ウラン兵器の開発、製造、貯蔵、輸送、使用の禁止に関する条約案

M.Mohr及びA.Samselによる提案
ウラン兵器の開発、製造、貯蔵、輸送、使用の禁止に関する条約案
前文
この条約の締約国は、以下を念頭に置いて、本条約の諸条項に合意するものである。
地上戦における法と慣例に関するハーグ条約の原則、及び、ジュネーヴ協定とその追加条項、とりわけ戦争行為の影響から一般市民を保護するための国際法の一般原則を想起する。
国際法においては、武力紛争に関わる国々が、戦闘行為の方法や手段を選択する権利についての原則は制限されてはおらず、過度の損害や不必要な被害を与えるような性質の武器や戦術が禁じられていることを重要視する。
ハーグ条約の第23条の第1項と、毒ガス議定書に基づく有害兵器使用の禁止、ハーグ条約とジュネーブ協定への第一追加議定書に基づく自然環境への広範な危害と正当化できない破壊の禁止、また、サンクトペテルブルグ宣言に含まれる「人道的均整(humanitarian proportionality)」の原則を参照する。
ウラン弾の使用は、現行の国際・人権法に反するという国連人権小委員会決議(1996年決議16及び1997年決議36)を確認する。
上記の考察と原則に基づき、ウラン兵器の使用は違法であると確信するものである。
ウラン弾は、戦闘の行われた地域の全ての人々、つまり罪のない市民、とりわけ子供達にも無差別に健康被害を与える。その結果、傷害を受けた人々や彼らの家族にも長期にわたる治療が必要となる。最近の戦闘におけるこのようなウラン兵器の使用がもたらし被害を終わらせ、苦痛を軽減すべく努力する。
軍事紛争におけるウラン兵器の使用が今後は行われないよう、そしてウラン兵器のさらなる開発、拡大、完備を阻止することを堅く決意する。
ウラン弾使用による被害者が居住する諸国に対する支援が必要であると確信する。その支援は、国際的レベルでの有効で対等な協力関係に基づき、被害者とその家族の治療のために物的支援及び専門家の派遣を行うとともに、彼らの社会的・経済的状況の回復を達成することによってなされるものである。
被害者の保護とリハビリテーションを行うと同時に、汚染地域を明確に表示し、除染を行うことによって、ウラン兵器使用による後障害を避けられることを望むものである。
ウラン兵器を地球上から廃絶するためには、ウラン兵器の開発、生産、蓄積、移転、使用を禁止し、それらの兵器の廃棄を定めた条約が必要であると確信する。
第1条 一般的義務
1)各締約国はいかなる状況においても、決して以下のことを行ってはならない。
a)直接、間接の如何を問わず、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器の、開発、生産あるいは入手、蓄積、保持及び移転。
b)相手の如何を問わず、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器を使用すること。
c)本条約の締約国に禁止されているいかなる行為についても、相手や手段の如何を問わず、それを支援、奨励、誘引すること。
d)ウラン兵器の開発と生産に必要な前生産物(pre-products)の入手と配置。
e)手段の如何を問わず、劣化ウランの軍事的目的での使用。
2)各締約国は、本条約の規定に基づいて、自国が保持・所有する、あるいはその管轄(jurisdiction)・支配(control)下にある、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器、あるいはその開発と生産に必要な前生産物を、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対する条約発効の5年後には、廃棄する、あるいは廃棄を確約する。
3)全ての締約国は、本条約の規定に基づいて、自国が保持・所有する、あるいはその管轄・支配下にある、いかなるウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器の生産施設をも、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対する条約発効の5年後には、廃棄する、あるいは廃棄を確約する。
