「劣化ウラン兵器使用に関する情報公開」を求める新決議、国連第一委員会で採択(10/29)

10月29日、ニューヨークで開催中の国連総会第一委員会(軍縮・国際安全保障関連)において、新たな国連決議「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用による影響」が、前回(2008年)を上回る賛成多数で採択されました。賛成136カ国(2008年は127カ国)、棄権28カ国、反対4カ国でした。反対した4カ国は、前回同様に、劣化ウラン兵器を戦闘で使用したことのあるアメリカ、イギリス、そして同兵器を所有しているフランス、イスラエルです。日本は2007、2008年に引続き、今回も賛成票を投じました。
今回の「劣化ウラン国連決議」では、今までに同兵器を戦闘で使用した国に対して、使用地域と使用量をできる限り詳細に、要請があれば、影響を受けた国に報告するように求めるなど、これまでの決議から大きく前進した内容が盛り込まれています(主文第6項)。米軍は2003年のイラク戦争などで使用した劣化ウラン兵器の使用地域・量を未だに一切明らかにしていませんので、こうした情報公開は、被害調査や被害者支援を進めるためにも重要です。ICBUWが決議に入れるよう求めてきた「予防原則に基づいた劣化ウラン兵器使用中止」などは、残念ながら今回の決議には含まれませんでした。しかし「使用地域・量などの情報公開」が盛り込まれたことは、今年ICBUW調査団が行ったバルカン諸国調査や、イラクのバスラでの疫学調査支援などの活動をもとに、具体的な「情報公開」の重要性を、国際的にも国内的にも訴え続けた私たちNGOの活動の成果と言ってよいかと思われます。
同決議は、これまでの二回の決議(2007、2008年)と同じく「非同盟運動」(NAM)諸国全体の一致した案として、NAMを代表してインドネシアによって提出されました(下記暫定訳参照)。第一委員会での採択の後、12月初めに国連総会(全体会議)でも採決がなされる予定です。ICBUWは第一委員会で棄権した国々に対し、国連総会(全体会議)では賛成票を投じるよう引続き呼びかけを続けています。
今回の採決では、米英と軍事的同盟関係にあるNATO諸国でも、オーストリア、ドイツ、フィンランド、アイスランド、イタリア、ノルウェー、オランダが前回同様に賛成票を投じたのに加え、前回2008年には棄権したベルギー、ギリシャ、ルクセンブルグ、スロベニアも賛成に転じました。劣化ウラン兵器をめぐる立場の違いによる、NATO加盟諸国間での亀裂がより深まったといえます。また、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マルタも、2008年には棄権しましたが、今回賛成に転じました。このような欧州諸国の動きの背景には、ベルギー、ドイツ、オランダをはじめとする国々でのICBUWの活動や欧州議会への働きかけなど、この2年間に展開された欧州でのキャンペーンがあります。
前決議より大きく一歩前進した内容を含む新決議に、日本政府が引続き賛成票を投じたことを私たちは心から歓迎します。「国連総会に向けた日本政府への要請」にご協力下さった全国の皆さん、ありがとうございます。政府に対しては、同兵器の国際的禁止と被害者支援に向け、より積極的な政策に取り組むよう、引続き働きかけを強めたいと思います。
11月に各地で予定されている「ウラン兵器禁止国際共同行動デー」の取組みの中でも、新たな国連決議が、より多くの国々の支持を得て採択されたことを広く人々に知らせましょう。世界の人々の力で、「ウラン兵器の禁止」に向けて着実に前進していることを確認し合いたいと思います。ウラン兵器の危険性、非人道性を、さらに多くの人々に訴え、禁止への動きを加速させましょう。
「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)運営委員:嘉指信雄、森瀧春子、振津かつみ
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国連第一委員会[軍縮および安全保障関係]への決議案(日本語仮訳)
原文:英語
第65回セッション・第一委員会
議題項目97(d)
一般的・完全な軍縮:劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用による影響
[インドネシア*]: 決議案
「劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用による影響」
国連総会は、
国連憲章に明記された諸目的と諸原則および国際人道法に従い
2007年12月5日の決議62/30及び2008年12月2日の決議63/54を想起し、
武器規制と軍縮に関する交渉を前進させるのに不可欠な手段としての多国間協調主義を促進すべく決意し
決議62/30及び63/54に従って事務総長が提出した報告書に反映されている、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用による影響に関して、加盟国及び関連国際機関が表明した意見を考慮し、
劣化ウラン残留物による地域汚染が、人体や環境へ及ぼす潜在的な危険を緩和するために、国際原子力機関、国連環境計画及び、世界保健機構が行った勧告を、必要に応じて、実行することの重要性を認識し、
関連国際機関がこれまで行った調査では、劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす潜在的な長期的影響の深刻さに関する、充分に詳細な評価は得られてはいないことを考慮し、
人類は、環境を保護するため直接的手段を取る必要をより強く認識しているが故に、そうした努力を脅かす事柄に対しては、いかなるものであっても、必要な措置を速やかに講じる必要があると確信し
劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮に入れつつ
1. 決議63/54に従って事務総長に見解を提出した加盟国、及び国際機関に対する感謝を表明し
2. 加盟国と国際機関に対し、とりわけ、まだそれを行っていない国には、事務総長に、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用による影響に関する見解を伝えるように求め、
3.事務総長が、関連国際機関に対し、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす影響に関する研究と調査を、必要に応じて、更新し完成することを求めるよう要請し
4. 加盟国、とりわけ影響を受けた国々に、必要に応じて、上記第3パラグラフで言及されている研究と調査を促進するよう奨励し、
5. また、加盟国が、上記第3パラグラフで言及されている研究と調査の発展を、しっかりと注視することを奨励し、
6. 劣化ウランを含む兵器・砲弾を武力紛争において使用した加盟国は、影響を受けた国々の関連当局に対し、要請があれば、使用地域の場所と使用量に関する出来る限り詳細な情報を、そうした地域の評価を促進する目的で、提供するように求め、
7. 事務総長に対し、加盟国と関連国際機関が提供する情報を反映し、上記第2、3パラグラフに従って提出されたものも含めて、本件に関する新たな報告書を、第65回総会において提出することを要請し
8. 第67回国連総会の暫定的議題に、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用の影響」と題された項目を含めることを決議する。
* 国連「非同盟運動諸国」のメンバーである国連加盟国を代表して。
[仮訳:振津かつみ/嘉指信雄]