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内藤教授からのメール

----- Original Message -----
From: <tjst@
To: <future-info@freeml.
Sent: Saturday, April 24, 2004 12:59 AM
Subject: [future-info:2474] 内藤教授からのメール Re:[情報]一橋大教授の寄稿を利用し「自作自演」をにおわし続けるサンケイグループ


産経新聞(4/21)の第一面の記事にあった「・・・「言って、言って」と、日本語で人質に発言を促すような音声が録音されていたことが内藤正典教授の研究室の解析で明かになった。」について、内藤教授に照会したところ、以下のようなご返事を頂きました。「言って言って」という声が録音されていると言ったのは産経記者自身であって、内藤教授はその音声は確認できなかった、と返事に書かれています。上に引用した部分は明かな嘘です。

以下は頂いたメールですが、その後、「先ほどの私の書いたものは、まだ公開できるだけの推敲を経ていませんが、その点を含んでいただいたうえで、公 開されてもかまいません。」という連絡がありましたので転載します。

辻下 徹
http://ac-net.org/

---転載始---

     ★★★

To: tjst..
Subject: Re: サンケイ記事についての照会
From: NAITOU masanori
Date: Wed, 21 Apr 2004 16:32:27 +0900

取材が続いているので、まずは簡単に真意をお話しておきます。
私自身はアメリカによるイラク攻撃にも、戦闘状態にあるイラクへの自衛隊派遣にも一貫して反対の立場です。
記事のなかで、3面の私の寄稿記事だけが私の考えをそのまま載せているものです。私は、人質となった3人、およびその家族に対するバッシングに加担するなど毛頭考えておりません。
そのうえでお読みください。
犯行グループはファルージャに拠点をおくことは明らかです。現在、米軍に激しい抵抗を続けているこの地域の部族は、同時に、フセイン政権下では、体制側にあり、クルド人の大虐殺やシーア派の虐殺に加担する側にいたのです。
この部分を冷静に考えなければなりません。
人質事件に即して言うと、私が寄稿した記事に書いたとおり、犯行グループは、人質を脅して演技をするよう命じたうえで、不自然な声を上げさせています。分析した素材はAPがマスコミ各社に配信したもので、産経とは関係ない別の局が入手したものを、たまたま中東の専門家として分析したものです。「言って」という音声については、きょうも各社から取材されましたが、私自身は、確認できません。音声分析の専門家ではありませんので、「そのように聞こえる」けれども、断定する根拠を持ちません。あの部分は産経の記者が独自のソースで聞こえると判断して記事にしたものです。
アラビア語に似た表現があるかという点は聞かれましたが、私が知る限り、ないだろうと返答したものです。
問題なのは、なぜ犯行グループが「やらせ」で脅した映像を送りつけたかにあります。
我々は、まず、アル・ジャジーラが編集を施し、さらに日本のテレビ各局が編集したあとの映像を見せられていたのです。
映像というのは怖いものです。私はたまたま専門家として、音声のある部分のアラビア語や高遠さんの悲鳴が、イスラム勢力による拘束だとは到底思えないということを明らかにしたのです。イスラームでは、戦時下であっても、決して女性を脅すことは認められません。まして彼女はイラクの子どもたちのために、活動していたことは犯人側にもわかったはずですから、あんな脅し方をするのは不自然きわまりないのです。
では、犯行グループの意図はどこにあったのか。ということになります。
むしろ、日米間の同盟関係にくさびをうちこみ、政府を揺さぶる意図があったと見ています。
冷静に問題をみなければなりません。興味本位の扱いはもちろん、イラクから遠く離れた日本にいて、事件のてがかりが、たった1分40秒の映像しかないのに、過剰な反応と、中東・イスラーム世界の常識とはかけ離れた憶測で、語られていくことに強い危惧の念を抱いていました。お断りしておきますが、産経に掲載されたのは、たまたま記者が接触し、私の主張をいじらずに記事にしたからで、私はかつて朝日の論座や岩波の世界にも書きましたが、イスラームに敵対するような行動の危険性を一貫して訴えています。犯行グループは、日本の反応を見越した上で、善意の日本人を人質にとり、最後には本来存在しない「聖職者」なるものを登場させて(イスラムには聖職者など存在しません)、解放の受け皿にしています。米軍に対する抵抗運動という側面と、市民のために活動しようとする善意の人を人質にとるという、二つの側面を視野に入れると、私の寄稿記事になったのです。今日も各局の取材に対して、絶対に人質がやらせに加担したなどと報じないように申し入れています。繰り返しますが、やらせをさせたのは、犯行グループです。
私は9・11以降、世界のムスリム(イスラーム教徒)が、欧米による差別と抑圧にくるしんでいることをフィールド調査で幾度も聞いてきました。このうえ、ムスリムには到底できないような今回の女性を脅す内容の人質事件は、ムスリムに対する蔑視を一層強化しかねません。人質が解放された今、私が言わなくても、マスコミは伏せていた脅迫部分のシーンを必ず流します。さらにムスリム、イラク人、そして市民として活動する人々を危険にさらすような、今回の事件を許すことはできず、可能な限り冷静な分析をしただけです。出たメディアが悪いといわれればそれまでですが、この間、私の言うことを、きちんと聴いてくれるメディアはほとんどありませんでした。テレビは、短い映像が唯一の手がかりだったのに、何の分析もしませんでした。 検証もしませんでした。他に東京新聞にも16日に寄稿しています。あわせてお読みいただければ幸いです。
内藤

---転載終---