4)全ての締約国は、ウラン弾やその生産施設の破壊課程で生じた劣化ウランを、安定した化学物質に転換し、安全な最終貯蔵所に保管する。
5)全ての締約国は、条約の定める義務の遂行についての報告を作成し、それを国連事務総長及びウラン兵器センターへ送付する。
第2条 定義
1)「ウラン弾」とは、高密度と硬度ゆえに鉄の装甲を貫通するとされているウランの弾芯(anchor)を有する砲弾のことである。
2)「ウラン装甲板」とは、硬度を増し、射撃に対する抵抗性を高めるために、劣化ウランを含有させた装甲のことである。
3)「ウラン兵器」とは、対象を破壊したり危害を加えたりするための機構であり、その作動(戦闘)形態において劣化ウランが使用されているものである。
4)「汚染地域」あるいは「汚染水」とは、ウラン弾が使用されたために汚染された地域と水のことである。
5)「除染」とは、ウラン兵器の使用によって生じた、人々の健康に対して否定的な影響を及ぼすような放射線影響と、その他の結果を除去することである。
6)「移転(transfer)」とは、ウラン弾あるいはウラン装甲板を、国の領域内で物理的に移動させること、及び、ウラン弾の所有権やウラン弾の管理権の譲渡を含む。
7)「前生産物」とは、ウラン弾とウラン兵器の生産様式の如何を問わず、そのあらゆる課程において使用された、化学反応成分のことである。
8)「ウラン製造施設」とは、ウラン弾が、開発、生産、あるいは完成されるに至った施設のことである。
第3条 例外
ウランが化学的に安定した化合物として安全に最終貯蔵される保障があるならば、破壊するためにウラン弾やその他のウラン兵器を移転することは許される。劣化ウランの民間利用は禁止される。
第4条 ウラン汚染地域の除染
1)各締約国は、自国の管轄・支配下にある、軍事行動及びその他の理由で汚染された地域を、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対するの条約発効の5年後には、除染する、あるいは除染を確約すること。以前から汚染されている地域の除染は、本条約の付帯議定書によって規定される。
2)各締約国は、自国の管轄・支配下おいて、ウラン弾が明らかに使用されたか、あるいは使用された可能性のある地域の全て、特に、戦場、軍事演習場、事故現場などを、明確にし、表示をするよう努めること。
3)各締約国は、自国の管轄・支配下おいて、ウラン弾が明らかに使用されたか、あるいは使用された可能性のある地域の全てに居住する人々に対して、危険性を警告し、完全な除染がなされるまでの間、あらゆる支援を行うこと。特に、汚染地域を隔離し、原子・生物・化学チーム(ABC-teams)による予防的手段を講じ、住民に情報を提供し、検診を行うこと。以前に傷害を受けた全ての人々に対する医療については、本条約の付帯議定書によって規定される。
4)汚染地域に居住する市民の健康と生命に対し、相当な危険が存在する場合は、締約国は、危険が除去されるまでの間、市民を他の非汚染地域へ移住させるよう努めねばならない。
5)汚染地域、特に戦場、軍事演習場、事故現場などに関する情報は、ウラン兵器センターへ報告しなければならない。
6)もし、ある締約国が、第1項で指摘された全ての汚染地域を、指定された期間内に除染、あるいは除染を確約することができない場合は、その国は、除染終結期間を10年を限度に延長するための締約国会議、あるいは再検討会議の開催を求めることができる。
7)各締約国は、自国の管轄・支配下のウラン汚染地域の除染作業状況について、隔年ごとに報告しなければならない。
第5条 国際協力と支援
1)本条約に基づいて、この義務を遂行するため、適切であると判断される場合には、各締約国は、他の締約国に可能な範囲で支援を求め、それを受けることができる。
2)各締約国は、本条約の履行に関する科学技術的情報の交換を促進し、意見交換に参加する権利を有する。
3)支援できる条件のある全ての締約国は、福祉事業、医療支援、復興、及びウラン兵器使用による被害者の社会・経済的な差別状態からの回復のための支援を行うこと。ウラン兵器の使用についての説明に関するプログラムを支援すべきである。このような支援は、他の援助とともに、国連や、国際的、地域的、国内的諸組織及び諸機関、また国際及び地域の赤十字社、赤新月社と、それらの国際連盟、非政府組織、あるいは二国間の枠組みで行われるであろう。
