2009年12月11日
今年8月、お知らせいたしましたように、ドイツの活動家たちが入手したドイツ連邦軍兵士用に作成された「マニュアル」から、アフガニスタンにおいても劣化ウラン兵器が使用されてきていることが確認されるとともに、劣化ウラン兵器への特別な対応が指示されていることが明らかとなりました。
この度、このマニュアルのうち、劣化ウラン兵器に関連するページの写真データをドイツの活動家から直接送ってもらいましたので、ホームページにアップいたしました。「オバマ政権によるアフガニスタンへの増派決定」という現在の動きにも大きく関係しますので、お知らせさせていただきます。
この「マニュアル」は、アフガニスタンに派遣されるドイツ連邦軍兵士用に、2005年後半、ドイツ連邦コミュニケーションセンターによって作成され、NATO軍内での使用に限られた機密扱いマニュアルです。
丁寧にドイツ語原文を改めて忠実に訳す時間的余裕がありませんが、以下、各ページの要点です。ご参考までに。
嘉指信雄
NO DU ヒロシマ・プロジェクト(ICBUWヒロシマ・オフィス)
『ウラン兵器なき世界をめざして—ICBUWの挑戦』
(合同出版、2008/平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞)
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「マニュアル」の劣化ウランに関するセクション——
「タリバン体制に対する北部同盟を支持して行われた「不朽の自由作戦」(Operation Enduring Freedom)において、米空軍は、他の兵器とともに、劣化ウランを中心部に用いた、装甲貫通焼夷弾を使用した。このタイプの砲弾は、その自然発火する性質により、硬い標的(戦車や車など)に対し使用された場合、ウランが燃える。燃焼により、毒性のあるチリが、特に標的やその周辺に堆積し、これらのチリは、容易に空気中に再び巻き上げられることとなる。」
続けて、その対策に関するセクションではーー
「劣化ウラン砲弾は、その重金属毒性および低レベル放射線により、被曝した人員に対し、毒物・放射線被害を引き起こしうる。こうした兵器が使用されたと疑われる場合——焼け崩れた車や戦車、車両群、あるいは30ミリ砲弾によって出来る典型的な穴が見つかった場合——砲弾が衝突した近辺においては、NBC(放射能・生物・化学的)安全対策部隊がそうした脅威を完全に取り除くまで、防御スーツとNBCマスクを装着しなくてはならない。」
[さらに、下記のような具体的指示のリストが続いている。]
・ 不必要に砲弾、砲弾の部分、あるいは、汚染されているかもしれない、いかなる物質にも接触しないこと。
・ 被曝してしまったかもしれない場合は、NBC(放射能・生物・化学的)部隊の検査を受けること。
・ フィルム線量計を配布すること。
・ NBCマスクを装着すること。
・ 衣服をしっかりと締めること、あるいは、NBC防御スーツを身につけること。
・ 劣化ウラン汚染した物質とのいかなる接触も記録に残すこと(誰が、どこで、いつ、何と、どれくらい長く、そして線量は)
・ ただちに報告するとともに、線量計を提出すること。
・ 担当の部隊付き医師を呼ぶこと。
[以上のような、「マニュアル」に記載された情報に基づき、ドイツの活動家たちは、ドイツ政府に対し劣化ウラン兵器禁止を求め働きを強めている。]
国連総会において、二年連続で採択された「劣化ウラン決議」に力づけられ、ドイツの「緑の党」は、ドイツ政府に対し、「劣化ウラン兵器禁止国内法」の成立を提案するとともに、他の諸国に対しても、EU、NATO、国連などの場において、モラトリアム、そして最終的には世界的禁止に向け取り組むよう強く求めた。「国防小委員会」での公聴会において、「緑の党」の提案は、社会民主党員が反対し、自由党員が棄権したため、採択されなかった。連立与党のメンバーである保守連合は、委員会への出席を拒否した。
ドイツの活動家たちは、現在のところ、政府がウラン兵器の禁止あるいはモラトリアムに向けて動くことはありそうにないと考えている・・・・。
しかしながら、社会民主党員と自由党員から支持を得られそうな徴候が見られる。前者は、基本的にはモラトリアムに賛成であり・・・後者は、劣化ウラン兵器問題に引き続いて関わる姿勢を見せている。ただ、彼らが今回の提案に反対したのは、ドイツにおける劣化ウランの輸送および貯蔵に関する条項が含まれていたからだった。公聴会を通じて、ドイツ国防省はDUの移送に関するデータを全く持っていないため、委員会メンバーに対し、どれほどの劣化ウランが、同盟国によってドイツ領土内に貯蔵されていたり、領土内を通って輸送されているのか答えられないことが明らかとなった。
(以上、ニュースより)
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このニュースは、言うまでもありませんが、イラク戦争後、イラクに自衛隊を派遣した日本にとっても極めて重い意味を持っています。また、これからの日本での劣化ウラン兵器禁止キャンペーンでも一つの決定的要因となるものと思われます。