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新聞記事


河北新報(宮城) 2004年4月24日
http://www.kahoku.co.jp/news/2004/04/2004042401003105.htm

「不可解」な日本? 人質への非難に驚く米社会

 【ロサンゼルス24日共同】イラク日本人人質事件で、解放された人質が日本国内で冷淡に扱われたり、非難の声を浴びていることに、米国で驚きが広がっている。善意を尊び、職務の使命感を重視する米国人の目には、日本での現象は「お上」(政府)が個人の信条を虐げていると見え、不可解、奇異に映っているようだ。
 米主要紙には22日から23日にかけ「OKAMI(お上)」や「JIKOSEKININ(自己責任)」という日本語が並んだ。
 ロサンゼルス・タイムズは「敵意の渦中への帰還」という見出しで人質への対応問題を特集。
 小泉純一郎首相が政府の退避勧告を無視しイラク入りした人質を、自己責任論を振りかざし非難したと伝えた。同紙は、対照的な例として、カナダの人道援助活動家の人質が地元モントリオールで温かい歓迎を受けた例を紹介、日本の例は「西側諸国とはまったく違った現象だ」と評した。

2004年04月24日土曜



北海道新聞 2004/4/22

解放の人質3人、批判でストレス増大 医師所見 「早期会見で障害回避を」  2004/04/22 09:30

 イラクの日本人人質事件で、十五日に解放された高遠菜穂子さん(34)、今井紀明さん(18)、郡山総一郎さん(32)のカウンセリングに当たった精神科医、斎藤学・家族機能研究所代表は二十一日、三人が事件だけでなく、批判的な世論からも強いストレスを受けていることを明らかにした。

 斎藤代表は帰国直後の十八日夜には羽田空港で、翌十九日夜には宿泊先の東京都内のホテルで、三人から長時間詳しい話を聴いた。

 その結果「特に高遠さんは『世間を敵に回している』との思いが強く、精神的に不安定。他の二人も『会見に応じるなら三人で』との意向が強く、人前に出るのが難しい状況だ」と説明。懸念される心的外傷後ストレス障害(PTSD)については「今はまだ急性ストレス障害の段階。今後、PTSDに至るかどうかは、周囲の対応次第だ」としている。

 斎藤代表は「恐怖体験を多くの人に聞いてもらうことで、事件そのものによるPTSDは回避できる可能性が高い」と指摘。「早期に記者会見をやった方がよい」と勧めたとしている。

 ただ会見については「問いただすのではなく、最初は穏やかな雰囲気の中、当時の状況について耳を傾ける形にすべきだ」と注文を付けた。

 斎藤代表によると、三人は米軍の激しい爆撃にさらされる場所に拘禁され、「爆撃で死ぬかもしれない」との恐怖が最も大きかったと訴えた。

 早い段階で「イラク支援に来たことを犯行グループに理解してもらった」と感じたが、その直後にビデオカメラの前でナイフや銃で脅された。突然の事態の急変に「いつ気が変わって殺されるか」とかえって恐怖感が募ったという。