4)支援できる条件のある全ての締約国は、ウラン汚染地域と水の除染、その他の活動を支援すること。このような支援は、他の援助とともに、国連や、国際的、地域的、国内的諸組織及び諸機関、また国際及び地域の赤十字社、赤新月社と、それらの国際連盟、非政府組織、あるいは二国間の枠組みで行われるであろう。
5)締約国は、国連、地域諸組織、他の締約国、他のいかなる政府間及び非政府委員会に対しても、自国の行政当局や国の担当部署が国内除染プログラムを策定するのを支援するように要請することができる。そのプログラムは以下のような項目を含む。
a)ウラン弾使用に起因する問題の範囲と規模
b)プログラムの遂行に要する財政的、技術的、人的手段
c)当該締約国の管轄・支配下にある地域の除染に要すると想定される期間
d)ウラン弾使用による被害者への支援、特に治療と非汚染地域への移住
e)当該締約国と、プログラム遂行に係わる政府、政府間、及び非政府組織との関係
6)各締約国は、ウラン兵器センター及び締約国会議に対して、特に除染の様々な手法や技術、専門家や専門機関、国家担当部門のリストについての情報や報告の提出を促す。
7)この条項に基づく支援を供与、あるいは受理する全ての締約国は、策定されたプログラムの完全かつ速やかな遂行を確実に行うべく、協力して作業を進めなければならない。
第6条 協力
1)第5条で概説された、ウラン兵器使用による被害を被った締約国に対する支援は、締約国間の協力によって行われる。
2)とりわけ、ウラン弾使用による被害を受けたが、本条約の義務を自力では遂行できないような他の締約国に対して、ある締約国から行われる協力のモデルは、発案計画、資材、人材面での支援をも含む。
第7条 国内実施条例
1)各締約国は、この条約に基づく義務を遂行するために、刑事処罰を課することを含む、全ての適切な法的、行政的、その他の手段を講じること。
2)特に各締約国は、領域内のいかなる場所においても、またその他の自国の管轄下のいかなる場所においても、本条約が締約国に対して禁じているいかなる行為をも、人々(natural and legal person)が行うことを、特に禁止しなければならない。
3)各締約国は、他の締約国と協力して、第1条に定めた義務の遂行を促すために適切な形での法的支援を供与すること。
第8条 ウラン弾使用に対する支援と防護
ウラン弾の使用、あるいは使用の脅威がある場合には、各締約国は、この使用と使用の脅威に対して、支援、救助、防護を要請し、それを受ける権利がある。
第9条 締約国会議
1)締約国は、定期的に会合を開き、以下の項目を含む、本条約の適用と実施に関するいかなる問題をも十分に検討すること。
a)本条約に基づいて提出された報告から生じた問題
b)第5、第6条に基づく、国際的協力
c)第4条の第6項に基づく、締約国の提案に関する決定
d)第1条の第5項、第4条の第7項、第15条の第9項に関する報告の再検討
e)第5条の第8項に基づく義務の遂行
2)初回締約国会議は、本条約の発効後1年以内に国連事務総長によって招集される。その後の会議は、初回再検討会議までの間、毎年、国連事務総長によって招集される。
3)本条約の非締約国を、合意された手続きに基づき、国連、その他の関連国際組織や機関、地域組織、赤十字委員会と関連の非政府組織と同様に、これらの会議にオブサーバーとして招待することができる。
第10条 再検討会議
1)再検討会議は、本条約の発効の4年後に国連事務総長によって招集される。その後の再検討会議は、ひとつ以上の締約国の要請があれば、国連事務総長によって招集されるが、再検討会議の間隔はいかなる場合も3年より短くするべきではない。本条約の全ての締約国は、各再検討会議に出席することができる。
2)再検討会議の目的は:
a)本条約の運用状況を再検討する
b)第9条に述べられている締約国会議の、今後の必要性や間隔について再検討する
c)条約の組織的機構とあらたな権限の確立についての議論と決定
d)必要であれば、本条約の実施に関する最終結論報告の採択
3)本条約の非締約国を、合意された手続きに基づき、国連、その他の関連国際組織や機関、地域組織、赤十字委員会と関連の非政府組織と同様に、これらの再検討会議にオブサーバーとして招待することができる。

