[劣化]ウラン兵器禁止を求める緊急ヒロシマ・アピール

(起草 嘉指信雄)

2004年11月6日「ウラン兵器禁止を求める国際行動デー」計画

[劣化]ウラン兵器禁止を求める緊急ヒロシマ・アピール

2004年10月11日

イラク戦争開始間際の2003年3月2日、広島におよそ6000人の人々が集まり、人文字メッセージ「NO WAR NO DU!(戦争にNO 劣化ウラン弾にNO!)」を作った。そして、その空撮写真を用いた意見広告(3月24日付『ニューヨークタイムズ』掲載)で訴えた。

「ヒロシマはNOと言う これ以上ヒバクシャ(放射能被害者)を出すことに。ホワイトハウスは、劣化ウラン弾の放射性および毒性の影響を否定しているが、これは偽りである」と。
 
アメリカとイギリスは、イラクによる大量破壊兵器保有を理由にイラク戦争を強行したが、今や、その大義は崩壊した。しかし、今回の戦争でも使用されたウラン兵器がまさに大量破壊兵器であることを見据える時、イラク戦争の「正当性」は、さらに一層深く、根底から覆される。

イラク戦争は、「イラクの自由作戦」の名の下に行われたが、ウラン兵器を使用しての戦争が、人々を解放する「正義の戦争」などと、どうして言えようか。

地球に生命が誕生してから40億年と言われるが、ウラン238の半減期は45億年。まさにウラン兵器の使用は、時の蓄積のたまものである生命の奇跡、生きとし生けるものに対する冒涜であり、後からやってくる世代に対する無責任きわまりない蛮行と言わなければならない。
 
イラク南部など、湾岸戦争中、アメリカとイギリスによって[劣化]ウラン弾による爆撃が行われた地域では、癌や白血病、先天障害の憂慮すべき増加が報告されている。バスラのジャワード・アル- アリ医師は、今年5月ベルリンで開かれた「IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ヨーロッパ大会」で、次のように訴えていた。

「アブ-グレイブ収容所での虐待が問題になっていますが、イラク国民は、湾岸戦争以降ずっと、劣化ウラン弾によって虐待し続けられているのです」と。

私たちは、こうした胸も張り裂けんばかりの訴えに応え、放射能兵器であるウラン兵器の全面的禁止の一日も早い実現と被害者への支援を求めて、ヒロシマから、日本から、世界中の全ての良心ある人々に向けて改めて訴えたい。

(1)ウラン兵器の使用は、国際刑事裁判所規定の「人道に対する罪」に該当する。ウラン兵器は、非人道的な大量破壊兵器であり、一刻も早く、その製造、使用、売買が全面的・明示的に禁止しなければならない。

(2)兵士のみならず、多くの市民が、とりわけ、放射線の影響を最も受けやすい子どもたちが[劣化]ウランの深刻な被害を受けていると考えられる。被害に苦しんでいる人々・子どもたちに、一刻も早く、救済と援助の手を差し伸べねばならない。

(3)アメリカやイギリスは、今日までに使用したウラン兵器の情報を全面的に開示すべきである。国際社会は、現地の専門家たちと連携しつつ、被害の実態を早急に明らかにし、対応策を立案・実施しなければならない。

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ウラン兵器、いわゆる[劣化]ウラン兵器は、核燃料サイクルや核兵器の製造過程で排出される放射性[廃棄]物質の軍事利用である。[劣化]ウランは、放射性毒性と化学毒性を持っており、ウラン兵器は環境に、長期にわたる広範囲の汚染をもたらす。ウラン兵器は、その及ぼす被害の範囲が空間的にも時間的も限定できないという意味で、まぎれもない非人道的大量破壊兵器である。

ウラン兵器は第一次湾岸戦争で初めて大規模に??米軍側の公式発表でも三〇〇トン以上投入され、続いて、ボスニア、ユーゴスラビアにおいてはNATO軍によって、さらにアフガニスタンでもアメリカによって?して再びイラク戦争ではアメリカとイギリスによって湾岸戦争を上回る量が使用されたと推定されている。

劣化ウラン弾は、周知のように、第一次湾岸戦争後ほどなくして、「湾岸戦争症候群」の原因として論争を引き起こした。1996年以降、国連の人権小委員会において、劣化ウラン弾は、「兵士、市民のいずれに対しても大量無差別的被害をもたらす」、現存の国際人道法や人権法と「両立しがたい」非人道的兵器とみなす決議が三度にわたり採択されている。また、コソボ紛争後、ヨーロッパ兵士の間に「バルカン症候群」が発生し、2001年1月には、ヨーロッパ議会が、劣化ウラン弾禁止を求める決議を採択している。

さらに今年9月、ベトナムのハノイで開かれた第5回「アセム(=アジア・ヨーロッパ会合)・ピープルズ・フォーラム」で採択された声明においても、核兵器のみならず、劣化ウランや枯葉剤を大量破壊兵器としてみなし、その使用禁止、および被害者に対する救済を要請している。

なお、今年一月、ベトナム戦争終結後30年にして初めて、ベトナムの被害者が補償を求めて、アメリカの化学会社三十数社をニューヨークの連邦裁判所に集団提訴している。原爆のみならず、枯葉剤、ウラン兵器による測り知れない被害を思う時、アメリカによる戦争は未だに一つとして終わっていないと言わざるをえない。

現在、ウラン兵器を保有する国は、約二十カ国??アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、ギリシャに加え、トルコ、ヨルダン、イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連合、クウェート、バーレーンなどの中東諸国、さらに、パキスタン、タイ、韓国、台湾などのアジア諸国である。ウラン兵器は、すでに「拡散」してしまっているのである。例えばパレスチナでも、2000年末、インティファーダが再び激しくなった頃、イスラエルによって使用されているとパレスチナ自治政府内務大臣が発言し、問題とされたことがある。

また、アメリカの劣化ウラン兵器製造工場や、イギリス・スコットランドやイタリア・サルディニアの射爆場周辺、また韓国の離島・梅香里(メヒャンニ)演習場でも、劣化ウラン弾による汚染被害が以前から取り沙汰されてきている。日本でも、1995年末から翌年の初めに、米軍が射爆場のある沖縄の鳥島で1520発の劣化ウラン弾を「誤射」していたことが、約一年後に発覚して問題となった。[劣化]ウラン弾問題は、焦眉の地球的問題である所以である。

ウラン兵器の全面的禁止と被害者支援を求める声が上げられるようになってすでに久しいが、ようやく昨年10月、これらの声をひとつに合わせるため、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW=International Coalition to Ban Uranium Weapons)が結成された。本部事務局はアムステルダムに置かれ、現在までの参加・賛同団体は、アメリカ・イギリス・日本・ドイツ・オランダ・ベルギー・イタリアなど17カ国66団体にのぼる。

先月からは、「国際社会による被害者支援」の規定も含む「ウラン兵器の全面的禁止条約」締結などをめざし、「インターネット国際署名キャンペーン」が開始されている。また、国連総会により、11月6日が「戦争と武力紛争における環境収奪を防止する国際デー」とされていることを踏まえ、この日を「ウラン兵器禁止を求める国際行動デー」として設定し、世界各地での連帯した取り組みを呼びかけている。(以上)


※このアピールは、「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」代表の嘉指信雄が起草しました。
※このアピールは、2004年10月10日・11日、広島に於いて開催された「WTI(イラク世界民衆法廷)・広島公聴会」で提案され、参加者により承認されました。