒロシマ・アピール」が送られました。
投票があった3月7日の朝、私たちは、前日のジュネーブ国連本部内での「劣化ウラン・セミナー」に続いてロビー活動をするため相談をしていました。リアさんの携帯電話が鳴り、「委員会が始まってすぐに投票がされ、全会一致で法案が可決された」との連絡がベルギーの仲間から入りました。かなり「悲観的」になっていたヴェルヤオさんは、嬉しさのあまり涙を流しながら、一緒にいた私たちに投票結果を伝えてくれました。このニュースは、ICBUWのメンバーだけでなく、ウラン兵器禁止を求めてきている全ての人々を勇気づけるものとなりました。

***
クラスター爆弾禁止条約を目指す「オスロ宣言」
クラスター爆弾に関しても、新条約作りが有志国によって進められることが、2月23日に採択された「オスロ宣言」によって確定しました。伝えられているところによりますと、最初は、かなりの国が、「動きがあまりに速すぎる」と躊躇していたものの、「一気に条約作りを開始しよう」という大勢がはっきりするや、それまで躊躇していた国々も、条約制定プロセスの外に置かれること、「歴史の間違ったサイドに取り残されること」(地雷禁止キャンペーンにも最初から関わったデイヴィッド・アトウッドさんの言葉)を恐れて、一挙に賛成する側に回ったとのこと。[オスロ会議の参加49カ国中、「オスロ宣言」を支持しなかったのは、日本、ポーランド、ルーマニアの三カ国のみ。米国、中国、ロシア、イスラエル、インドなどは会議そのものに不参加。オスロ会議については、毎日新聞のシリーズ記事がとても参考になります。 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/stopcluster/]

ICBUWとしては、地雷禁止に続いて、クラスター爆弾の禁止条約作りが始まった勢いも活かしつつ、引き続き各国政府への働きかけを強めると同時に、ベルギーでの成果をさらに欧州や他の地域にも拡げ、国際的禁止に向けた具体的な動きにつなげてゆきたいと考えています。一層のご支援を何卒宜しくお願いいたします。
なお、今回のベルギーの法令文は、ベルギーのメンバーがオランダ語から英語への翻訳作業を進めてくれていますので、英語版を入手次第、皆さんにもご紹介したいと思います。

嘉指信雄(ICBUW評議員、アジア・太平洋地域コーディネーター)
振津かつみ(ICBUW評議員、科学チーム)

ICBUW=International Coalition to Ban Uranium Weapons
ウラン兵器禁止を求める国際連合
www.icbuw.org

ICBUW国際キャンペーンの詳細は「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」ホームページをご参照ください。 www.nodu-hiroshima.org/

ICBUW国際キャンペーンへの支援をお願いいたします!
カンパ振込先:郵便振替口座名 「ICBUW・国際キャンペーン」
口座番号 < 01310-0-83069 >

ベルギー「ストップ・ウラン兵器!」連合は、以下のNGOによる共同キャンペーンです。
Association Médicale pour la Prévention de la Guerre Nucléaire – Groupe Liégeois pour l’Economie Distributive – CSOTAN – Pax Christi Leuven – Bond Beter Leefmilieu – Vakbondsmensen In Verzet tegen Oorlog – Oxfam-Solidariteit – Artsen voor Vrede – Netwerk-Vlaanderen – Mouvement Chrétien pour la Paix – International Action for Liberation – Stop United States of Aggression – Jeugdbond voor Natuur en Milieu – Links Ecologisch Forum – Forum voor Vredesactie – ACV-Brussel – Friends of the Earth Vlaanderen en Brussel – Greenpeace – Vlaams Overleg Duurzame Ontwikkeling – Pax Christi Vlaanderen – Coördination Nationale d’Action pour la Paix et la Démocratie – Vrede – SOS Irak – Verbond VOS – Mouvement Ouvrier Chrétien Liège-Huy-Waremme

Press contact: Willem Van den Panhuysen
willem@motherearth.org
gsm: 0473 71 75 18 Tel.: 09 256 01 45
Belgian Coalition: ‘Stop Uranium weapons!’:
www.motherearth.org/du