M.Mohr及びA.Samselによる提案
ウラン兵器の開発、製造、貯蔵、輸送、使用の禁止に関する条約案

前文

この条約の締約国は、以下を念頭に置いて、本条約の諸条項に合意するものである。地上戦における法と慣例に関するハーグ条約の原則、及び、ジュネーヴ協定とその追加条項、とりわけ戦争行為の影響から一般市民を保護するための国際法の一般原則を想起する。国際法においては、武力紛争に関わる国々が、戦闘行為の方法や手段を選択する権利についての原則は制限されてはおらず、過度の損害や不必要な被害を与えるような性質の武器や戦術が禁じられていることを重要視する。ハーグ条約の第23条の第1項と、毒ガス議定書に基づく有害兵器使用の禁止、ハーグ条約とジュネーブ協定への第一追加議定書に基づく自然環境への広範な危害と正当化できない破壊の禁止、また、サンクトペテルブルグ宣言に含まれる「人道的均整(humanitarian proportionality)」の原則を参照する。ウラン弾の使用は、現行の国際・人権法に反するという国連人権小委員会決議(1996年決議16及び1997年決議36)を確認する。上記の考察と原則に基づき、ウラン兵器の使用は違法であると確信するものである。ウラン弾は、戦闘の行われた地域の全ての人々、つまり罪のない市民、とりわけ子供達にも無差別に健康被害を与える。その結果、傷害を受けた人々や彼らの家族にも長期にわたる治療が必要となる。最近の戦闘におけるこのようなウラン兵器の使用がもたらし被害を終わらせ、苦痛を軽減すべく努力する。軍事紛争におけるウラン兵器の使用が今後は行われないよう、そしてウラン兵器のさらなる開発、拡大、完備を阻止することを堅く決意する。ウラン弾使用による被害者が居住する諸国に対する支援が必要であると確信する。その支援は、国際的レベルでの有効で対等な協力関係に基づき、被害者とその家族の治療のために物的支援及び専門家の派遣を行うとともに、彼らの社会的・経済的状況の回復を達成することによってなされるものである。被害者の保護とリハビリテーションを行うと同時に、汚染地域を明確に表示し、除染を行うことによって、ウラン兵器使用による後障害を避けられることを望むものである。ウラン兵器を地球上から廃絶するためには、ウラン兵器の開発、生産、蓄積、移転、使用を禁止し、それらの兵器の廃棄を定めた条約が必要であると確信する。
第1条 一般的義務

1)各締約国はいかなる状況においても、決して以下のことを行ってはならない。
a)直接、間接の如何を問わず、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器の、開発、生産あるいは入手、蓄積、保持及び移転。b)相手の如何を問わず、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器を使用すること。c)本条約の締約国に禁止されているいかなる行為についても、相手や手段の如何を問わず、それを支援、奨励、誘引すること。d)ウラン兵器の開発と生産に必要な前生産物(pre-products)の入手と配置。e)手段の如何を問わず、劣化ウランの軍事的目的での使用。
2)各締約国は、本条約の規定に基づいて、自国が保持・所有する、あるいはその管轄(jurisdiction)・支配(control)下にある、ウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器、あるいはその開発と生産に必要な前生産物を、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対する条約発効の5年後には、廃棄する、あるいは廃棄を確約する。
3)全ての締約国は、本条約の規定に基づいて、自国が保持・所有する、あるいはその管轄・支配下にある、いかなるウラン弾、ウラン装甲板、その他のウラン兵器の生産施設をも、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対する条約発効の5年後には、廃棄する、あるいは廃棄を確約する。
4)全ての締約国は、ウラン弾やその生産施設の破壊課程で生じた劣化ウランを、安定した化学物質に転換し、安全な最終貯蔵所に保管する。
5)全ての締約国は、条約の定める義務の遂行についての報告を作成し、それを国連事務総長及びウラン兵器センターへ送付する。

