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IPPNW世界大会(北京)/「アセム」市民フォーラム(ハノイ)


枯葉剤と劣化ウラン弾
―ハノイでの会議に参加して―

2004年9月13日

皆さん
 「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」の嘉指(かざし)です。

 9月6〜9日、ハノイで開かれた第5回「アセム(=アジア・ヨーロッパ会合)・ピープルズ・フォーラム」に参加して戻ってきました。ワークショップでの発表に加えて、枯葉剤被害者の支援施設を訪れたり、また思いがけず、ベトナム戦争の時、「アオザイの闘志」と呼ばれたグェン・ティ・ビン女史などと言葉を交わす機会に恵まれ、とても意義深い旅となりました。

 しかし、今も続く枯葉剤被害の現実には、重い衝撃を受けました。
 今年一月には、ようやくベトナム戦争終結後30年にして初めて、ベトナムの被害者が補償を求めて、アメリカの化学会社三十数社をニューヨークの連邦裁判所に集団提訴。この「枯葉剤被害者補償裁判」への支援は、各国平和団体などの協力で急速に広まっていて、3月に開始された「国際署名キャンペーン」は、すでに50万名以上から支持を集めているようです。
 「日本の人々からもより広い支援を求めたい」という、ベトナムの人々の声を伝えていきたいと思いますが、より詳しくは、次のメールでご紹介したいと思います。
 以下、今回の会議の簡単な報告です。
 
***
 「アジアとヨーロッパにおける“人間的安全保障”のための市民アクション」という全体テーマの下に開かれた今回の会議には、ベトナム戦争を戦い抜いた国の首都ハノイでの開催ということもあったのでしょうか、アジア・ヨーロッパ25カ国から、主催者の期待も大きく越える約500名のNGO関係者、平和活動家などが参加しました。
 私は、ヒバクシャの村田忠彦さん(広島被団協・副理事長)とともに、「大量破壊兵器?アジアとヨーロッパにとって意味すること?核兵器・劣化ウラン・枯葉剤/ダイオキシン」と題されたワークショップに参加しました。(日本からは、他に、東京の「太平洋アジア資料センター」の普川容子さん、「ピープルズ・プラン研究所」の笠原光さんなどが参加されていました。)

 多くのワークショップが平行して持たれましたが、「大量破壊兵器」のワークショップには、およそ70名の方々が聞きに来てくださいました。村田さんは、自らの被爆体験を証言され、私は日本での劣化ウラン弾問題への取り組みについて報告しました。また、司会も務められた「ベトナム枯葉剤被害者協会」副会長グェン・トゥロン・ニャン教授からは、今も続く枯葉剤被害の実態の報告や「補償裁判」への支援の呼びかけがされました。
 このワークショップでの報告を受けて、最終日に採択された「ピープルズ・フォーラム声明」には、核兵器廃絶運動とNPT再検討会議への支援要請に加えて、枯葉剤、劣化ウラン弾などの大量破壊兵器の使用禁止、および被害者に対する救済の要請が取り入れられることになりました。この「ピープルズ・フォーラム声明」は、来月、同じくハノイで開催される、政府間レベルの第5回アセム会議に対して提言されるものです。(以上)



二つの国際会議への参加
―第16回IPPNW=「核戦争防止国際医師会議」世界大会(北京)/
第5回「アジア欧州会合」市民フォーラム(ハノイ)―


皆さん

 「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」の嘉指(かざし)です。

  今月中旬、北京で開かれる「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)第16回世界大会の分科会の一つで[劣化]ウラン兵器問題が取り上げられることになり、「ヒロシマ・プロジェクト」からも、森瀧春子さんと私が参加して、報告することになりました。
  また、来週ハノイでは、第5回「アジア欧州会議」市民フォーラム(=ASEM5 People’s Forum)が開かれますが、この会議でも、[劣化]ウラン兵器も含めた「大量破壊兵器」に関する分科会が設定されており、私は、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)オランダ事務局のメンバーとともに参加することになりました。
  会議から戻ってまいりましてから、また詳しく報告させていただきますが、以下は、二つの会議の概要・意義を簡単にまとめてみたものです。ご参考までに。