 斎藤代表は「三人は今、世間から隔離されており、これも一種の拘束状態。恐怖の体験がPTSDになってしまう前に、社会復帰させることが重要だ」としている。




毎日新聞 2004年4月22日 0時23分

社説: イラク人質事件 後味の悪い被害者たたき

 忌まわしい事件だったが、イラクで人質になるなどした日本人5人が無事帰国できたのは何よりだった。日本政府が犯人側から突きつけられた自衛隊の撤退要求をのまなかったのも的確な判断だった。政府は邦人保護の重責を果たしたといえる。
 しかし、5人の解放を安堵(あんど)する気持ちとは別に、解放後に5人やその家族に批判が起き、後味の悪さを残したのも事実だ。
 人質になった3人は「退避勧告」が出ている中でイラク入りした揚げ句拘束された。外務省の竹内行夫事務次官は「邦人保護には限界がある。自己責任の原則を自覚していただきたい」と不快感を表明した。
 確かに竹内次官が言うように危険なところへ出かけていく場合は、自分の身は自分で守る覚悟と用意周到な準備が必要だ。3人は情勢への認識が甘かったと指摘されても仕方がない。
 だが、自己責任論が大きくクローズアップされたのは、解放された直後に3人 が今後もイラクで活動していきたいとの考えを明らかにしたからだ。さらには自衛隊のイラク派遣で国論が分裂する中で家族が犯人側の自衛隊撤退の要求を政府に求 めたことが大きな反発を呼んだ。与党内では3人に対する苦言が相次いだ。
 退避勧告を無視してイラクに入った以上、政府は邦人保護などできない、責任は自分でとるのが当然だという話が伝わってきた。さらには救出にかかった費用を自己負担すべきだとの話から、法的に渡航を禁止すべきだという議論まで飛び出した。突き詰めれば、政府の言うことに従わなかったり、自衛隊派遣に反対するなど政府の方針に反するような人間は渡航させるなということになる。
 法的措置が検討された海外渡航の規制はもってのほかだ。「何人も外国に移住する自由を侵されない」との憲法22条は、海外渡航にも通じる原則だ。さすがに法的規制は断念したようだが、冷静さを欠いたヒステリックな議論が後味の悪さを助長した。この間の与党内の議論は、いささか感情論に走りすぎたのではないか。
自己責任と政府の邦人保護は別の問題だ。
 与党内の議論を反映するかのように、人質になった3人やその家族は大きな批判を浴びた。彼らが自衛隊派遣に批判的だとみられたことでバッシングが激しさを増したようだ。
 イラクに自衛隊を出している以上、日本人が政治的に人質として利用される立場にあることを忘れてはならない。一方、人質事件を通じて中東の世論に日本人の中に政府と異なる意見の持ち主がいることが理解された。イラクの子供を支援する日本人女性や劣化ウラン弾の被害を心配する若者がいることも広く知られたに違いない。
 それはそれで日本の国益にとってプラスになるのではないか。日本は多様な意見を尊重する民主国家だ。イラク戦争に疑問を持つ人も少なくない。行きすぎた被害者たたきがそうした日本のよさを損なうことにならないか心配だ。



陸奥新報 4月22日「社説」人質事件のバッシングに思う。
 
 イラクで人質となっていた3人に続き、取材中に武装勢力に拘束されたフリージャーナリストの安田純平さんとNGO活動家の渡辺修孝さんもそろって(帰国した。まずは5人が無事解放されたことを喜びたい。
 だが、イタリアや米国などの民間人は依然行方不明のままである。今後もまた、現地で活動する日本人の身に同じような危険が降りかからないとも限らない。イラク国内で反米感情が高まる中、外国人の誘拐という行動に出るグループは後を絶たないだろう。
 人質事件について「自己責任」という言葉が飛び交っている。外務省は先に人質となった3人に対し、チャーター便の費用一部と健康診断の費用について自己負担を求めるという。
自分のしたことでかかった費用は自分で支払えということだ。確かに、拘束された5人は安全上で認識の甘い点があった。危険な場所で活動することには大きな自己責任が伴う。
 だが、外国における自国民の保護は政府の責任である。人質となった国民の救出に政府が力を尽くすのは当然のことであると言っていい。
 日本国内では、人質になっていた3人の家族が発した感情的な言葉が取り上げられ、家族の元には中傷や非難の手紙、ファックスが相次いだ。
 政府の退避勧告を聞かずにイラク入りした、いわば政府に盾突いた行動をした人は「自業自得」なので助けなくてもいい―というような意見も聞かれた。これには同調しかねる。
歩調を乱す者に白い目を向ける国民の姿は、戦時中の「一億総火の玉」をほうふつさせて怖い。
 外国ではこの人質事件が評価されている。フランスの新聞ルモンドは「日本人は人道主義の若者を誇るべき」とし、日本国内に「自己責任論」が台頭していることを非難している。
米国のパウエル国務長官もまた、「危険を冒す人がいなければ社会は進歩しない」と日本人の人質をねぎらっている。
 日本にいながらにして、イラクの戦況、イラクの国民の姿を知ることができるのは危険な戦場に赴くジャーナリストがいるからである。故沢田教一氏が「安全への逃避」を撮影し、世界に平和の尊さを伝えた。
 映像記者や報道写真家でつくる日本ビジュアル・ジャーナリスト協会では緊急の集会を開き、「戦場から記者がいなくなれば、真実を伝えることができない。弱い側の立場から伝えることこそ、ジャーナリストの仕事」と訴えた。
 NGOのメンバーもジャーナリストも、危険な扮装地や戦場で活動しなければならない時がある。
それぞれが情報を集め、起こり得る危険を考え、その上で活動することを判断し、決断する。危険な土地で仕事をする者は、もちろん自己責任の下で活動を行わなくてはならない。だが危険な場所に行った者が悪い、自業自得だという考え方は短絡的だ。 政府も国民も今回の人質事件をもう一度冷静に振り返る必要がある。人質事件は占領に対する
イラク国民の反米感情から起きたものだ。流血と憎悪の悪循環を断たなくてはならない。米国に代わって国連がイラク人とともに新たな国家を再建できるか、これからが正念場。広い視野を持ち、イラクについて考えたい。