第2条 定義

1)「ウラン弾」とは、高密度と硬度ゆえに鉄の装甲を貫通するとされているウランの弾芯(anchor)を有する砲弾のことである。
2)「ウラン装甲板」とは、硬度を増し、射撃に対する抵抗性を高めるために、劣化ウランを含有させた装甲のことである。
3)「ウラン兵器」とは、対象を破壊したり危害を加えたりするための機構であり、その作動(戦闘)形態において劣化ウランが使用されているものである。
4)「汚染地域」あるいは「汚染水」とは、ウラン弾が使用されたために汚染された地域と水のことである。
5)「除染」とは、ウラン兵器の使用によって生じた、人々の健康に対して否定的な影響を及ぼすような放射線影響と、その他の結果を除去することである。
6)「移転(transfer)」とは、ウラン弾あるいはウラン装甲板を、国の領域内で物理的に移動させること、及び、ウラン弾の所有権やウラン弾の管理権の譲渡を含む。
7)「前生産物」とは、ウラン弾とウラン兵器の生産様式の如何を問わず、そのあらゆる課程において使用された、化学反応成分のことである。
8)「ウラン製造施設」とは、ウラン弾が、開発、生産、あるいは完成されるに至った施設のことである。

第3条 例外

ウランが化学的に安定した化合物として安全に最終貯蔵される保障があるならば、破壊するためにウラン弾やその他のウラン兵器を移転することは許される。劣化ウランの民間利用は禁止される。
第4条 ウラン汚染地域の除染

1)各締約国は、自国の管轄・支配下にある、軍事行動及びその他の理由で汚染された地域を、可及的速やかに、遅くとも当該締約国に対するの条約発効の5年後には、除染する、あるいは除染を確約すること。以前から汚染されている地域の除染は、本条約の付帯議定書によって規定される。
2)各締約国は、自国の管轄・支配下おいて、ウラン弾が明らかに使用されたか、あるいは使用された可能性のある地域の全て、特に、戦場、軍事演習場、事故現場などを、明確にし、表示をするよう努めること。
3)各締約国は、自国の管轄・支配下おいて、ウラン弾が明らかに使用されたか、あるいは使用された可能性のある地域の全てに居住する人々に対して、危険性を警告し、完全な除染がなされるまでの間、あらゆる支援を行うこと。特に、汚染地域を隔離し、原子・生物・化学チーム(ABC-teams)による予防的手段を講じ、住民に情報を提供し、検診を行うこと。以前に傷害を受けた全ての人々に対する医療については、本条約の付帯議定書によって規定される。
4)汚染地域に居住する市民の健康と生命に対し、相当な危険が存在する場合は、締約国は、危険が除去されるまでの間、市民を他の非汚染地域へ移住させるよう努めねばならない。
5)汚染地域、特に戦場、軍事演習場、事故現場などに関する情報は、ウラン兵器センターへ報告しなければならない。
6)もし、ある締約国が、第1項で指摘された全ての汚染地域を、指定された期間内に除染、あるいは除染を確約することができない場合は、その国は、除染終結期間を10年を限度に延長するための締約国会議、あるいは再検討会議の開催を求めることができる。
7)各締約国は、自国の管轄・支配下のウラン汚染地域の除染作業状況について、隔年ごとに報告しなければならない。