[1] 第16回「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)世界大会               
(1) 大会テーマ:Health through Peace and Disarmament
                 〈平和と核軍縮を通じての健康〉
(2)日時:2004年9月15日〈水〉〜19日〈日〉
(3)場所:中国 北京市 北京大学 健康科学センター及び関連施設
(4)予想参加者総数:約350名
(5)NO DU ヒロシマ・プロジェクトからの参加:嘉指信雄、森瀧春子
   (他に基調報告者として、秋葉広島市長も参加。日本からの参加予定者は約60名)
(6)参加分科会名:「ウラン兵器?諸問題とその対応」(18日午後)
     今年5月にベルリンで開催された「IPPNWヨーロッパ会議」でも、嘉指と森瀧は、大阪の「ヒバク反対キャンペーン」の振津かつみさんなどと一緒に「ウランとウラン兵器」の分科会に参加し、日本の劣化ウラン兵器禁止キャンペーンの現状や、昨年6−7月に行った「イラク戦争・劣化ウラン弾被害現地調査」について報告しました。今回同様、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)のメンバーでもあるIPPNWドイツ支部の求めを受けて行ったものですが、特に、イラクの白血病の子どもたちから採取した尿サンプルのウラン含有量に関する分析結果などに対して、参加者からとても強い反響がありました。(この分析は、現時点では、事情により、ウラン235/238の比率分析がまだ出ていない暫定的なものですが、その概要は、「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」ホームページに掲載されている「講演記録」をご参照ください。なお、現在準備しております「ヒロシマ・アピール」改訂第3版には最新報告を収録する予定です。)
     ご存じのように、IPPNWは、核兵器廃絶を掲げて、長年反核運動を展開してきた、とても重要な国際的組織です。(1985年には、ノーベル平和賞受賞)IPPNWがDU問題への取り組みを本格的に開始する契機の一つに今回の分科会がなってくれたらと思い、ベルリンでのヨーロッパ会議に続けて出席することにしました。核兵器廃絶とともに放射能兵器=劣化ウラン弾の廃絶のため、医学者・科学者との国際的連帯を訴えたい??とりわけ、アメリカ政府のみならず、日本政府も、この問題に蓋をするばかりか、最近は、日本原子力文化振興財団を使って、「劣化ウランは安全だ」といった情報を流していることに関して、専門家としての取り組みがなされる必要があることを強く訴えてきたいと思います。(文責:森瀧、嘉指) 

[2]5回「アジア欧州会合」市民フォーラム(=ASEM5 People’s Forum)

(1)大会テーマ:People’s Actions for Human Security in Asia and Europe(アジアとヨーロッパにおける“人間的安全保障”のための市民アクション)
(2)場所:ベトナム・ハノイ
(3)期日:2004年9月6日-9日
(4)予想参加者:25カ国から報告者約100名、一般参加者約300名
(5)NO DU ヒロシマ・プロジェクトからの参加:嘉指信雄
(6)参加分科会名:「大量破壊兵器?アジアとヨーロッパにとって意味すること/劣化ウラン、核武装、軍備競争と武器貿易、原爆、枯葉剤/ダイオキシン」(7日午後)

 今回の「アセム民衆フォーラム」で取り上げられる議題は多岐にわたりますが、嘉指は、9月7日にもたれる「平和と安全保障」に関連する6つのワークショップのうち、「大量破壊兵器?アジアとヨーロッパにとって意味すること/劣化ウラン、核武装、軍備競争と武器貿易、原爆、枯葉剤/ダイオキシン」と題されたワークショップに招待され、劣化ウラン弾禁止キャンペーンについて報告することになりました。(プログラムの詳細については、「アセム民衆フォーラム」=ASEM5 People’s Forumのホームページを参照)
 昨年10月には、インドネシア・バリにて、10月のハノイ・サミットに向け「アセム・外相会合」が開かれ、「外相会合議長声明」が出されていますが、劣化ウラン弾問題との関連で注目されるのは、日本の提案により「大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止に関する政治宣言」が採択されていることです。(外務省ホームページ「アジア欧州会合第5回外相会合」参照)

 一方、今年6月、日本の原子力文化振興財団は、大阪の吉田正弘さんからのメールにありましたように、「劣化ウラン弾による環境影響」と題したメディア向けパンフレットを発行し、「劣化ウラン弾は安全である」と主張しています。しかし、例えば、国連の人権小委員会においても、劣化ウラン兵器は、影響の範囲が時間的にも空間的にも限定しえない非人道的兵器であるとする決議が、1996年以降、三回にわたって採択されています。劣化ウラン弾が、今回の「アセム民衆フォーラム」においても、核兵器や枯葉剤などと並んで「大量破壊兵器」として問題にされる所以です。
 こうした観点から、嘉指は今回の報告において、原子力文化振興財団のパンフレットに端的に表れている日本政府の見解は人道的に無責任きわまりないことを指摘するとともに、アセムは、その「大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止に関する政治宣言」の中に「劣化ウラン兵器」も追記し、その一刻も早い全面的禁止を国際社会に対し求めていくべきであると訴えたいと思います。
 なお、この「原文振パンフレット」の問題は、すでに、8月21日付「北海道新聞」が記事にしていますが、もっともっと広くマスコミによって取り上げられ、各分野の専門家に方々によって批判の対象とされなければならない、本当に憂慮すべき問題だと思います。なお、パンフレット全文は、「原子力文化振興財団」ホームページよりダウンロードできますので、皆さんも、ぜひぜひお読みになってください。本当に“とんでもない代物”です。(http://www.jaero.or.jp/data/publish/pamphlet/press/pdf/no111.pdf)

 [注:ASEM=Asia-Europe Meeting (通称アセム)は、アジアとヨーロッパ諸国間の政治的・経済的協力関係を発展させるため、アジア10カ国、ヨーロッパ15カ国、及び欧州委員会によって、1996年に第一回会議がバンコックで開催されました。その後、一年おきに、ロンドン、ソウル、コペンハーゲンで開催され、第五回会議が、今年10月上旬、ハノイで開かれる予定となっています。
 こうした政府間レベルでのパートナーシップ構築の試みに対して、市民サイドから積極的に提言していくことを目的として組織されてきたのが、ASEM People’s Forum=アセム市民フォーラムです。今回、政府間レベルのアセムは、市民フォーラムの一ヶ月後、10月にハノイで開催されます。](文責:嘉指)