宮崎日日新聞 2004/4/21

事実説明まで静観を 自己責任論に賛否
2004年04月21日
【宮崎日日新聞ニュース】

 【解説】イラクの日本人人質事件は二十日、佐土原町出身の郡山総一郎さん(32)ら解放された人質三人がそれぞれの実家に帰郷し、事件は一つの区切りを迎えた。解放からこれまで、郡山さんらが事件について肉声で語ることは一度もない。
「自己責任」をめぐる論議と相まって、三人の態度に感情的な批判も出ている。だが県民として、いまは郡山さんらが無事帰還したことを素直に喜び、やがて事実を話せるようになるまで静かに見守るべきだろう。

 帰郷した郡山さんは、憔悴(しょうすい)しきった表情だった。「無事に帰ってきた」という安ど感は見られず、医師の診察による心的外傷後ストレス障害(PTSD)、あるいは急性ストレス障害は、想像以上に深刻な印象を受けた。

 帰国直後の会見は、三人の健康状態から急きょ本人欠席となった。しかし、事件の解明、検証には三人が自ら体験を明らかにすることが不可欠で、これに異論を挟む余地はない。「会見は義務」とする厳しい声も上がっている。

 郡山さんらへの批判の論拠の一つに「自己責任」論がある。退避勧告を無視してイラクへ赴いたのだから、その結果は自らが負うべきだ、という主張だ。その行動をめぐり国民、県民世論がいまも賛否で揺れている。

 ほかにも、渡航の自由はどこまで規制すべきか、自衛隊のイラク派遣の是非、海外での邦人保護の在り方―など、今回の事件が投じた波紋は国策の根幹にも触れ、「個人」で処理するにはあまりに事が大きい。

 これらを郡山さんら三人に背負わせ、真正面からの議論を避けようとする空気が、国民の間にあることも否定できない。

 冷静に理解しなければならないのは、郡山さんら三人は人質事件の被害者であり、いまは心身に大きなダメージを負っている、ということだ。

 誰からも背中を押されることなく、郡山さんらが自ら進んで口を開くことが事件の真相解明につながり、国策論議の端緒となるだろう。そのための環境づくりが求められる。
(宮崎日日新聞 報道部・俣野秀幸)


北海道新聞 2004/4/22

■イラク日本人人質事件 【北海道新聞ニュース】

26日まで本人取材を控える 道内各社が家族と合意  2004/04/22 00:26

 イラク日本人人質事件で、実家に帰った千歳市の高遠菜穂子さんと札幌市の今井紀明さんを支援する代理人団(渡辺達生弁護士ら)と、北海道新聞社を含む道内の報道各社は二十一日、本人への直接取材を、二十六日まで控えることで合意した。

 二十六日の時点で二人の体調の回復具合をみて、直接取材や記者会見の時期を探っていく。

 代理人団は二十日、報道各社に対し、二人は心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症の恐れがあり、カメラのフラッシュにおびえたり、報道陣の車両に精神的なプレッシャーを感じたりしているとした上で《1》本人、家族への直接取材をしない《2》自宅周囲に報道車両を駐車しない−などを要請した。

