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アンマンからレポート
(イラクの白血病で苦しむ家族のレポート)
http://www.doblog.com/weblog/myblog/18736

佐藤真紀さん投稿
NODUヒロシマ・プロジェクトMLより

佐藤真紀です。

ヨルダンから帰国しました。
白血病で苦しむ家族のレポートです。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/18736
には写真も掲載しています。


双子の子

 ヨルダンのキング・フセイン・ガン・センターの正面に道路を挟んで、モーメン・ホテルがある。ここにはイラクからガンや白血病の治療に来ている家族がいるというので様子を見に行った。

 家族と入院が終わった後、通院している患者が暮らす。

合計30人の患者をヨルダンは、受け入れている。20人は国王の基金、10人はアメリカのポールニューマン財団が、彼らの医療費とホテル代を出している。

ホテルのロビーで待っていると、イブラヒムさんにであった。 

バスラからやってきたというイブラヒムさんは34歳。妻のファーティマさんががんにかかった。3月8日、アンマンに着いた。だが問題は、そのときすでに妊娠していた。抗がん剤を投与した治療は胎児に影響を及ぼす。本格的な治療に入る前に、ファーティマさんは帝王切開での出産を迫られた。妊娠6ヶ月。予断は許せない。4月1日、赤ちゃんは、イスラミック病院で無事に出産、なんと双子だった。男の子はムハンマド君、女の子はカディージェちゃんと名づけられた。

 当然未熟児だったから 76日間も保育器に入れられていた。

私は、イブラヒムさんの家族を紹介してくれるというので彼の部屋までついていった。

治療はうまく進んでいるようで、妻のファーティマさんも元気そうだった。

赤ちゃんは、ジャバル・フセインの別の家族に預けられているというのでイブラヒムさんと一緒にタクシーを拾って、見に行くことにした。

ヨルダン人の一家を尋ねると小さな赤ちゃん二人を抱えた、おばさんが出てきた。

ザイナブさんは、子育てのベテランだ。

「私は、子どもが7人もいるんですよ。娘が5人。そして男の子が2人。うちの娘たちも、赤ちゃんが大好き」10歳前後の3人の姉妹が、粉ミルクを溶いていた。

アラブ社会は、子どもが多いので、上の子が赤ちゃんの世話をするのは当たり前。うまく赤ちゃんにミルクを与えている。

イブラヒムさんは思い出す。

「この子達はたった500グラムでした。年齢は4ヶ月。まだまだ小さいですよね。
妻は、ガンのために白血球がゼロです。とても赤ちゃんと一緒にはいられない。それで病院に助けをもとめたんです。何とかならないかと。そしたら親切な家族を探してくれた。ザイナブさんがいろいろよくしてくれるので、本当に嬉しいです。」

双子の赤ん坊は母乳を飲んでいないので免疫力が弱いという。風邪などにかかりやすい。

また、母親は抗がん剤の治療を受けているので白血球の数が少なく、赤ちゃんが風邪をひいただけでも感染して致命傷に至ることもあるので、当面は一緒にいることができない。

イブラヒムさんは、毎日様子を見に来る。しかし、ヨルダンの物価はイラクに比べて高い。ヨルダンでは働くこともできないイブラヒムさんは、赤子のミルク代のことを心配していた。治療費とホテル代は、ただでも、生活費はそこをついている。

ザイナブさんは「心配しないで。私たちに任せて」とイブラヒムさんを励ました。

先進国だけが人道支援をしているわけではない。ヨルダン人も一生懸命、ささやかな協力をしている姿には頭が下がる。僕たちはつつましく彼らを側面的にサポートできればいいなと思う。やっぱり「人道支援やってます」って仰々しく騒ぎ立てるのは、自衛隊も国際NGOもよくないなと思ったりした。

ムハンマド君、カディージェちゃんはミルクを一生懸命飲んでいる。本当ならば、ちょうど今頃生まれたばかりのはず。哺乳瓶に吸い付く様子は、生きてやるんだという赤ちゃんたちの強い意志を感じた。