「ICBUWジャパン」は、先月、日本政府に対して、下記の「要請文」を提出しました。(提出に際しては、これまでに引続き、社民党の福島みずほ議員・大臣、民主党の近藤昭一議員にお世話になりました。)
なお、日本政府に対しては、新政権の下で、ウラン兵器禁止に向けた積極的な政策を打ち出すよう求め、皆さんとともに対政府交渉(新政権の動きも見ながら、できれば年内に)にも取り組みたいと考えています。
今後ともどうぞよろしくご協力のほど、お願い申し上げます。
ICBUW運営委員:嘉指信雄、森瀧春子、振津かつみ
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【要請文】
「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす影響に関する評価」を第63回WHO総会の議題として提案することを求めます
2009年10月13日
外務大臣 岡田克也 様
厚生労働大臣 長妻 昭 様
劣化ウラン兵器は、地雷やクラスター爆弾と同じく、国際人道・人権法に反する「非人道的無差別殺傷兵器」です。劣化ウラン弾は、戦車などの固い標的に当たると高熱を発して燃え上がり、装甲を貫通します。その際に劣化ウランは細かい粒子となって散らばり、環境を汚染します。そして、兵士のみならず周辺で暮らす一般市民も、この劣化ウランの微粒子を吸い込むなどして身体に取り込むと、体内から被曝します。
ウラン兵器は核兵器(=核エネルギーを破壊力に用いる兵器)ではありませんが、核兵器と同じく放射能汚染と被曝をもたらします。汚染と被曝は、戦争が終わっても長期にわたって続きます。
劣化ウランは、放射性毒性だけでなく、重金属としての化学毒性もあり、がんをはじめ、健康へ様々な有害作用を及ぼすことが動物実験などですでに明らかになっています。
このような劣化ウラン兵器については、「予防原則」に基づき、使用のモラトリアムや禁止を求める動きが国際的にも出始めています。(2007年3月には、世界に先駆けてベルギーで「劣化ウラン兵器禁止」法が採択され、2009年6月発効しました。同様の禁止国内法は、中米コスタリカの国会でも審議中であり、間もなく成立の見通し。さらに、欧州議会では2008年5月、ラテンアメリカ議会人権委員会では2009年9月、同兵器のモラトリアムや禁止を求める決議が採択されるなど。)
国連総会では、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮」し、2007年、2008年の2回にわたり、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用による影響」に関する決議が採択されました。この決議に従って、国連事務総長は、国連加盟国と世界保健機構(WHO)などの関連国際機関に、同兵器使用がもたらす影響に関する見解を求めています。
とりわけ、世界の人々の保健のために活動することを趣旨とするWHOの見解は、この問題においても国際的に大きな影響力を持つものです。しかしながら、2007年の第62回国連決議にもとづいて、昨年、事務総長に提出されたWHOの見解は、例えば劣化ウランの発がん性には一切言及していないなど、科学的にも極めて不十分な内容に留まっています。
2008年の第63回国連決議に基づき、WHOには、来年2010年の国連総会に向けてその見解を「適切な形で更新する」ことが求められています。最新の科学的知見を十分に検討し、放射性毒性や化学毒性に対する感受性の高い小児や妊婦・胎児への影響にも十分に配慮するなど、真に「公衆の健康を守る」立場からWHOの見解が更新されることが重要です。そのためにも、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす影響」について、全てのWHO加盟国―とりわけ同兵器の影響を受けた国々―の保健省、WHO内外の専門家、関連のNGO等が参加する、公開の議論がWHO総会でなされることが、ぜひとも必要です。
日本政府が、来年の第63回WHO総会の議題に、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす影響に関する評価」を提案することを要請致します。同提案は、「被爆国」日本として、放射能汚染とその被害を繰り返さないことを訴えるという立場からも、積極的に行うべきです。WHOの規則に則り、来年1月に予定されている評議国会議の10週間前まで(本年10月末頃)に、WHO事務総長に議題案を提出する必要があります。早急にご検討、ご決断されますようお願い致します。
ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)ジャパン
ICBUW運営委員:嘉指信雄、振津かつみ、森瀧春子