これに対し、報道各社は「本人や家族への直接取材が原則」との立場を示しつつも、取材によって体調悪化を招くという家族側の主張も理解。各社で協議した結果、「日々の家族の様子を本人または家族の直筆で伝える」などの条件を提案し、双方で合意した。


■イラク日本人人質事件 【北海道新聞ニュース】

高遠さんを激励 写真家・森住さん、千歳の自宅訪問  2004/04/22 00:26

 イラク日本人人質事件で、千歳市のボランティア高遠菜穂子さんらの拘束をイラク滞在中に知り、解放への支援活動を続けたフォトジャーナリスト森住卓さん(53)が二十一日、高遠さんの自宅を訪問した後、札幌市役所で記者会見した。この中で、森住さんは「高遠さんはまだ動揺が続いているが、少しずつ笑顔も見せている」と述べた。

 森住さんは、高遠さん宅で昼食をとりながら二時間にわたって話をした。森住さんが「自身のやってきたことがどれだけイラクの人たちにとって意義があったかを考えて」などと励ましたのに対し、高遠さんは「そうだよね」と応じたという。

 拘束されているときの様子について、高遠さんは「待遇は良く、食事も出た。身体検査を受け、持ち金などを取られたが、後で返却された」などと話したという。

 会見後、森住さんは札幌市北区の北大学術交流会館で市民団体主催の講演会に出席。八日まで取材したイラク国内の様子を紹介。劣化ウラン弾による現地の被害状況などの説明に約六百人の市民が真剣に耳を傾けた。


東京新聞 2004.4.21朝刊

国家の責任 小泉流『自己責任論』がかき消したイラク邦人人質事件

 各種世論調査によると、イラク邦人人質事件について、約7割が小泉政権の対応を支持しているという。政府の危機管理が問われる事件でありながら、矛先を被害者の「自業自得」に向けることで、巧みに世論を操ったともいえる。だが、個人の「自己責任論」が世間を覆う中で、見過ごされ、かき消されそうな「国家の責任」もある。

■『非戦闘地域』どこに?

 「『非戦闘地域』の理屈はまったく成り立っていない。無意味であり、一種のごまかしだ。戦闘は一度、始まってしまえば、自分の都合でどうこうできない。一番不安なのは現地の自衛隊員たちだろう」

 軍事評論家の藤井治夫氏は、そう看破する。

 自衛隊派遣の前提は「非戦闘地域」の存在だ。それが崩れれば、自衛隊をイラクに派遣した小泉政権の責任が問われる。だが、川口順子外相は二十日の衆院本会議で、その点には触れず邦人人質事件をテーマに事件が「許されざる犯罪」ゆえ、自衛隊撤退はないと繰り返した。政府がそう言い張れるだけの状況がイラクにはあるのだろうか。

 イラクに兵力を派遣している米国主導の「有志連合」が崩れつつある。スペインの撤退声明に続き、三百七十人を派兵する中米ホンジュラスも十九日、早期撤退を決定。エルサルバドルやドミニカ共和国も追随の動きをみせている。

 二十日現在、イラク中部ファルージャでは米軍と反占領勢力との「停戦」が続き、中部ナジャフに立てこもるムクタダ・サドル師一派と連合国暫定当局(CPA)との交渉も継続中と伝えられる。しかし、十七日にはナジャフ近郊を含め、イラク全土で米兵十一人が死亡するなど、平穏という状況とはほど遠い。

 今月に入り、イラク「抵抗勢力」の側は確実に様変わりしている。十一日付の米紙ニューヨーク・タイムズは「銃をとらないと妻からどやされる」「友人仲間で道に爆弾を仕掛けている。組織名称なんてない」という「一般市民」の声を報じた。派閥によらない総力戦での反米闘争の様相を見せ始めている。

