「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」国連第一委員会において可決

2007年11月2日

皆様

ニューヨークの国連本部で開催中の第62回国連総会第一委員会(軍縮・安全保障問題担当)において、11月1日午後5時近く(現地時間)、「劣化ウランを 含む武器・砲弾の使用による影響に関する決議」が、賛成122票の圧倒的多数で可決されました。日本政府も賛成票を投じました。反対したのは、米国、英 国、フランス、オランダ、イスラエル、チェコの6カ国のみで、35カ国が棄権。劣化ウラン(DU)兵器所有国を含むEU加盟国の対応が注目されましたが、 ヨーロッパの国としては、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、アイルランド、リヒテンシュタインなどが賛成票を投じました。ロシアは棄権し、中国 は、投票の前に会議場を後にしましたが、そのことを前もって、提案国サイドに伝えて来ていたとのことです。

今回の決議は、(1)国連事務総長の名において、国連加盟国と国連関連機関に対し、DU兵器の影響に関する意見の提出を求め、来年の国連総会でその報告を提出すること、そして、(2)来年の国連総会の正式な議題にDU兵器問題を含めることを要請するものです。また、前文では、国連憲章と国際人道法に基づき、「DU兵器使用が人体や環境に及ぼす潜在的に有害な影響を考慮する」ことが明記されています。(決議全文の仮訳を下掲。)

先日のメイルでもお知らせいたしましたように、10月17日、「非同盟運動諸国」(提案国:インドネシア)の名において、決議原案が提出されました。インドネシアをはじめ、「非同盟運動」の国々は、今年3月以来、ICBUWがジュネーブやニューヨークで取り組んできたロビー活動においても、最も積極的な関心を示してくれていた国々です。原案では、使用のモラトリアム(一時停止)も含まれていたのですが、採択に向けた駆け引きの中で、最終的に今回は、「DU兵器決議」が確実に採択されることを優先し、上記二項目にしぼった決議案として投票にかける道が選択されたとのことです。いずれにしましても、DU兵器関連の決議が国連第一委員会で可決されるのは、イラク戦争後初めてのことであり、約一ヶ月後に行われると思われる「総会での投票」でも可決されれば、国連での取り組みが具体的に動きだすことを意味します。[2001 年、2002年、イラクによって、DU兵器の影響・被害に関する調査の実施を求める決議案が提出されていますが、最初は、第一委員会では可決されたものの、総会では否決され、翌年は、第一委員会で否決されています。

また、1996年以降、三度にわたって、人権小委員会において、DU兵器を非人道的兵器として非難する決議が採択されていますが、これらは小委員会での採択です。]私たちは、以上のような意味において、今回の決議採択は、いままで曖昧なままにやり過ごされてきたDU問題を国際政治の舞台に正式に上げる画期的なステップであると受け止めています。今回の決議採択を最大限に活かし、国際キャンペーンを大きく前進できたらと思っております。また、私たちICBUWは、日本国内においても、今年5月の対政府交渉以来、劣化ウラン問題に関して、日本政府独自の見解を明確にするよう求めてきましたが、今回、日本が賛成票を投じたことはとても大きな積極的意義があると思っています。投票後、今回の決議案を作成したキューバの担当官から電話で聞いたところによりますと、日本の代表は、投票の後に発言を求め、「DU問題に関しては、国連関連機関による報告が出されているが、いれも確定的・最終的なものではなく、日本政府としては、関連機関による今後の調査・研究を注意深く見守っていきたい」と述べたとのことです。これは、ある意味では、従来の見解を表明したにすぎないとも言えますが、賛成票を投じた上での発言であり、積極的に評価されうると思います。[なお、第一委員会での議論・投票の様子を伝えてくれた「ピース・ボート」ニューヨーク事務所の伊知地亮さんやキューバの担当外交官の話によりますと、投票前のスピーチで、アメリカは、「この問題については、すでに米国防総省やNATOなどにより報告がなされているが、人体や環境に有害な影響を及ぼすという証拠は見出されていないし、以前、提案された同種の決議案も否決されている」と主張しましたが、一方、賛成票を投じたアルゼンチンは、「国連として新たな調査機関を設置する必要性」を訴えるスピーチをしたとのことです。]

