ICBUW緊急発表 Change.org請願キャンペーン #Act4Iraq (あるいは、http://chn.ge/1bm2xJt)
イラクにおける先天性障害発症率に関する調査が世界保健機構(WHO)とイラク政府によって実施されたものの、その結果の公表が延び延びにされてきていることを受け、ファルージャの小児科医サミラ・アラーニ博士は、調査結果の公式データをオープンアクセスジャーナルPLoS Oneに差し出すよう求める請願キャンペーンをChange.orgで開始しました。
[訳者注:PLoS Oneは、2006年から刊行されている、主に科学・医学における一次調査研究を扱う、オープンアクセスの査読付きジャーナル。いわゆる査読付きジャーナルではあるが、方法論的問題などがなければ掲載され、その科学的意義の最終的検証は、オープンアクセスによる検討プロセスにゆだねる立場を取る。]
2012年にイラク保健省(MoH)および世界保健機構(WHO)によって行われた全国的調査の結果公表は、ずっと先送りにされて来ています。今年初め、BBCによるインタビューを受けたイラクの研究者たちは、今回の調査は、先天性障害の発症率の増加と、2003年の戦争で激しい戦闘にさらされた地域との間に関連があることを示すものになるだろうと主張しましたーーこれは、きわめて重要かつ政治的に厄介な結論であるが。
WHOとイラク保健省によるデータ分析がいつまでも出て来ないので、アラーニ博士はそれらのデータを、有数のオープンアクセス・ジャーナルであるPLoS Oneに提出するよう求めています。PLoS Oneで公表されれば、データの独立した精査が可能になりますし、今回の調査が議論を呼ぶ性質のものであるため、WHO内部のプロセスが政治的考慮に左右されたのではという怖れを軽減することができる。今回の調査を促したのは、先天性障害の発症率が異常に高いという、イラク中の産科病院から出された憂慮であり、発症率が全国的に記録され分析されるのは、今回が初めてです。
「私たちは、2006年にこれらのケースの記録を取り始め、1000の生児出生あたり、144人の赤ん坊が奇形を持って産まれていることを見出しました。[ファルージャへの猛攻から]ほぼ10年経った今でも、私たちは、こうしたことは、私たちの町での戦闘によって起こされた汚染と関係づけられるべきだと信じています」と、ファルージャ総合病院の小児科医サミラ・アラーニ博士は言います————「これは、ファル—ジャだけのことではありません。[ファルージャも属する]アンバール県全域の病院、およびイラクの他の多くの地域が[奇形児の数の]急上昇を記録しています。私は毎日、この不安が妊婦とその家族に与えている重圧を目の当たりにしています。」
今年の3月、BBCワールドがイラク保健省のスタッフへの一連のインタビューを放送した後、調査結果の公表の先送りが始まりました。それに続き、世界中の学者が、完全開示を要求する請願を提出しました。それ以来、WHOとイラク保健省は、一連の手続き上のハードルを理由にして、研究結果の公開を遅らせてきています。PLoS Oneへの投稿は、データ分析への人々の信頼を高めることに加え、はるかに迅速な査読プロセスを保証することになるでしょう。
「これらのデータが公表されること、そして迅速かつ透明な方法で公表されることは、イラクの人々にとってこの上なく重要なことです」と、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)コーディネーターのダグ・ウィアーは言います————「こうした手続きは、10年前にイラク戦争が引き起こした環境汚染による住民の健康への影響を調査し、かつ最終的には減少させるための重大な第一歩なのです。もうこれ以上遅れさせてはなりません。イラクの健康危機は、非常に強い国際的関心の的となっており、オープンアクセス・ジャーナルでの公表は、査読プロセスに対する人々の信頼を保証する唯一の方法です。」
調査結果が、実際に、戦争による汚染と先天性障害を結びつけるならば、それは、米国とその同盟国にとっては、不愉快なこととなることでしょう。ずっと以前から研究者たちは、紛争中における重金属などの有毒物質の拡散は、とりわけ環境影響評価と環境管理が紛争後の不安定な状態によって妨げられる地域では、一般の民間人の健康に長期的な脅威を及ぼすと、主張してきています。以上
[訳:明恒次郎・嘉指信雄]