■状況が悪化し隊員に失望感

 自衛隊の派遣先、南部サマワでも七日に宿営地、八日にCPA事務所を狙った迫撃砲攻撃があった。四日から中断されていた給水を除く支援活動は十三日、一部が再開されたが、十四日には「オランダ軍と自衛隊に告ぐ」とした反占領を訴える学生デモ、十七日にはオランダ軍とイラク人グループの銃撃戦が発生した。

 こうした状況が自衛隊員に及ぶ危機を強めている。ある防衛庁関係者は、こう危ぐする。「隊員たちは非戦闘地域なんて信用していない。政府のへ理屈にへきえきしている。心配なのはその副作用だ。制服組が、失望感から、文民統制を軽視しないかという点だ」

 邦人人質事件そのものについては、多くの与党幹部が「危険地帯に入った無謀な人たち」を政府あげて救出する「迷惑」の大きさを強調してきた。しかし、そもそも政府は人質解放のために水面下で有効な救出策を打てたのか。疑問の声は多い。前出の藤井氏は「解放されたのは、人質になった人たちが占領や自衛隊派遣に反対だったというのが第一の理由」と話す。

 政治評論家の森田実氏も、同様の見方を示す。

 「イラクの聖職者協会の人が言った『日本政府から働きかけはなかった』が本当だと思う。政府はバタバタと救出策をとり、逢沢(一郎)外務副大臣がアンマンに行ったりしたが、本当の交渉をやった形跡はない」

■首相の発言が 反日感情刺激

 小泉首相が来日していたチェイニー米副大統領にファルージャ停戦を申し入れたかの報道もあるが、森田氏は「本当であれば、米国のメディアはそう報道するだろう。停戦の継続は(米国の政策上)独自に決まった話で、小泉首相が関与したように言われるのも世論操作だ」と推測する。
 
 むしろ小泉首相は人質事件の発生当初、武装グループを「テロリスト」呼ばわりしたことで、イラク国内の反日感情を刺激し、解放を遅らせたとも伝えられるが、政治評論家の小林吉弥氏は「小泉さんはもともと言葉を選んでしゃべる人ではない」と話す。
 
 結局、人質解放の決定打は、「彼ら(人質)がイラクの敵ではなかったからだし聖職者協会の人たちの理性」(森田氏)のようだ。実際、解放されたフリージャーナリストの安田純平氏はNHKのインタビューで、政府の対応に謝意を表しながらも、「(イラクと)日本の歴史に救われた」と率直に語った。
 
■協力の見返り 巨額の請求書
 
政府は機密を盾に解放までの経緯を明かさない。だが、漏れ伝わってくるのは有効策よりも無策ぶりだ。解決のため政府から情報提供を求められた中東研究家の一人はこう苦笑する。

 「政府が困っているのは打ち寄せてきた請求書の処理です。例えば、ヨルダンは(解放に向けた情報提供や協力の見返りとして)約二千億円に上る債務の帳消しを求めてきた。日ごろから情報がなく、役に立たないルートまでボタンを押しまくったツケです」

 逆に解放の立役者で、反占領勢力のイラク聖職者協会幹部アブダルサラーム・クバイシ師は「われわれは日本政府より日本人の生命を大切にした。(中略)人質解放後も、日本の外務省はわれわれに感謝していない」と憤りをぶちまけた。

 こうした政府の対応には多くの疑問符がつく。本来なら「責任論」も噴出しかねないが、世論は小泉内閣を後押しする結果となっている。十七、十八日に読売新聞が行った世論調査では人質事件についての政府の対応を「評価する」が74%に上った。自衛隊のイラク派遣を「評価する」人も60%で、一月の同様調査の53%を上回ったという。内閣支持率も「支持する」が59・2%で三月調査より増えた。朝日新聞の世論調査でも同様の傾向が見える。

 森田氏は「本当は、イラクには非戦闘地域などない時期で、小泉首相は窮地にあった。ところが、人質事件で出た自己責任論が、逆に小泉首相や政府を利する結果となり、自衛隊派遣をも合理化する結果となった」と分析する。