ICBUWとしましては、日本政府が、DU兵器の速やかな全面禁止に向け、さらに前向きな姿勢を取り、国際社会の中で先導的役割を果たしてくれるよう強くプッシュして行きたいと思います。11月の「国際共同行動デー」の取組みの中でも、今回の「決議採択」のことを多くの人々に知ってもらい、運動をさらに広く拡げてゆきたいと思います。今後とも、一層のご支援を何卒宜しくお願いいたします。

ICBUW運営委員:嘉指信雄/NO DU ヒロシマ・プロジェクト代表

振津かつみ/ヒバク反対キャンペーン・DU担当

森瀧春子/NO DU ヒロシマ・プロジェクト事務局長

 

「ICBUWサポーター拡大キャンペーン」実施中

劣化ウラン兵器は、無差別的被害をもたらす非人道的兵器です。一日も早く全面的禁止を実現するため、ぜひあなたもICBUWサポーターになって、国際キャンペーンを支えてください!言うまでもありませんが、国際キャンペーンのさらなる展開には、チラシの作成、通信費、スタッフ経費など、かなりの資金が必要となります。何卒宜しくお願いいたします!
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【投票結果】(詳細は問い合わせ中)
賛成:122カ国(非同盟諸国、日本、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、アイルランド、ニュージーランドを含む)反対:6カ国(アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、オランダ、チェコ)
棄権:35カ国(ロシアなど)
欠席:中国など

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国連第一委員会[軍縮および安全保障関係]への修正決議案日本語訳
2007年10月31日

 

原文:英語

第62回セッション第一委員会議題項目98
一般的・完全な軍縮
インドネシア:* 修正決議案

[決議案タイトル]

「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用による影響」

国連総会は——

前文第一項

国連憲章に明記された諸目的と諸原則および国際人道法に従い——

前文第二項

武器規制と軍縮に関する交渉を前進させるのに不可欠な手段としての多国間協調主義を促進すべく決意し——

前文第三項

人類は、環境を保護するため直接的手段を取る必要をより強く認識しているが故に、そうした努力を脅かす事柄に対しては、いかなるものであっても、必要な措置を速やかに講じる必要があると確信し——

前文第四項

劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響を考慮に入れつつ——

主文第一項

事務総長に対し、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用がもたらす影響に関する、加盟国および関連国際諸機関の見解を求めること、そして、第63回総会において本件に関する報告書を提出することを要請し——

主文第二項

第63回国連総会の暫定的議題に、「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用の影響」と題された項目を含めることを決議する。

*国連「非同盟運動諸国」のメンバーである国連加盟国を代表して。

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[以下、英語原文]
31 Oct. 2007
Original: English
Sixty-second session
First Cimmitttee

Agenda item 98
General and complete disarmament

Indonesia:* revised draft resolution
Title:
Effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium.

The General Assembly,

PP [Preparatory Paragraph]1. Guided by the purposes and principles enshrined in the Charter of the UN and the rules of Humanitarian International Law

PP2. Determined to promote multilateralism as an essential means to carry forward negotiations on arms regulation and disarmament

PP3. Convinced that as humankind is more aware of the need to take immediate measures to protect the environment, any event that could jeopardize such efforts requires urgent attention to implement the required measures

PP4. Taking into consideration the potential harmful effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium on human health and the environment

OP[Operative Paragraph]1. Requests the Secretary General to seek the views of Member States and relevant international organizations on the effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium, and to submit a report on this subject to the General Assembly at its 63rd session

OP2. Resolves to include in the provisional agenda of its 63rd session an item entitled ‘effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium.’* On behalf of the State Members of the United Nations that are members of the Movement of Non-Aligned Countries.

OP[Operative Paragraph]1. Requests the Secretary General to seek the views of Member States and relevant international organizations on the effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium, and to submit a report on this subject to the General Assembly at its 63rd session

OP2. Resolves to include in the provisional agenda of its 63rd session an item entitled ‘effects of the use of armaments and ammunitions containing depleted uranium.’

* On behalf of the State Members of the United Nations that are members of the Movement of Non-Aligned Countries.