第5条 国際協力と支援

1)本条約に基づいて、この義務を遂行するため、適切であると判断される場合には、各締約国は、他の締約国に可能な範囲で支援を求め、それを受けることができる。
2)各締約国は、本条約の履行に関する科学技術的情報の交換を促進し、意見交換に参加する権利を有する。
3)支援できる条件のある全ての締約国は、福祉事業、医療支援、復興、及びウラン兵器使用による被害者の社会・経済的な差別状態からの回復のための支援を行うこと。ウラン兵器の使用についての説明に関するプログラムを支援すべきである。このような支援は、他の援助とともに、国連や、国際的、地域的、国内的諸組織及び諸機関、また国際及び地域の赤十字社、赤新月社と、それらの国際連盟、非政府組織、あるいは二国間の枠組みで行われるであろう。
4)支援できる条件のある全ての締約国は、ウラン汚染地域と水の除染、その他の活動を支援すること。このような支援は、他の援助とともに、国連や、国際的、地域的、国内的諸組織及び諸機関、また国際及び地域の赤十字社、赤新月社と、それらの国際連盟、非政府組織、あるいは二国間の枠組みで行われるであろう。
5)締約国は、国連、地域諸組織、他の締約国、他のいかなる政府間及び非政府委員会に対しても、自国の行政当局や国の担当部署が国内除染プログラムを策定するのを支援するように要請することができる。そのプログラムは以下のような項目を含む。
a)ウラン弾使用に起因する問題の範囲と規模b)プログラムの遂行に要する財政的、技術的、人的手段c)当該締約国の管轄・支配下にある地域の除染に要すると想定される期間d)ウラン弾使用による被害者への支援、特に治療と非汚染地域への移住e)当該締約国と、プログラム遂行に係わる政府、政府間、及び非政府組織との関係
6)各締約国は、ウラン兵器センター及び締約国会議に対して、特に除染の様々な手法や技術、専門家や専門機関、国家担当部門のリストについての情報や報告の提出を促す。
7)この条項に基づく支援を供与、あるいは受理する全ての締約国は、策定されたプログラムの完全かつ速やかな遂行を確実に行うべく、協力して作業を進めなければならない。

第6条 協力

1)第5条で概説された、ウラン兵器使用による被害を被った締約国に対する支援は、締約国間の協力によって行われる。
2)とりわけ、ウラン弾使用による被害を受けたが、本条約の義務を自力では遂行できないような他の締約国に対して、ある締約国から行われる協力のモデルは、発案計画、資材、人材面での支援をも含む。

第7条 国内実施条例

1)各締約国は、この条約に基づく義務を遂行するために、刑事処罰を課することを含む、全ての適切な法的、行政的、その他の手段を講じること。
2)特に各締約国は、領域内のいかなる場所においても、またその他の自国の管轄下のいかなる場所においても、本条約が締約国に対して禁じているいかなる行為をも、人々(natural and legal person)が行うことを、特に禁止しなければならない。
3)各締約国は、他の締約国と協力して、第1条に定めた義務の遂行を促すために適切な形での法的支援を供与すること。

第8条 ウラン弾使用に対する支援と防護

ウラン弾の使用、あるいは使用の脅威がある場合には、各締約国は、この使用と使用の脅威に対して、支援、救助、防護を要請し、それを受ける権利がある。
第9条 締約国会議

1)締約国は、定期的に会合を開き、以下の項目を含む、本条約の適用と実施に関するいかなる問題をも十分に検討すること。
a)本条約に基づいて提出された報告から生じた問題b)第5、第6条に基づく、国際的協力c)第4条の第6項に基づく、締約国の提案に関する決定d)第1条の第5項、第4条の第7項、第15条の第9項に関する報告の再検討e)第5条の第8項に基づく義務の遂行
2)初回締約国会議は、本条約の発効後1年以内に国連事務総長によって招集される。その後の会議は、初回再検討会議までの間、毎年、国連事務総長によって招集される。
3)本条約の非締約国を、合意された手続きに基づき、国連、その他の関連国際組織や機関、地域組織、赤十字委員会と関連の非政府組織と同様に、これらの会議にオブサーバーとして招待することができる。

第10条 再検討会議

1)再検討会議は、本条約の発効の4年後に国連事務総長によって招集される。その後の再検討会議は、ひとつ以上の締約国の要請があれば、国連事務総長によって招集されるが、再検討会議の間隔はいかなる場合も3年より短くするべきではない。本条約の全ての締約国は、各再検討会議に出席することができる。
2)再検討会議の目的は:
a)本条約の運用状況を再検討する
b)第9条に述べられている締約国会議の、今後の必要性や間隔について再検討する
c)条約の組織的機構とあらたな権限の確立についての議論と決定
d)必要であれば、本条約の実施に関する最終結論報告の採択
3)本条約の非締約国を、合意された手続きに基づき、国連、その他の関連国際組織や機関、地域組織、赤十字委員会と関連の非政府組織と同様に、これらの再検討会議にオブサーバーとして招待することができる。