■家族の状況を利用に成功し

 メディアと政治の問題に詳しい明治学院大学の川上和久教授は、そのからくりを、こう解き明かす。
 「政治の駆け引きの中で人質事件が論じられ、自己責任論が出たため、自衛隊の派遣が正しかったのか、国際社会の中でどういう意味を持つのかという議論が隠れてしまった。特に、人質家族が、政治の土台に乗るような形で、『自衛隊撤退』を言うと、そこに世間の非難が集まった。本来、人質問題とは距離を置いた自衛隊派遣反対の意見にまで『人質家族と一緒になって騒いでいる』というような逆風をもたらす構図ができてしまった」

 その上で、自己責任論にも言及する。「国民、皆が後味が悪い。自衛隊の撤退という問題が、国際的な政治問題の中でなく、国内政治の問題として出てきた。小泉首相にすれば、家族の置かれた状況を利用し、逆に『自己責任』を出すことで自らの責任をすり替えることに成功した」


長崎新聞 2004/4/18

過熱取材”避けるマスコミ ルールを模索=写真
2004年04月18日長崎新聞

 佐土原町の郡山総一郎さん(32)の実家は八日夜の第一報直後から、マスコミ各社が実家近くに泊まり込んで待機。当初は集団的過熱取材(メディアスクラム)になった。
 
 しかし、人質家族への配慮からメディア各社が現場で取材ルールを申し合わせて実行するなど、試行錯誤しながら取材対応を模索してきた。
 
 八日午後九時前の第一報から間もなくして、郡山さんの実家にはマスコミ各社が殺到。家を取り囲み、取材対象は周辺住民にも及んだ。記者の中からメディアスクラムを指摘する声が上がる。
 
 九日午前零時すぎ、延岡市から駆け付けた弟洋介さん(28)と報道陣が交渉する中で、洋介さんは「近所の皆さんに迷惑を掛けたくない」と強く要望。
 
 実家の敷地に立ち入らず、取材陣を後退させることなどを条件に、家族を代表して洋介さんが取材に応じた。
 
 同日朝からは、実家から百メートルほど離れ、公共駐車場として利用されている町有地が“取材基地”となる。
 
 新聞、テレビ、雑誌などピーク時にはマスコミ十五社前後、百人近い記者とスタッフが連日待機した。
 
 以後、家族が取材を拒まない代わりに、記者は家族に直接接触せず、地元自治体の佐土原町を通すなど、家族や周辺住民に配慮した取材ルールが出来上がる。
 
 町側は重永英治税務課長がスポークスマン役を務めた。午前と午後の二回、記者からの質問を預かり、実家の洋介さんと面会。聴き取った内容を、会見で記者団に伝えた。
 
 重永課長は「行政が人質家族の支援に携わるまれなケースだったが、トラブルもなく結果的にはうまくいった。家族の負担を軽減する今回のマスコミの対応には、家族も感謝している」と話した。


長崎新聞 2004/4/15

私人の発言は自由だ
 (2004年4月15日付)
http://www.nagasaki-np.co.jp/press/mizusora/2004/04/15.html

 社会の一隅で淡々と生きてきた市民が、ある日突然、社会を揺るがす大事件の被害者家族となり、全国民注視の場に引き出される。その時、きのうまで私人であったその人は、にわかに公人のように振る舞わなければならないのだろうか

▲そんな理由はないはずだ。被害者の家族であれば、ひたすら肉親の情を吐露することに何の不思議があろう。公人のような振る舞いを強要する資格は誰にもない

▲イラクで人質になった高遠菜穂子さんを心配する弟と妹の言動に対して、これを「感情的だ」とする非難が殺到し、年老いた母親が報道陣の前で謝罪した。「お許しください」と母親は泣きながら頭を下げた。胸の痛む光景であった

▲家族らが政府に「自衛隊撤退も選択肢に含めて」と訴えたことを批判する声もある。だが、家族らがそう訴えるのは、犯人グループが自衛隊撤退と人質の命を交換条件に掲げたからにほかならない。わらにもすがる思いの家族が、その交換条件に言及したとて何の罪があろう

