国連総会での投票を前に、ICBUWとして急遽、日本政府へ申し入れ

2007年12月5日

皆様

今日(5日)の現地時間の午後に、「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」への投票が国連総会にて行われます。(12月4日付、嘉指さんの投稿をご参照下さい。)11月1日の第一委員会での決議採択の後、世界各国の「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)のメンバーは、特に第一委員会で「棄権」や「反対」した国々において、それぞれの政府に対し、総会での投票で賛成票を投じるようにとの働きかけを行ってきました。

 

日本でも、国連総会での投票に先だって、ICBUWとしての日本政府への申し入れを急遽、行いました。本日(5日)午前、ICBUW運営委員の森瀧、振津 が、佐藤真紀さん(日本イラク医療支援ネットワーク=JIM-Net)、社民党福島みずほ議員と秘書の方々とともに、外務省を訪問し、下記の「申し入れ 書」と「世界の科学者からの共同声明」(5日現在67名の科学者の賛同リストを添付)を、軍縮管理軍縮課長の森野泰成氏に手渡しました。


森野軍縮課長は、「劣化ウラン兵器が環境や人々の健康に影響を及ぼす可能性があるとされている問題については、政府としてもきちんとフォローして行くということで、国際機関の報告を注視している。そういう意味で今回の決議案に賛成した。」と、第一委員会での決議賛成の経緯を述べ、総会での投票でも同決議に賛成する意向であることを明言しました。また、「今後のことは検討中だが、新しい要素が出て来る必要があるので、国際機関の報告を注視している。」と述べました。今後の影響評価については、「科学者の共同声明」にある内容についても勘案しながら検討を進めるとも述べました。

ICBUWとしては、これまで日本政府が繰り返し述べてきたように「国際機関の報告を注視する」だけでなく、既存の報告の不十分点を認識した上で、新しい科学的知見や、「予防原則」の重要性も検討し、被害者や被害地域の現状もしっかりふまえて、日本政府としての独自の影響評価を積極的に行うよう要請しました。また、検討にあたっては、国際キャンペーンに取組むICBUWからの情報提供も受け入れ、ウラン兵器禁止に取組む国内外のNGOとも「前向きな対話」をしながら行うよう求めました。

今後、この国連決議に賛成票を投じた日本政府が、どこまで真剣にウラン兵器の問題に取組むのかが問われています。ウラン兵器の危険性を正しく評価するのか否か、国際的な軍縮の課題として、「被爆国日本」としてもその禁止に向けて積極的に関与するのか否か、日本の米軍基地に保管されている劣化ウラン弾をどうするのかなど、引続き、具体的に問うて行きたいと思います。

今後とも、国際キャンペーンと結んで、皆さんとともに、日本政府への働きかけを強めてゆきたいと思いますので、ご支援とご協力をよろしくお願いします。

ICBUW運営委員
森瀧春子
振津かつみ

劣化ウラン兵器に関する国連決議について日本政府への感謝と要請

2007年12月4日

内閣総理大臣 福田康夫 様

外務大臣   高村正彦 様

私たち「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)は、劣化ウラン兵器の環境と健康への有害な影響を懸念し、同兵器が国際人道法に反する「無差別殺傷兵器」のひとつであると認識し、その禁止と被害者の救済を求める国際キャンペーンに取組むNGOです。現在、日本を含む世界25カ国で、92団体が私たちのキャンペーンに賛同しております。

2007年11月1日に、国連第一委員会で採択されました「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」の票決において、日本政府が同決議を支持されたことを私たちは心から歓迎し、感謝致します。また、来る総会での票決においても、支持の立場を堅持されるようお願い致します。さらに、決議が採択され、国連事務総長が「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用がもたらす影響」に関する見解を加盟国に求める場合には、日本政府として、最新の国際的な科学的調査研究の成果について、独自に、十分な検討を行い、その成果をふまえた報告書を作成して、議論に積極的に参加されますようお願い致します。

同決議は、国連第一委員会において、世界の多くの国々が、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮に入れつつ」(前文第4項)、「環境を保護するため直接的手段を取る必要をより強く認識しているが故に、そうした努力を脅かす事柄に対しては、いかなるものであっても、必要な措置を速やかに講じる必要があると確信し」(前文第3項)、採択されたものです。また、国連憲章と国際人道法に従い(前文第1項)、武器規制と軍縮を進めることの決意(前文第2項)を劣化ウラン兵器の問題においても示したものであると考えます。[周知のように、すでに1996年、「国連差別防止及び少数者保護に関する小委員会」(99年に「人権促進・擁護小委員会と改称」)において、ウラン兵器を、核兵器、化学兵器、クラスター爆弾、生物兵器など並んで「大量あるいは無差別な破壊をもたらす兵器」として批難する決議がなされ、1997年、2002年にも同様の決議が採択されています。]

私達は、この決議が総会においても採択されることよって、劣化ウラン兵器使用の影響について、国連加盟国の中で真剣な議論がなされ、「対人地雷」や「クラスター爆弾」に続いて、劣化ウラン兵器の問題が、国際的な軍縮の重要課題のひとつとして取り上げられ、その全面禁止に向けて国際社会が進んでゆく第一歩となることを期待しています。

劣化ウラン兵器は核兵器ではありません。しかし劣化ウランは、日本の国内法でもその取扱いが厳しく管理規制されている放射性物質です。劣化ウランが兵器として使用され、環境が汚染されつつある現状を重く受け止め、その影響評価について真剣に調査・検討し、これ以上の環境の放射能汚染を防ぐべく努力することは、「被爆国日本」の政府としての国際的責務です。日本政府が、その責務をぜひとも果たされるよう要請致します。

以上、感謝を表明すると同時に、申し入れ致します。

「ウラン兵器禁止を求める国際連合」運営委員
嘉指信雄
森瀧春子
振津かつみ