▲家族の言動を感情的と言うなら、公人中の公人である小泉純一郎首相の国会答弁ほど感情的なものはない。逆ギレ、揚げ足取り、すりかえ…。感情的な言動が決して許されぬはずの国会で、それはまかり通っている

▲権力の座にある公人の問題発言は許容され、不安に押しつぶされそうになっている私人の言動は集中砲火を浴びる。日本の社会は相当に歪んでいる。(信)


http://www.reuters.co.uk/newsPackageArticle.jhtml?type=topNews&storyID=491092&section=news
ロイターUK

Briton among 11 hostages seized in Iraq

Thu 8 April, 2004 15:22

By Andrew Marshall

BAGHDAD (Reuters) - Seven South Koreans, three Japanese and a Briton have been seized in Iraq and militants have threatened to burn the Japanese alive unless their country withdraws its troops.

Gunmen frequently stage hold-ups on Iraq's lawless roads but the taking of hostages would mark a sharp escalation of the growing conflict between U.S.-led forces and Iraqis and foreign militants opposed to the occupation.

No demands were issued on Thursday in relation to the South Koreans, who were members of a church group, or the Briton, identified as a contractor. The Japanese were reported to be a female aid worker, a researcher and a freelance cameraman.

Arab television Al Jazeera showed the three Japanese, kneeling with their eyes bound with white cloth and surrounded by masked men holding rifles and also sitting on the floor without their bindings and talking to their captors. The walls of the room were riddled with bullets.

It said they had been taken hostage by a hitherto unknown Iraqi group called Saraya al-Mujahideen (Mujahideen Brigades).

"We tell you that three of your children have fallen prisoner in our hands and we give you two options -- withdraw your forces from our country and go home or we will burn them alive and feed them to the fighters," the group said.

"You have three days from the date of this tape's airing," it said in a statement, accusing Japan of betraying Iraqis by supporting the U.S.-led occupation.

A Japanese government spokesman demanded their immediate release and said the country had no plans to pull out of Iraq.

Nudged by the United States, Tokyo has sent 550 troops to Samawa on a non-combat mission to help rebuild Iraq in its riskiest military deployment since World War Two which critics say violates Japan's pacifist constitution.

Another U.S.-ally, South Korea has 600 military engineers and medics in Iraq and plans to send 3,000 more for reconstruction.

South Korea's Foreign Ministry said seven South Korean members of a church group had been taken hostage by armed men.

Kim Sang-mee, another member of the group escaped the gunmen, told South Korea's MBC TV that several Iraqis armed with guns and dressed like civilians stopped cars and took away the rest of her group, which had been on its way to Baghdad from Jordan.

"We told them we're Koreans several times, but they didn't care," Kim said.

A British civilian was also reported kidnapped, in the southern Iraqi town of Nassiriya, the scene of heavy fighting between radical Shi'ite militiamen and Iraqi troops.

A coalition official named the man as Gary Teeley, a contractor. He was abducted on Tuesday and had not been heard of since. He said efforts were under way to locate him.

British media said Teeley, 37, was married and resident in the Middle East and had been working at a U.S. airbase.

A Foreign Office official in London confirmed that Teeley was missing, but would not say what he was doing in Iraq or comment on the manner of his disappearance.

Earlier on Thursday, Japan had already vowed to make no hasty decisions about its non-combat troops after explosions near their camp.

No Japanese soldier has fired a shot in action or been killed in combat since 1945 and casualties could undermine support for Prime Minister Junichiro Koizumi's government ahead of Upper House elections in July.

In Tokyo, a foreign ministry official said it was checking the situation. Top government officials including Chief Cabinet Secretary Yasuo Fukuda, the top government spokesman, gathered at the prime minister's office to collect information while Koizumi was at his official residence.

Passports shown on the video carried the woman's name as Nahoko Takato and the two men as Noriaki Imai and Soichiro Koriyama. At least one of them had a press identification card.

Japanese public broadcaster NHK said the woman belonged to a human rights group and had been involved in relief work for children in Iraq since last year.

Imai had been planning a trip to Iraq to do field work on the possible effects of depleted uranium weapons, NHK said, while Kiriyama is a freelance cameraman.